同女を支え続けているもの。それは…

生田 香緒里 (同志社女子中高聖書科教諭)

先日、友人と話していた時に、大学生の就職についての話題になりました。友人は企業に勤めていて、就職の面接にも関わっています。最近は大学3回生くらいから就職活動が始まり、学生時代にするべきことを経験できないうちに、将来を決める試験を受けなければならないとか、実際、企業側はいろんな思惑はあるだろうけど、本当に適切な人材はそれで採用できるのか?といった話をしました。その話の中で、就職試験をすると、優秀な人は男性より女性のほうが多い、との友人の発言がありました。それはどうしてか?を私なりに考えてみました。

最近は内向き志向で、海外よりも国内でこじんまり安定した仕事を求める人が多いようですが、そんな中でも女性のほうが元気があるようです。私が学生の時にも元気のいい女性はたくさんいました。しかし、社会的にまだまだ女性の採用に消極的だったように思いますし、バブル崩壊後で雇用自体が少ない状態でした。ですから、特に女性は思うような仕事に就けず、仕方なくアルバイトをしたり、やりたいことを自分なりに探して、それを仕事にしたりしていたと思います。そのような社会状況から、雇用されるのを待っているのではなく、自ら仕事を作り出すという事も必要だったでしょう。就職がうまくいかないと思ったときに、どのように生きていくのかを、女性のほうが柔軟に考えて、それを行動に移していけるという事は言えるかと思います。働き方にしても、以前のウーマンリブのように、男性に負けないように働くという感覚ではなく、今の時代は、その人自身の持ち味を活かして、どういう思いを持って働くのか、という事が大切になっているのではないでしょうか?

同女で出会った友人たちは、それぞれ個性的で、自分に合った仕事をし、活躍しています。結婚し、子育てをして家庭を守っている人もいます。独身で仕事をバリバリとこなす人もいます。仕事と家庭(育児)の両立をさせている人もいます。家庭にいるにしても、社会で働くにしても、人と関わっていくことは必須、避けては通れません。そこで大切なことは何か?を問うた時に、私自身が思ったことは、他の人を尊重し思いやる。そして、自分も他人も輝かせて生きるという事です。 こう考えるのは、同女の教育や雰囲気が影響しています。

同女が設立された当時の同志社女学校の広告には「本校はもっぱら女性の徳の育成に配慮し、奨励し、あるいは訓戒しながら良質な謙遜、慈愛、忠貞、自治を育成する。学科に関しては、リベラルアーツを日本語で、英文学を英語で教授する。その他に、家事や礼儀作法など生活する上で必要な事を教える」という事などが書かれています。人間が生きていく上で必要な生活全般に関わることから、女性にとって必要な学問や徳の育成などは、この135年の歴史の中で変わらずに続いてきているものだと思います。時代の流れで少しは変わってきている部分もあるでしょう。しかし、基本的な考え方はぶれずに大切に受けつがれています。特にその中でも大切にされているのは徳の育成です。それは聖書に語られている、神様が私たちを愛されたように、私たちもお互いに愛し合う、大切にしあうということに基づく考え方です。そして、イエス様が私たちのために命を投げ出してくださったように、私たちも誰かのために、何かのために行動を起こしていくことが求められているのではないでしょうか? 私たちは様々なものを与えられています。その事を受けとめ、自分の力とし、今度は自分から人々に何かを与えていくことで、人と関わりつながっていきます。その事をいつも思いながら生きていくことが出来たらと思います。

同女の学生生活を振り返ると、自由な雰囲気の中で、先生方が丁寧に助言し指導してくださったこと、事務の職員の方々もきちんと学生に対応してくださったことが思い出されます。憧れるような素敵な先輩や、頼もしい後輩、学問のことからプライベートなことも語り合える友人を与えられました。学科のフレッシュマンキャンプのリーダーをさせていただいた時は、先生方が気さくにアドバイスしてくださり、先生との距離が近く感じられました。職員の方々も親切で、準備を十分に整えてくださいました。宗教部で、リトリートの実行委員をさせていただいた時は、きびきびと働く先輩方を見て、かっこいい!私もこうなりたい!と思いました。後輩たちも様々な要求に対して、誠実に取り組んでくれました。お互いの家に泊まり、明け方まで語り明かした友人たちとは、今でも折にふれて連絡を取りあい、会ったりしています。そんな様々な人々との出会いを通して同女のよさを認識することが出来ました。この女子大の利点の一つは女性がリーダーとしての素質を伸ばしていく事が純粋に出来るという事です。私自身、リーダーとして、周りの人と調和を保ち、それぞれの持ち味を活かして活躍する経験は、この同女時代に培われていったと思います。 皆さんにも是非、そのような経験をしていただきたいと思いますし、きっと先生方や職員の方々が、それをサポートしてくださるでしょう。

今、様々な場所で、お互いのことを思いやり、大切にすることが必要になっています。 特に、東日本大震災で被災した方々のことを思います。困難な状況の中で生活している方々に対して、私たちにできることは限られているかもしれません。でも、私たち一人一人が行動を起こしていくことで、良い方向へと変えられます。また、社会の中でも、いろんな働きが求められています。この同女の135年の歴史の中で大切にされてきた神様の愛を持って、私たち一人一人が行動していくことが求められています。そのことを心に留めて、学生生活を送っていただけたらと思います。これから先、学生の皆さんが、この同女にただよっているキリストの香りを身につけて社会でも活躍されることを願っています。

135年を語りつぐ