日頃感じること

亀田 和代(卒業生)

私は45年前に女子大学を卒業いたしました。この日の依頼を受けましてから約5ヶ月どの様なお話をしようかと思いをめぐらせて参りました。そのために聖書の一節にも目を通すではなく特別な本を読んで叡知を集めるでもなく、そんな意味で無責任なことだとこれをお引き受けしたことを反省しています。

卒業後5年余りを女子大学で仕事をさせて頂き、その後結婚、10年余りを専業主婦、そしてその後は歯科医の夫のアシスタントとして現在に至っております。そんなことで社会との繋がりが余り濃くありませんが、日頃私なりに感じることをお話させて頂きます。私は大学卒業後ずっと大卒女性の国際組織であります大学婦人協会に属しています。国際的な名称はInternational Federation of University Women、国内はJapan Association of University Womenと呼ばれています。この会は約80年前に2人のイギリス人女性と1人のアメリカ人女性によって立ち上げられたと聞いております。戦争のない恒久平和を願ってのことですが、国際間の相互理解と、女性の地位向上のためにさまざまな活動を行って参りました。日本大学婦人協会では文部科学省からの助成金を頂いて、女性の地位向上、国際交流、老人問題、環境問題、女性のエンパワーメント等、その時代の問題点を考えて参りました。女性の地位向上の問題に関しては、日本の場合、主婦が家計をにぎっているということで、国際的に非常に羨ましがられることもありますが、女性が仕事を続けていく上での問題、女性が意志決定の場に進出するための問題等が山積しています。国際交流では、旅行者や留学生のお世話、老人問題・環境問題では、各関係省庁や自治体に要望書を提出したりしています。4、5年前、男女共参画基本法が制定され女性のエンパワーメントのために、意識調査をしたり実情の調査をしたりして自分と社会とを繋げています。ここで最初に皆様方に知って頂きたいのが、従来の保護された女性から自立した女性へと女性の意識を変える時代がやって参りました。これまでは夫の収入によって生活をしている女性は夫の死後も遺族年金によって生活を支えられ、保護されていました。然し、高等教育を受け、働く女性が多くなり、この働く女性の中から保護された女性の問題が出て参りました。この問題は、男女が一個人として生きていく上に、さけられない問題です。これからの女性は自分の老後に自分で責任をもって生きていかねばならなくなることでしょう。当然そこには思いもよらない弊害も起きて参ります。先ず男性の意識改革、女性の家事、育児に対する考え方、幼児期からの真の家族のあり方などの教育がまず大切です。男性も女性も男女共同参画の時代に生きる意識を持たねばなりません。この問題を乗り越えられないところに離婚が生じる傾向があります。国や自治体ではこの様な男女共同参画社会を支えるための多くのヴィジョンを持っています。そして遅々としてですがそれを実現しています。保育所の充実、学童保育の充実、すなわち第一に自立した女性でなければならないことを若い時から自覚していて欲しいのです。次に、今や世をあげて情報社会です。あふれる情報の中から当然、情報をセレクトしなければなりません。ここに皆さんが日頃高等教育を受けている真価が出て来ると思います。勿論これは教室で受ける授業ばかりではなく、先生方や先輩、同僚との日頃の議論の中にこそ多くが得られるでしょう。新しく出来ました友和館のヒバードホール等は、その様な場として絶好です。つまり第二として情報のセレクトには日頃の叡知をもってあたってほしいと思います。第三に同志社建学の精神は一つなのですが、皆さんは同志社の中の同志社女子大学の学生であることを認識して頂きたいのです。

同志社大学と同志社女子大学は別なのです。相互に学習出来る制度も既に確立している様ですが、女子大学はDWCLAのつくリベラルな教育をする大学なのです。このことは、卒業生の私達も強く認識しなければなりません。大学が危うい、女子大学が危ういと言われる時代ですから尚更です。私も実際に「同志社に女子大学があったの?」と聞かれたことがあります。これは無視できません。

先日のホームカミングデーには2500人を越える卒業生が田辺キャンパスに帰って参りました。この日取材に来た新聞記者に「ホームカミングーデーは、オープンキャンパスが目的なんですね?」と聞かれました。私は「いいえ、ホームカミングデーの目的はようこそお帰りなさいという気持ちで卒業生を迎えるためにオープンキャンパスをしているのです。」と答えました。卒業生がどの様な思いで帰ってきたのでしょう。ある人は懐かしい友に逢うために、又ある人は、建学の精神のもとに、ある人は女子大学のマークに勿論DWCLAのついたマークです。ある人はカレッジソングに、又同志社カラーやエンブレム、大学歌ときっとこれらが入り混じったほのぼのとした思いで帰って来られたと思います。この様に共通の意識があることが大切なのです。先程も申しました様にこれ等は学校の行事に参加したり、人を選ばずに議論をしたりといった中でこそ身につく様に思います。皆さん大学を卒業いたしましたら社会と何らかのかかわりを持つ様努力をして頂きたいのです。先日、日経新聞の私の履歴書の中に根本二郎さん(日本郵船会長)が書いておられたのですが、戦後間もなくのこと、吉行淳之助さんがゲーテのファウストを引用して「人間の真の生き方は、永遠に女性的なるものを大事にすべきである」と話した母から学んだ母性の偉大さということかと勝手に理解したと書いてありましたが、この様に私も女性は潜在的に偉大なものを持っているのだと思います。平和的で非暴力的とでもいえる。この様なものをもっていると思うのです。

同志社女子大学は永遠に不滅ですを合言葉にするために、女性が潜在意識としてもっている尊いものを活かすためにも同志社女子大学を意識する努力をして頂きたいと思います。

125年を語りつぐ