同志社女子大学と多角的に関わって

中島 和子(名誉教授、同窓会長、嘱託講師)

今年は同志社女子部創立125周年にあたります。また、新制女子大学も設立50年を過ぎ、100周年に向かってUターンしたところです。この長い歴史の中で育まれたユニークな教育が今後更に発展していきますようにと願いつつ、私の経験を少しお話させていただきます。

ご紹介いただきましたように、私はいろいろな立場から同志社女子大学に熱く関わらせていただきました。(1)学生として(2)専任教員として(3)嘱託講師として(4)同志社同窓会長として

京都では昔から「英語の先生をめざすのなら同志社女専、女子大学へ」との定評がありました。私も公立の学校に在学中、同志社女専出身のすばらしい英語の先生にお出会いし、できれば先生と同じ道を辿りたいと思って本学に入学しました。同志社女子大学には専門科目のみでなく、教師として必要な「人間の教育」が豊かに備えられていました。聖書、人間関係、体育など正課としてのカリキュラムが礼拝、修養会(リトリート)、キャンプなどの課外カリキュラムと有機的に影響し合って、若き魂を覚醒し、高揚させる教育が行われていたのです。

戦後間もない時で、物資は乏しく、冬になると、ダルマ・ストーブで少ししかない薪や石炭をたいて、その周囲に集まり暖をとっていました。設備もまだ充分ではありませんでしたが、先生方の「信仰と希望と愛」に富む生き方やリベラル・アーツ教育への情熱が伝わってきました。

学生も一見華やかに見えましたが、内実を伴い、着実に学ぼうとする姿が印象的でした。学生会では在学生全員が何かの役に割り当てられ、上級生と共に「よい大学創り」のために奉仕していました。学校と学生会とのコミュニケーションが大変よくできていました。ここで自主自立の精神が養われ、学校側も女性の地位向上をめざしている学生会の役員の考え方や行動を温かく見守って下さっていました。

私は卒業後6年間公立中学校の教師をした後、同志社女子大学に専任教員として迎えていただきました。自分で望んだわけでもないのに何故なのか未だにわかりません。社会人となってはじめて知ったのは、本学のような全く新しいリベラル・アーツの教育を実現するために、先生方がどんなにご苦労なさって下さっていたかということでした。学生は幸福でした。人生が深まるにつれて、一人ひとりの中に若き日に蒔かれたものが熟成し、生きていく力となっていくのを実感することができたからです。

日本は次第に経済成長を遂げ、女子大学もだんだん大きく、大学らしく発展していきました。日本人は「エコノミック・アニマル」だといわれる程に超過密なスケジュールをこなし、大人も子どもも多忙極まる日々を送るようになりました。

そのような時代に初代学長であったヒバード先生の理想が実現して、栄光館3階の8角塔に瞑想室ができ上がりました。聖書にちなんだ鳩や麦、ぶどうなどの描かれた特注のステンドグラスを通して入ってくるほのかな光が天井吊りの立体の十字架や8角の聖書台ととてもよくマッチしていて、不思議な静けさをかもし出していました。

人間は人生の危機に遭遇した時のみでなく、日常の生活の中でも時には喧騒を逃れ、歩みを止めて、静かに見、聴く時を見つけ出して、自分の方向を見定める時が必要となります。そのような時に静まって、より高いものに触れられる瞑想室が必要だとヒバード先生は主張されてきたのです。「高いもの」に触れ、本来の自分をとり戻して、再び社会で豊かに活動するという目的があるのです。この部屋ができたことは大変意味深い出来ごととして私の心に残っています。同志社女子大学の精神教育の基盤の確かさに私は感謝の念を新たにしているところです。

田辺キャンパスができたことも大きな変化でした。私は37年間専任教員として勤めさせていただきましたが、1998年3月に定年退職し、嘱託講師として2、3科目担当することになりました。個室から出て、広い嘱託講師室で多くの先生方と交流する新たなよろこびを味わうことができました。本学を卒業されたお若い先生方も立派になられ、他大学で、また本学でご活躍の様子を週毎に聞かせていただき、とても楽しい生活を送ることができました。同志社女子大学の教育はしっかり結実していることをうれしく思っています。

1999年から同志社同窓会(会員数約6万人)の会長に選ばれ、卒業生の方々と接する機会が多くなりました。東北から沖縄まで支部訪問や新支部結成にまわり、20歳代から90歳代までいろいろな方々と同志社女子部で受けた教育について語り合うことができました。厳しい人生の荒波を乗り越えてこられた方もありますが、お元気で若々しく、一言ひとことの中にキリストにつながって生きるよろこびが滲み出ていました。

お食事の後、よい気分になって一般の人なら「カラオケ」に合わせて流行歌というところ、卒業生の皆さんからは讃美歌が堰を切ったように溢れ出てくるのには驚きました。最近は時間の関係で一節しか歌えませんが、お若いうちに沢山の聖句や讃美歌に慣れ親しんでおいて下さい。人生途上で弱り切った魂を慰め、勇気づけるものとなることでしょう。

同志社同窓会は本部でも支部でも主な会合はすべて礼拝から始まります。共に合わせる祈りと讃美の歌に年齢を越えて心が通い合い、卒業生であることへの感謝とよろこびが溢れます。

一昨年のホームカミングデーの時に定められた同志社女子大学のエンブレムには栄光館とぶどうが描かれて、その下に「わたしは真理(まこと)のぶどうの木」と書かれています。このイエス様のことばは「わたしの父は農夫である。・・・あなたがたはその枝である。・・・あなたがたがわたしにつながっており、わたしの言葉があなたがたの内にいつもあるならば、望むものを何でも願いなさい。そうすればかなえられる・・・」と続いています。

このエンブレムの意味、同志社女子大学の心を象徴するこのみことばを大切にして、皆さんと共に新しい世紀を「平和を作り出す人」として歩んでいきたいと思っています。

125年を語りつぐ