共に生きる力

濱口 義信(こどもスポーツ論)

はじめに

今日は140年を語りつぐということで、恐らくほんとうに初期から、修養会という名前で行われてきたリトリートとその発展的なバリエーションであ るキャンプを通して同志社女子大学のユニークな特徴とその素晴らしい伝統を再確認し、是非みなさんがこれらの活動に参加されるようお勧めしたいと思います。

リトリートとキャンプという言葉の意味

retreatは、‘re( 後ろに、再び )’ + ‘treat(引く)’で「後ろに引く」が原義。1.退却、撤退、後退、2.隠居、避難、また、隠居所、隠れ家、避難所。
仕事や家庭などの日常生活を離れ、自分だけの時間や人間関係に浸る場所などを指す。

宗教的には……祈りや研究や瞑想をするために引きこもることで、修養会とか退修会とか訳されることが多いのですが、いったん日常から離れて、自分や自分の周りを改めて見直すという意味です。

同志社には琵琶湖の南北の真ん中あたりの西海岸の北小松という所に「同志社びわこリトリートセンター」があります。これはオール同志社の共有施設なので幼稚園から大学まで多くの学生・生徒がここを利用しています。大学生もゼミやサークルなどの合宿と共に、様々な行事等で利用しています。そして、多くの学生の皆さんが「リトリートへ行く」とか「リトリートで合宿」とかいう使い方をしています。でもこれは間違いで、リトリートセンターはリトリートをする場所、つまりセンターなのです。

キャンプという言葉も英語ですが、これは日本語に翻訳すると合宿という意味です。実は皆さんの中でも結構間違って野外活動で、典型的にはテントを張って泊まることだと思っている人が多いのではないかと思いますが、本学のキャンプではテント生活はしません。

本学におけるリトリートとキャンプの成り立ちと推移

現在本学では宗教部の活動として、春5月と秋10月に1泊2日で行われているリトリートがあり、8月のサマーキャンプと3月のスプリングキャンプがそれぞれ3泊4日で、学生部今年からは学生支援課が中心になって行われています。

リトリートもしくは修養会は、教会やキリスト教学校では非常にポピュラーなイベント、行事です。戦前にも行われていましたが、大学になってからもその初期から行われていたようです。そして1泊2日で行われていたリトリート=修養会に加えて、そのロングバージョンであるキャンプが1950年代からスタートしました。1泊2日の日程のリトリートに加え、もう少しゆっくり数日間、北小松や琵琶湖周辺を中心とした近郊の自然環境の中で合宿をするリトリートが、キャンプという名前で行われていたと言えます。その後、学生部が出来て大学の組織が充実する中で、より足を延ばして信州・長野や四国などを中心に自然環境体験が充実したサマーキャンプになり、さらに冬バージョンとして作られた月曜日から土曜日までの長丁場のスキーキャンプが増え、プログラムが充実していきました。このうち、スキーキャンプは2009年からはスプリングキャンプに内容が変更されて、現在に至っています。1980年代から90年代にかけて、リトリートは定員120人で教職員の希望者も参加して150人、キャンプは定員90人で教職員や指導者も15人ほどの時期を経て、最近は40人前後の参加者で、日常から離れての合宿が学校行事として行われています。

このように、礼拝とリトリートとキャンプは、一旦、単調な繰り返しで慌ただしい日常生活を離れ、自分と周りを振り返ってみるというリトリートの本質的な意味で、同志社女子大学が大切にしている一連の活動だと言えます。

本学におけるリトリートキャンプの特徴

私はこのうちの京田辺キャンパスが開設し、短期大学部が出来た1986年からこれらのキャンプを見させていただいてきましたが、基本的に共通したプログラムを持ったもので、私はこれを勝手に「同志社女子大学の金太郎飴」と呼んでいます。金太郎飴、皆さんご存知ですか? 巻きずしみたいに断面に同じ模様が入っていて、輪切りにするといつも同じ絵柄が出てくる棒状の伝統的アメ菓子で、金太郎の絵が模様の原型であったために「金太郎飴」と呼ばれているものです。

つまり、リトリートは1泊2日で、講演などをメインにして、グループトークなどを行い、キャンドルライトサービスで振り返りをする。また、キャンプも礼拝で始まりますが、講演とそれについての話し合いの代わりに、アウトドアを中心とした日替わりの活動があって、帰る前日の夜にはキャンドルライトサービスで振り返りをする、という今も続いているプログラムの構成は、これらの行事の成り立ちや歴史からよく理解できると思います。

このような同志社女子大学の伝統となっているリトリートとキャンプの特徴をまとめてみると、次のようにいうことが出来ると思います。これらは行事が企画された時からの目標でもありますが、
・自由参加である事
・日常生活から離れて素晴らしい自然の中で心を解放することができること
・学部学科や学年の違う人達と出会うこと
・役割分担グループによる自主的運営と出番の多いプログラム
・礼拝等を組み込んだ建学精神の涵養
などを上げることが出来るでしょう。

最も大きな特徴は役割 グループによる自律的運営

そして、この中で役割グループを編成して自主的、主体的にキャンプを運営する点が、長く引き継がれてきた最も大きな特徴です。そこでは、自分とは能力も性格も違う人と新しい出会いをして友達ができること。そして自分とは違う考え方や生き方を知り理解する中で、自分自身も気付いていなかった自分自身を知り、自分の新しい可能性を発見できることでしょう。

役割グループでの自律的キャンプ運営というのは、ちょっと面倒臭いと思うかもしれませんが、他人の前で話しをすること、人を誘導して動かす、そのために段取りを考えたり準備をしたりすることから、多くのことを学ぶことが出来ます。また、このような準備をするプロセスで、役割グループの人たちとのコミュニケーションや共同作業を体験することから得るものも非常に多いと思われます。

一言でまとめれば、楽しみながら自分を磨くのが同志社女子大学のキャンプの特徴と言えるでしょう。

まとめ

現在、就職活動などにおいても、最も求められているのはコミュニケーション能力や表現力ですが、自分が一回り成長するために必要なものを得ることが出来る本当に良い機会ですので、是非皆さんに参加していただきたいと思います。5月と10月には週末に1泊 2日でリトリートがあり、夏休みにはサマーキャンプ、そして春にはスプリングキャンプもあります。大学にいる間に是非最低でもどれか一つには参加して、同志社女子大学の伝統に触れる自己啓発の機会を体験していただきたいと願っています。

参考:同志社女子大学広報部、2016、「同志社女子大学~ザ・ルーツ~継の章、行事・制度編」

 

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