群馬県榛名郷のワークキャンプ

宮本 義信(社会福祉学)

おはようございます。
さてみなさん、ワークキャンプって、知っていますか? わたしたちの大学では、毎年9月に1週間の日程で(今年は9月5日(月)から11日(日)まで)、群馬県榛名にあります高齢者福祉施設、社会福祉法人(民間の非営利団体・NPO である)「新生会」というところで、ワークキャンプを続けています。 1993年からはじめて、今年で24年を迎えます。

新生会との出会い

新生会は、上毛三山のひとつ榛名山南麓のあふれるばかりの緑の中に位置しています。窓からは高崎市が一望のもとに見渡せます。ボランティア寮の縁先でお月見をしていると、ゆったりと静かな鈴虫の音が聞えてきて、涼しくすがすがしい風が、頬をかすめます。ちょうど京田辺キャンパスほどの広大な敷地の中に、それぞれ異なったタイプの居住施設 が点在していて、そこに高齢者の方々が暮らしておられます。

もう25年以上も前のことですが、新生会のリーダーで同志社の卒業生でもある原慶子先生の著作『装いのある暮らし』(ミネルヴァ書房刊)をふと読んだことが、私にとって、新生会の働きを知るきっかけとなりました。養護老人ホーム(老人福祉法に定められた施設で、経済的困窮が入所の要件とされる公費負担型の施設)と、比較的経済的に裕福な人たちが入所する有料老人ホーム(自己負担型 の施設)とをひとつの建物として一緒にして、食事の場とメニューも一緒、という発想と取り組みには驚きました。

新生会との出会いは、社会福祉の制度的な縦割りの規則に慣れきって、「入園者に差別なし」という当然の発想ができなくなった、いわば“当たり前の前”が通じなくなってしまっている“福祉専門家”としての私には、実に新鮮なものでした。

緩やかな時間の流れの中で

キャンプでは、2 ~3名のサブグループを単位に8施設に分かれワーク(活動)します。それは、学生たちにとって、生活の場から遠く離れた非日常的な空間へと退去(リトリート)することであり、一 方、迎え入れる人々にとっては、普段の自分の枠組みには無い世界に入ることだと言えます。

大正時代、昭和初期の時代の話をはじめて聞いて驚いた、という学生もいるようです。そこから、その人に興味をもち、好きになり、その人を丸ごと理解しようとします。時間的 に制限された一瞬の出会いの中に、互いに、今を精一杯生きている、「一人の、あたたかな、固有なあなた」を、一回限り、その場だけで感じ取る。決してべたべたと延々くっつかない、きれいな、心温まる距離のとりかた、 すなわち「うるわしいディスタンス」を基本としてプログラムが展開されます。

そして、最終日には、新島襄が礎を築いた日本キリスト教団安中教会( 新島記念会堂)の聖日礼拝に集い、その後、新島家旧宅を訪ねます。

新生会の働きに献身された鈴木育三先生がわたしたちに言われた言葉、「老人、老い、古びた……、古びたいのちなどありません。『いのち』はみな新鮮。90歳、100歳であって も、今日のその人は『いのち』の最前線を生きている。」は実に印象的な心に響く言葉でした。学生たちの、そういうプロセスの中で「いのち」に出会っていこうとする姿勢、より大きな枠組みの中での相手への関心、素直 で柔軟なあり方は、私にとって目映くもあり、羨ましくもあります。

学生が学び体験したことは個別であって多様に観察されます。しかし、中心になって流れるものは、きわめて簡潔明瞭で、力強く、一本の線を成している。新鮮な「いのち」と 「いのち」の精一杯の向かい合い、これが20年以上も続いてきたワークキャンプの精神ではないのかな、と私は思っています。

ワークキャンプへの呼び掛けを兼ねお話ししました。宗教部では、本日ランチタイムに、スライドを中心にワークキャンプの説明会を行います。少しでも関心のある方、ぜひ、スライドをご覧ください。

 

140年を語りつぐ