万事が益となる 【宗教教育強調週間特別礼拝】

玉村 三保子(同志社同窓会 会長)

皆さんおはようございます。
最初に今なお熊本地震で苦しんでいる方々の平安を祈りたいと思います。しばらく黙祷を捧げます。
ただいまご紹介頂きました玉村三保子です。皆さんの前でお話しすることが許され嬉しく思っています。

今年度は、「世界の平和を祈り、世界の平和をつくる」というテーマが挙げられています。また今年は同志社女子部創立140年を迎えます。そこで、新島先生が140年前にどのような思いを持って同志社女学校を創立されたかを共に考えたいと思います。

今朝の聖書は、ローマの信徒への手紙八章二十八節「神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くということをわたしたちは知っています。」の箇所を与えられました。

同志社創立者新島襄先生については、今後も礼拝や授業を通して学ばれると思うので省略しますが、先生は国禁を犯してアメリカで10年間、熱心に学ばれ、神様の見えざる導きによって多くの人達と出会い、助けられ守られてついに宣教師となりました。

そして、帰国直前に行った最後の礼拝説教の時に、日本でキリスト教を基礎とした学校を作りたい、キリスト教の学校が必要だと涙ながらに語り、多くの寄付を得ました。私たちは、その尊い寄付も、同志社の基礎となっていることを忘れてはなりません。宣教師として帰国後、1875年に京都でキリスト教精神にもとずき、良心を手腕に運用できる学生を育てるために英学校を設立され翌年1876年に、女子教育の大切さ、日本女性にキリスト教を教えその当時の男性と同等に学ぶ機会を持つことができるようにとスタークウェザー宣教師、新島八重と共に女子塾を開校しました。翌年同志社女学校と改称されます。このことが、女性の地位向上、社会貢献にと繋がって行きました。

今年は女学校設立から140年目の年です。女学校はその歴史の中で女学校、女子専門学校となり、第二次世界大戦後、女子中学校・女子高等学校、女子大学となり、こんにちを迎え、それぞれの学校が独自の運営をしています。

新島先生は、全てが神様のご計画のうちにあったのだと、信仰を通し証されています。先生が函館から国禁を犯して出国しなければ、船がボストンにつかなければ、先生に影響を与えた人たちに出会わなければ同志社はなかった、女子部はなかったと思う時、神様の深い摂理を思わずにはいられません。

新島先生は、神の愛を信じキリスト教主義の学校を英学校から大学になるように、奔走途中で天に召されましたが、思いを弟子たちに託し、神様が必要とするのならば必ず思いが成就するという信仰で、全てを神に委ね天国に召されたと思います。それから140年。同志社も女子部もそれぞれ、このように大きく発展しました。新島先生の思いを神様は受け止め、今なお同志社を守り導いてくださっていると思います。

神様を愛し信じるものには、今朝の聖書にもあるように全てが益として働くのです。同志社女子部140年の間には様々な出来事もありました。その間には、たくさんの宣教師が女子部のために働いてくださいました。その中のお一人デントン先生は、女子部にとって忘れてはならない先生です。同窓会においても毎年召天日には今出川の相国寺にある墓前でデントン先生を偲んで感謝の礼拝を捧げます。アメリカで新島先生のことを知り宣教師として、派遣されて女学校の生徒にキリスト教の信仰を教え女子部のために一生を捧げ、戦争中も祖国に帰らず同志社を愛し生徒学生を愛し、神の愛を教えてくださいました。また同志社に必要な建物の寄付をアメリカに働きかけ、旧静和館、ジェームズ館、栄光館が出来ました。このデントン先生もどんなにかつらい時もあったと思います。そのような時も神様が全て良きものとしてくださるという信仰で女子教育のために祈り、女子部を物心両面から支えてくださいました。神様を愛し、信じるという事はどんなことも益となるように働くということです。今祈ったからといってすぐに自分の思うようになるわけではありません。たとえ自分にとって不幸だと思えることが起ころうと、「全てが益となるように共に働く」のだと聖書は教えています。しかし信じない者には目に見えないし、気がつきません。不安な時、失敗した時、心がくじけそうになった時、友達関係がうまくいかなくなった時に、それら全てが益として働くのだと聖書は、言っているのです。新島先生はこの同志社に学ぶ全ての人が神様を愛し、信じる心を持って欲しいと願われたのだと思います。神様は、全てのことを、益として働いて下さるのだと知ることができれば、私たちは、何事も恐れることなく「地の塩、世の光」として、社会に貢献できる女性として羽ばたくことが出来ます。

世界では色々不幸な出来事が起こっています。神様を信じることによって全てが益となるのだと聖書は教えてくれているのですから、私達が出来ることは、世界の平和を祈り、世界中の人々が平安に幸福になるように神様に祈ることだと思います。私も同志社女子部で学んだからこそ神様がいつも愛し、守ってくださっていることを知ることも出来ました。「全ての事が益となり働く」という聖書の言葉とともに新島先生が言われた「良心を手腕に運用せよ」の言葉に支えら毎日生活しています。皆さんもこの伝統ある同志社女子大学で大いに学び、新島先生が望まれた女性として、どこにあっても地の塩、世の光となり、社会に貢献できる人となって下さい。

「同志社同窓会」は、女子中学校、女子高等学校、女子大学、大学院の卒業生の会です。女学校設立から17年後1893年に96名の同窓生達によって同窓会が設立されその4年後に大阪、東京、京都支部が発足し次々、支部が出来ました。今では国内に62支部、海外に5支部あります。卒業をすればどこにいても同窓会会員です。皆さんも卒業されたら、お住いの近くの支部に登録し、母校の発展の為、又同窓生一人一人の幸福の為に、そして自分自身の為にともに仲良くつながってほしいと思います。私も、同窓会の会長として、全ての事を益としてくださる神様に全てお任せして、感謝して、祈り、ともに喜び合い、同窓会の活動を進めていきたいと思っています。

最後に私の娘のことをお話しして終わります。娘は1995年に同志社女子大学音楽科フルート専攻を卒業しました。2年次生の時、家族でドイツとオーストリアのウィーンに旅し音楽家の家、お墓を巡りました。音楽を学ぶ者にとっては、とても誇らしい嬉しい旅だったと思います。そこで乗ったタクシーにカメラを忘れたというのです。外国の地でどこのタクシー会社かもわからず、娘は泣くし、どうしようと思った時「全てが益となる」という聖句が頭をよぎりました。娘に「神様は貴方がもう一度ここに来るということを教えてくださったのだよ」と言ったその時に娘は留学してここに来るのだということを決心しました。帰国後、ドイツ語を熱心に学び、卒業後ドイツのフランクフルト音楽大学に留学、卒業後、同じ日本からの留学生のバイオリニストと結婚しました。現在、彼がミュンヘンのオーケストラに職を得たのでミュンヘンに住み、フルートを教えひとり娘を育て幸福に過ごしています。タクシーの中に忘れたカメラによって彼女は神様が全て良いように導いて下さるという信仰を持ち、今の彼女があるのです。神様は生きて働いておられるということを彼女は実感しました。

140年を語りつぐ