同女130年を支えるもの

生田 香緒里(卒業生・同志社女子中高聖書科教諭)

今、どう過ごしていますか?

今、皆さんは毎日をどのように過ごされているでしょうか?学生の方なら、日々勉強という人、サークルやクラブ活動に励む人、アルバイトや学校以外のさまざまな活動に参加している人もいるでしょう。先生方や職員の方々なら、仕事やそれ以外の自分のやっている事で毎日が過ぎていくという方もいらっしゃると思います。みんなそれぞれに生活はあるわけですが、私たちが今この場に共にいるという事を、今日はちょっと深く考えてみたいと思います。

130周年を迎えるにあたって

今年で、同志社女子部は130周年を迎えます。ここにいる私たちはさまざまな形で、この同志社女子大学に関わっています。でもその130年の歴史の始まりから最近までのすべてを実際に経験しているわけではありません。もちろん、資料を見たり人から聞いて知っておられる方もいるでしょう。その認識は、新島襄が中心となり同志社英学校が、そして女子部が建てられた、というところで終わる事が多いと思います。私自身も女子大の学生だった時にはそうでした。でも今は、先生方が女子部の事に取り組んでくださり、女子部についてよりよく知る機会が多くなってきていると思います。私自身、同志社女子中高で働いていますので、キリスト教的観点で女子部の歴史について知り、そこから学ばされることが多くあります。

創立当初に活躍した女性たち

創立当初は、女子教育がようやく出来るようになってきた初めの頃ですが、さまざまな困難がある中、多くの人々の熱い思いで今まで続いてきているのだと思います。そこで当時活躍していたのが、アメリカからやってきた女性宣教師たちです。彼女たちは家族や故国を離れ、遠い日本に来てキリスト教を教え、若者たち(特に女性たち)のために働きたいという志を持っていた20代半ばの女性たちでした。学生の皆さんよりちょっとだけ年が上の人だと思うと、その実力と行動力に驚かされますが、皆さんはどう思われるでしょうか?

女子部開校の時に、力を尽くした人の中には新島襄の妻八重とその母もいますが、今日は「同志社女子部の母」と言われたある女性宣教師について、特にお話ししたいと思います。

マリー・フローレンス・デントン

マリー・フローレンス・デントンは、1857年(今から約150年前)7月4日にアメリカのネバダ州に生まれました。デントン一家は代々熱心なクリスチャンホームであり、その中で成長し信仰も強められていきました。1887年(同志社開校後まもないころ)、彼女が小学校の校長をしていた時、休暇で帰国していた同志社教員でアメリカンボードの宣教師でもあったゴードンと出会います。そこで日本の新島襄という男がキリスト教に基づく教育に命をかけているという事を知り、家族の反対を押し切って日本にやってきました。それから60年間、戦争中も帰国せず同志社女子部のために全生涯を捧げ、尽くしました。彼女は個性的で、同志社女子部のためならといろんなことをやって、多くの人を動かしていきました。たとえば、自分自身は質素な生活をして節約し、学校のための資金をいろんな人に援助してくれるように頼んでまわり、バザーをして資金集めをし、それらを使って今出川の栄光館などの建物を建てたり、パイプオルガンを設置したりしました。特に学校生活の中で大切にしたのは、礼拝の時間でした。同志社は祈りによって礼拝によって始まり、建てられた学校です。同志社の核になるものはキリスト教であり、礼拝を守ることが大切であるということで今もこの礼拝の時間は続いています。礼拝をサボる学生に対して、デントンは容赦なく追いかけまわして、礼拝に出席させたという話は有名です。当時は、寮生活をしながら学校に通っている学生がほとんどで、その寮生活を通して人とのかかわりを深くし、キリスト教の精神も身に付けることが出来たようです。そのことによって卒業してからも同志社女学校での教えを大切にして人生を歩んだ人は多く、さまざまなところで活躍した人もいましたし、今でも多くの人が活躍しています。

今、この時代に同女で学ぶ事の意義

現代のように、いろんなことが便利になり、人と人との関わりが薄くなっている時代に、この同志社女子大学にいるということの意義を考えてみることは、大切だと思います。130年の間、キリスト教の女子の学校として続いてきたということはそれだけの魅力があり、それを守ってきた人たちがいるということでしょう。その中でも、デントンのように自分のことは置いて、同志社女子部のために神様のために自らを与え続けた女性がいたということは大きいと思います。もちろんデントンに限らず、多くの方々が学校のため、学生のため、神様のためと、心と思いを尽くして働いてこられたのだということをわたしたちはしっかりと認識し、与えられているものを受け取るだけにとどまらず、与える立場の者としてさまざまな場所で働くことが求められているのではないでしょうか。特に、ここにいる皆さんには、同志社女子大学の歴史を知って、礼拝を大切に守って、一人一人に与えられた神様からの賜物を生かし、自分の可能性を信じて新しい同志社女子大学の歴史を作っていく一人として、歩んでいただけたらと思います。

130年を語りつぐ