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教員によるコラム

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※所属・役職は掲載時のものです。

正常に早く戻そう金融政策

2006/01/01

田口 奉童   (現代社会学部教授)

金融政策や財政政策など経済政策は、政策を実施するときに掲げた目標が達成されれば即刻その政策を撤回し、正常に戻すべきだと思う。経済政策は国民や企業の財産の価値を国家の意図として増減させるものであり、市場経済主義を唱え財産管理は自己責任とされるわが国において、ポリシーメーカーはこのことを肝に銘じなければならない。

日銀は2001年3月、止まらない景気の低迷と物価の下落に対して「通常では行われないような、思い切った金融緩和」策として、一般の銀行の懐に現金を詰め込むような日銀当座預金残高維持(当初5兆円、現在30~35兆円)を行い、金融機関同士が資金を融通し合うコール金利をゼロに誘導してきた。その緩和策解除の条件として、日銀は2003年10月、消費者物価がゼロ%以上に安定的に上昇すること(つまりデフレから脱出する)、経済・物価を総合的に判断することだと公約した。

日銀は量的緩和策の解除(そして次のゼロ金利からの脱却)が視野に入ったとしている。判断基準の一つ消費者物価上昇率(前年同月比)が05年10月0%、11月0.1%と連続してゼロ以上になり、1月末に公表される12月分もプラスになる見込みが強まってきたからだ。もう一つの条件である景気は、実質GDP成長率で見る限り02年1月を底として順調に成長軌道を歩んでいる。となれば解除条件は満たされる。

政府・与党は、消費者物価指数だけでデフレ脱出の判断は出来ないとか、景気の腰折れが心配とか言い出し、日銀に待ったをかけている。政府サイドでは財政政策を着々と正常に戻しているのに、である。06年度予算案は、歳出規模を79兆円台に縮減、歳入も「サラリーマン増税」(99年に景気対策として導入された定率減税は、景気が回復したとして、06年度に半減、07年度には全廃される)で税収の改善をはかり、新たな国債借入額を30兆円以下に抑えるなど、長い道のりである財政の構造改革にも着手した。

今の金利ゼロの金融政策は、個人の預金資産774兆円(05年9月末)の利息をゼロにして、国と地方の債務774兆円(05年度末予想、長期のみ)の借入コストを低く軽減、財産価値を個人から政府に移転することにほかならない。その財政政策をやりたいのなら堂々と世論と向き合い、議会で法制化するのが筋である。その前に金融政策を正常化するのが先なのである。