令和6年は辰年!

2023/12/01

吉海 直人(日本語日本文学科 特任教授)

 

令和5年は卯年ですから、来年の干支は5番目の辰になります。さすがに5番目ともなると、やはり辰にまつわる面白い話(何故5番目なのかなど)は見当たりません。
その代わり、辰年生まれにいつもついて回るのが閏年です。
これはご承知のように新暦のずれを調整するために設けられたもので、4年に1度だけ2月が29日までになります。もっとも辰年は12年に1度ですから、子年と申年も同様に閏年になります。
幼かった頃、2月29日に生まれた人は、4年に1度しか誕生日が回ってこないんだと本気で思っていました。でも2月29日に生まれたからといって、年を取らないわけではありませんよね。結局、翌3月1日を誕生日とみなしてお祝いしているようです。
もう一つ、閏年に付き物なのが4年に1度開催されるオリンピックです。来年はフランスで開催されるパリオリンピックが予定されています。日本人選手の活躍を期待しましょう。

さて肝心の辰年ですが、辰(龍)は想像上の動物で実在はしていませんよね。干支の中で実在していない動物は、唯一龍だけです。では何故架空の動物が干支に入っているのか、不思議だと思ったことはありませんか。

そもそも古代中国の殷の時代に干支が定められた際、それは木星の軌道上の位置を示すものでした。つまりもともと動物とは何の関係もなかったのです。それが後漢の時代になると、王充という文人が民衆にも干支のことを周知させたいと思って、干支に身近な動物を当てはめました。それが今日の干支の起源ということになります。

では後漢の時代に龍は実在していたのでしょうか。もちろんそんなはずはありません。当時、中国には麒麟・鳳凰・霊亀・龍という4種の霊獣の存在が信じられ、権力の象徴として尊崇されていました。つまり龍は今よりもずっと身近なものだったのです。それだけでなく当時の漢方薬には、万病に効く「龍骨」という薬がありました。これはどうやら大型の哺乳類や爬虫類の骨(中には恐竜の骨も含まれる)の化石を削ったもののようです。
ということで、龍は想像上の動物ではなく、かつて実在していた動物として認識されていたらしいのです。それが日本に伝えられると、龍にまつわる話が日本独自に全国的に広まっていきました。特に龍は水(雨)の神様として祀られているので、池や滝など水にかかわりのある場所で広く信仰されています。

なお中国では、背丈が八尺を超える大きな馬のことを「龍」と称したとされています。そのため出世や飛躍を期待して「龍馬」という名前がつけられました。坂本龍馬もその一人だったのです。
また黄河の急流にある龍門では、そこを登った鯉は龍になると言い伝えられていました(これが鯉のぼりの起源です)。これも人の栄達や立身出世の願いが込められていますね。それもあってか寺号に「龍」とあるお寺も珍しくありません。天龍寺・龍安寺・大龍寺・龍光寺・龍音寺・龍福寺・瑞龍寺などいろいろありますね。どうやら龍は縁起のいい言葉のようです。
今注目を浴びている将棋の駒にも龍がありますね。といっても飛車が成って裏返しになると出てきます。「龍」とか「龍王」とか書かれています。駒の中では最強の駒とされているものです。また天井に見事な龍(蟠龍)が描かれてるお寺もたくさんあります。京都では建仁寺・妙心寺・天龍寺・南禅寺・東福寺・大徳寺・相国寺などの龍が有名です。その下で手を叩くと、いかにも龍が鳴いたように聞こえるとされています(鳴き龍)。

ところでみなさんは龍の手を見たことがありますが。龍の指は何本描かれているか知っていますか。実は龍にも身分差があって、「五爪天子、四爪諸侯、三爪大夫」とされています。つまり五本は皇帝の象徴、四本は諸侯、三本は大夫と別れているのです。また「中国五本韓国四本日本三本」という言い方もあります。要するに日本は地位が低かったので、三本爪の龍(大夫)に譬えられていたのです。そのため日本で描かれている龍は三本爪が主流になっているのだそうです。今度龍の絵を見る時には、爪が何本か数えてみてくださいね。

さあ来年は昇り龍のように運気が上り調子になることを期待しましょう。
皆さんにとっていい年になりますように。

※所属・役職は掲載時のものです。