同志社女子大学第10代学長大橋 寿美子(1998-2001)

新しい世紀の始まろうとしている今、2000年に、同志社女子大学創立125周年記念写真集がまとめられた。御所の一隅でささやかに始められた女子塾は、今日、2校地にわたる、五千人規模の女子大学となっている。125年間の卒業生数はおよそ四万人。
この間、とくに、創立の1876年から20世紀半ばまでは日本社会の激動期であった。西欧文明の急激な吸収と価値観の揺らぎ、相つぐ戦争と社会不安、そして第2次世界大戦終結後に原則となった民主主義と男女平等思想など、社会はおおきく揺れ動き、その中で本学も、女子教育の理想の実現のために必死の模索を続けてきた。
歴史。それを形成するのは何か。史観により、歴史的必然、偶然、自由意思などと主張は異なろう。だが、本学の歴史をふりかえってみると、個人の意思を超えた激しい時代の波に左右された事実よりも、人間の主体的姿勢の持つ意味の大きさに感嘆せずにはいられない。困難な状況の中で、本学の教育の方向を決定し活力を与えてきたのは、信念に裏打ちされた個々の人間の意思と情熱であったこと、そして、それこそが本学の歴史を輝かせていることをあらためて認識させられる。
21世紀はどのような時代になるだろうか、そしてその中で本学の位置は、と考えるとき、ただ、外的状況に流され、受身に待つのみであってはなるまい。私たちの未来は私たちが作る。過去・現在・未来を結ぶ同志社女子大学の歴史の流れに一貫しているのは、人間教育の場として理想を追い求める真摯な姿勢であるはずだ。過去に学びつつ、未来への想いを共有し確認することにより、本学の新しい歴史を築きたい。
この記念写真集の編集にあたっては、実に多くの方々にお世話になった。企画・資料収集・執筆と、時間と労を惜しまず全力をあげて取り組んでいただいた編集委員の方々、地味で正確な作業で支えてくださった史料室の方々、写真その他の資料提供や聞き取りに応じてくださった卒業生や以前の教職員の方々、その他、諸方面でご援助いただいたすべての方々に心から感謝申しあげると同時に、本学にとって貴重な記念写真集の完成をともに喜びたい。


記念写真誌 同志社女子大学125年