ご挨拶

同志社第16代総長松山義則(1985-2001)

同志社女子大学創立125周年・新制大学設置50周年に際して、記念写真集『同志社女子大学125年』を発刊されました。この美しく貴重な写真集には、同志社の女子教育の長い125年にわたる歴史とその精神が宿っています。
栄光館の東よりにある御苑の入口から南に歩くと広い饗宴場あとがありました。その北べりに楠の木が数本立っていましたが、このあたりに旧柳原前光邸があり、そこがデイヴィス宅となり、スタークウェザー先生や新島八重夫人によって同志社の女子教育が開始された所であると、宣教師文書から教えられました。わたくしは同志社中学の生徒の頃から学校への通学に通っていましたのでなつかしい思いでいます。
125年前に、わたくしたちの先輩の方がたが学ばれた所であると知りましてからは、いろいろとその頃の様子や風景を想像して心に描いてみたりもしています。その後、いまの今出川通りの北に校舎がつくられましたが、古い地図を見るとそこは宮家や公卿屋敷がならび立っていました。わが国の100年を超える時代の流れのなかには、人びとのもつ生活、風俗そして文化の変遷がありました。そのなかで欧州の文明、近代科学を学び、西洋文明の基盤に脈々として血液のごとく流れるキリスト教の主義を尊重したいと新島先生は考えています。同志社の女子教育はその草創のときから、時代の波に翻弄されながらも一貫して堅実に、キリスト教主義による人間教育をおしすすめてまいりました。
本書には、わが国の明治、大正、昭和、平成に至る近代化と戦争の歴史が痛々しいほどに描かれているなかに、同志社のその青春の日々を勉学と自己の成長のために真摯にすごされた美しく勇気のある人びとの姿が写し出されています。
ここに学ばれた数多くの志高い女性の方がたは、それぞれ忘れることのできない自己の生きる原点と生涯の指針となる転機とをこの同志社の女子教育の中で見出されたことであったと思います。そこに暖かい友情が生まれ、忘れられない師との邂逅がありました。そして現在、女子大学は今出川校地に加えて京田辺校地に大きく展開し、新しい教育環境のもとでつぎの歴史を拓きつつあります。
この『同志社女子大学125年』のなかから、同志社女子大学に集われた先輩たちが新島先生の念願された、真正の自由、自治自立、良心を手腕に運用する人物たらんとして学び自らの鍛えられた歳月を回想するとともに、本書が人びとの将来に向っての活力の源泉であるよう願っています。


記念写真誌 同志社女子大学125年