フィールドワーク 2021年度

テーマに即して現場を訪れ、社会の実情を体験して学ぶ。
多様に変化する社会構造を知り、その中にある課題の解決に向けての提言をめざすため、本学科では、さまざまな仕事や経済活動などの現場に赴き、体験から学ぶフィールドワークを重視し積極的に実施しています。現場では仕事の過程を見学するほか、そこで活躍する人々との交流や調査・研究を通して、机上では得ることのできない成果を得ています。

フィールドワークの主な実績

2021年度

「京都と大阪の境界の歴史を歩くフィールドワーク〜島本・大山崎の歴史と文化」

日時:2022年1月19日(水)
「京都・大阪・奈良フィールドワーク」 担当:天野太郎 教授

京都府西部の大山崎地域は、かつての山城国と摂津国の国境に位置し、京都への西の玄関口にあたる重要な地でした。そうした山崎には、日本における製油発祥の地としても知られる離宮八幡宮や、そこから展開してきた油神人の存在、さらには山崎合戦の古戦場など、長く歴史の舞台となってきた地です。また、西国街道と淀川水運の陸路と水路の結節点にもあたり、紀貫之の『土佐日記』にも登場する古代からのの交通の要衝でもありました。

そうした地域の歴史的な背景について、まずは大阪府側から、楠木正成の故事でも知られ戦前には有数の観光地であった桜井駅、後鳥羽上皇の離宮でもあった水無瀬神宮など、西国街道を歩きつつ現地学習を行いました。また京都府との境界にあたる離宮八幡宮では、荏胡麻を活用した精油について学ぶとともに、大山崎に営まれた洋館を活用した大山崎山荘美術館の洋画の鑑賞や、山崎合戦の舞台でもある宝寺なども訪問ししつつ、宇治川・木津川・桂川の三川合流を遠望しました。京都―大阪の境界としての立地特性について考察することを通して、京都が周辺地域とどのような結びつきを持ち、展開してきたのかについて、改めて実感することができました。

220120_fieldwork_0.jpg

220120_fieldwork_1.jpg
220120_fieldwork_2.jpg
220120_fieldwork_3.jpg

「後白河法皇法住寺殿跡と京菓子文化をあるくフィールドワーク」

日時:2021年12月22日(水)
「京都・大阪・奈良フィールドワーク」 担当:天野太郎 教授

京都・東山七条周辺地区は、平安時代末期に後白河法皇によって造営された法住寺殿をはじめとした院政の舞台としてだけではなく、その後の豊臣時代の方広寺造営のように中近世の重要な舞台となった地域です。

こうした地域を実地で考えていく上で、歴史的町並みの保存・修景の現状と課題について、現地調査・見学を通して理解するとともに、中心寺院である方広寺・蓮華王院・新熊野神社を拝観することを通して、京都の古代・中世においてこの地域の果たしてきた役割と意義にについて理解を深めることを目的として現地学習を行いました。方広寺大仏殿跡や石垣の雄大さに秀吉の足跡を感じるとともに、蓮華王院の耐震性についても学ぶことができました。

さらに、京都の重要な産業の一つである京菓子体験をおこなうことで、歴史的遺産の実地学習だけではなく、現在における観光産業のあり方、インバウンド観光が減少している中での持続可能な観光のかたちについても考察を行うことができました。

211222_social_fieldwork_kyougashi_0.jpg

211222_social_fieldwork_kyougashi_1.jpg
211222_social_fieldwork_kyougashi_4.jpg
211222_social_fieldwork_kyougashi_5.jpg

「平和学習と防災教育を学ぶフィールドワーク」

日時:2021年12月19日(日)10:00~16:00
「 社会システム学科 教職実践演習」 担当:天野太郎 教授

今回は教職課程(中学社会科・高校地歴科・高校公民科)の履修学生を対象として、平和学習と防災教育の重要性を各教科の関連性も重視しながら現地で学ぶために、大阪市内の諸施設にて学習を行いました。まず、JR森ノ宮駅に集合し、1945年の大阪大空襲の爪痕を確認したのちにピース大阪へ。太平洋戦争に至る道程や学童疎開、また大阪に投下された模擬原爆についても学びながら、戦争の悲惨さと平和の尊さについて後世に伝えていくことの重要性を再認識しました。つぎに、大阪市の防災センターへ。南海トラフ地震や上町断層による直下型地震の危険性について学んだ後、自分たちの身の安全をどのようにして守るべきか、消化訓練や被災後の避難のあり方、さらに大地震の揺れを体験するなど、防災についての基礎的な知識と学校と防災との関わりについて学ぶ機会となりました。

211222_social_fieldwork_0.jpg

211222_social_fieldwork_1.jpg
211222_social_fieldwork_2.jpg
211222_social_fieldwork_4.jpg

「六波羅と鳥辺野から清水・祇園地域への変容を学ぶフィールドワーク」

日時:2021年11月24日(水) 
「京都・大阪・奈良フィールドワーク」担当:天野太郎 教授

今回のフィールドワークでは、鴨川の東側に展開する鴨東地域を対象とし、六波羅〜鳥辺野の意味と現在との非連続性について学ぶため、六波羅〜清水寺周辺地域の学習を行いました。この地域は、かつての平安京に住まう人々の葬送の地・鳥辺野に位置し、「生」と「死」のまさに境界に位置する存在であります。また平安京造営の東の基準ともなった高野川・賀茂川の合流点ならびに祇園社、清水寺が展開し、「祇園」地域を形成しています。今回はそうした生死の境界であった地域がどのように変容し、観光地化したのか、この祇園地域の形成と展開において重要な寺社の見学と、現代的な景観保存の問題について学習を行いました。六波羅蜜寺や六道珍皇寺の立地の意味や、インスタグラム観光で注目を集める八坂庚申堂と夢見坂を見学ののち、清水寺の地形的特質と歴史的な形成過程について現地学習を行いました。おりしも紅葉が一際美しい季節でもあり、過密な観光地の問題であるオーバーツーリズムの実態と課題についても考えさせられるフィールドワークとなりました。

211126_fieldwork_1.jpg

211126_fieldwork_2.jpg
211126_fieldwork_3.jpg
211126_fieldwork_4.jpg

「キリスト教主義を背景としたコミュニティカフェのフィールドワーク」

日時:2021年11月20日(土)
「応用演習Ⅱ」 担当:山下智子 教授

3回生ゼミの学びの一環として、キリスト教精神を背景としたコミュニティづくりの実際について学ぶことを目的として、京都市上京区において2か所のコミュニティカフェを巡るフィールドワークを行いました。

まず、最初に日本キリスト教団京都教区とバザールカフェプロジェクトの協働で営業されている「バザールカフェ」を訪れました。バザールカフェではセクシュアリティ、年齢、国籍などの異なる多様な人々が、互いを理解し合う場、働く場、ネットワークづくりの場などとして、多面的の働きがなされています。店長さんと大学3回生の時からかかわっているスタッフさん、それぞれの立場からのお話を伺い、意見交換をしました。

次に公益財団法人である「京都YWCA」を訪れました。京都YWCAの敷地内にはふれあいの居場所食堂「うららかふぇ」のほか、サービス付き高齢者向け住宅「サラーム」、自立援助ホーム「カルーナ」女子留学生寮「あじさい寮」、京都市認可「あじさい保育園」があり、「多世代・多文化ふれあいコミュニティづくり」に女性が中心となって取り組まれています。主事さんより館内を丁寧にご案内いただいたのちお話を伺い、理解を深めました。

キリスト教精神を背景にしているとはいえ、それぞれに異なる特色をもった2つのコミュニティカフェですが、「居場所づくり」「助けてといえる場所」など共通するキーワードが大切にされています。コロナ禍の現代社会において、出会う一人ひとりを大切に歩むそれぞれのカフェの取り組みは、参加した学生たちにとっても大変心に響くものであったようです。

なお「バザールカフェ」「うららかふぇ」ともにヴォーリズ建築の古い洋館をカフェとして活用されていますので、そうした意味でもキリスト教の価値観や文化の豊かさに触れ有意義な学びの時間となりました。

211202_fieldwork_0.jpg

211202_fieldwork_2.jpg
211202_fieldwork_3.jpg

(集合写真を撮影した時のみ、マスクを外しています。)

「鴨東・岡崎地域における近代期の都市開発を辿るフィールドワーク」

「京都・大阪・奈良フィールドワーク(水2・3)」担当:天野太郎 教授

東山山麓を含む鴨東地域は、古代からの京都への主要街道・東海道の入り口にあたるとともに、近代期には琵琶湖疏水開削といった陸路と水路の古代〜近代にわたる結節点となっていました。また、交通の要衝である同時に、その結節性を重視してとりわけ近代期の京都の発展を支える重要な意味を有してきました。

このような観点から、近代期の陸軍測量図、絵図資料や担当者の執筆した解説書をもとに現地の地域的特質を把握した後に、まず琵琶湖疏水の開発を見学するため、疏水施設(蹴上水力発電所、九条山ポンプ場)を見学しました。さらに南禅寺境内に存在する琵琶湖疏水の疏水分線を支える水道橋・水路閣の成立と都市景観に与える意味についても学習を行いました。

この岡崎の地は、明治28年(1895)に第4回内国勧業博覧会会場となり、さまざまな近代的な技術や各地の産物が集い展示・交流する場となりました。その跡地は、日本で2番目に誕生した動物園や、美術館・博物館へと連続性を持って展開していますが、そうした諸施設を見学するとともに、近代期に作られた「平安神宮」を事例としながら、観光のまなざしと共に発展した寺社や、疏水の水利用の一環である近代庭園を見学し、「京都らしさ」の本質的なあり方について学ぶことができました。

211111_fieldwork_0.jpg

211111_fieldwork_1.jpeg
211111_fieldwork_2.jpeg
211111_fieldwork_3.jpeg

「宇治地域の地理的・歴史的重要性を考えるフィールドワーク」

日時:2021年10月27日(水)
「京都・大阪・奈良フィールドワーク」担当:天野太郎 教授

南山城地域に位置する宇治は、古代からの東山道・北陸道など陸上交通路を、淀川水系の水運を結ぶ陸路と水路の古代の交通の要衝であると同時に、源融の別業としてその後の平等院の形成に象徴される都市が展開してきました。今回の授業では、その京都文化の残る宇治を中心とした諸史跡を見学すると同時に、宇治に展開する文化を通して、平安時代からの京都の歴史の一端を学習することを目的としてフィールドワークを行いました。

まず、文献上最古の長大橋である宇治橋の建設とその意味について見学を行いながら、宇治上神社を訪問しました。世界文化遺産でもある当神社は、拝殿が寝殿造となっている非常に珍しい神社であり、平安〜鎌倉期の建築様式を知ることができます。宇治の由来となった菟道皇子に関する文献資料と対照させながら、宇治の歴史的な意味を含めて考える機会となりました。

また、宇治を文学作品の側面から理解を深めるため源氏物語ミュージアムを訪問、当館長で宇治市歴史資料館館長を兼任する家塚智子館長から、博物館展示の意味や宇治の重要性について説明を受けながら、別業としての宇治のあり方について知ることができました。さらに対岸の平等院などの訪問も通して、宇治の重層的な歴史・文化について学ぶ1日となりました。

211104_fieldwork_0.jpg

211104_fieldwork_1.jpg
211104_fieldwork_2.jpg
211104_fieldwork_3.jpg

「宇治田原町 インスタ観光を通した地域活性化プログラムと現地フィールドワーク」

日時:2021年10月10日(日)10時〜18時
「インターンシップⅡ・みらいまちづくりファクトリー研究会」担当:天野太郎 教授

このプロジェクトでは、京都府南部の地域活性化をどのようにして進めていくのか、その実践を通して様々な提案を行っていく内容で昨年度から京都府南部の宇治田原町にて進めています。宇治田原町は私たちの京田辺キャンパスからも程近く、また緑茶発祥の地としての茶文化が発展し、さらに近年では正寿院のハートの形の窓枠が、インスタグラム観光として京都を代表する観光資源の一つともなりつつあります。そうした宇治田原町で、通過型観光ではない地域交流をいかに進めていけるか、宇治田原町の協力も得ながら地域連携型学習プログラムを進めています。

今回のプログラムでは、本年8月からゼミで実施していた宇治田原町でのインスタグラム写真コンテストのうち、WEB上での投票を行い上位5作品を宇治田原町 正寿院のご協力をいただき、その本殿にて展示させていただくことになりました。そのパネル作成と展示を進めるとともに、今回新たに参加する学生も交えて町内の観光資源を見学しつつ、どのような課題が存在し、どのような可能性があるのかを検討するためのフィールドワークを実施しました。茶を活用し、飲料としてだけでない食文化の展開や、地域交流館の活用方法、並びにインスタグラム観光の新たな「聖地」・正寿院の副住職様によるその意義や経緯、さらには町内活性化についての可能性についてもお話をいただきました。若い学生の視点・意見をどのように反映した地域活性化プログラムを進めていくことができるのか、これからも持続的に宇治田原町でのフィールドワークを進めていくことになりました。

211011_fieldwork_0.jpg

211011_fieldwork_2.jpg
211011_fieldwork_3.jpg
211011_fieldwork_4.jpg

「伏見地域の都市構造と産業の展開に関するフィールドワーク学習」

日時:2021年10月6日(水) 10時30分〜15時
「京都・大阪・奈良フィールドワーク」担当:天野太郎 教授

社会システム学科の授業「京都・大阪・奈良フィールドワーク」は、本学科の特徴の一つである現代社会を実地に多角的に学ぶという教育方針のもとで、京都を中心とした地域構造について実地学習を中心に行う授業として長年継続して開講されてきている授業です。また、授業での学外フィールドワークは、これまでの深刻なコロナ禍の中で学生の学習環境と命を守る意味で制限されていましたが、9月30日まで発令されていた緊急事態宣言の解除と、10月4日からの大学対面授業再開を受けた形で、かつ十分な感染症対策をおこなった上で、また受講者人数を従来より大幅に制限した形で実施しました。

さて、今回の目的である伏見地域は、伏見街道・竹田街道・鳥羽街道と淀川水運の陸路と水路の古代の交通の要衝であると同時に、その地理的な結節性を重視して伏見城に象徴される都市が展開してきた地域です。現在では昭和期の合併により京都市の一部となっていますが、かつては「伏見市」として独立した行政体で、京都とは異なる独自の歴史的な歩みを進めてきた地域でもあります。

そうした近世の地域開発に伴って水運と結びつき発達した伏見の立地特性について、とりわけ宗教都市としての側面(伏見稲荷など)と酒造業に注目をして考察することを目的としてフィールドワークを行いました。古地図や資料での学習を行った上で、伏見稲荷大社と酒造業との関わり、稲作のあり方を学びながら、伏見街道の役割や近代期の琵琶湖疏水の成立など、多角的な視点から学ぶとともに、月桂冠大倉記念館での酒造の展開や、港湾都市としての成立を考える上で重要な船宿・寺田屋の立地と文化財としてのありかたについて考えることができました。

211008_fieldwork_1.jpg

※集合写真時のみ、集合し撮影しました。

211008_fieldwork_2.jpg
211008_fieldwork_3.jpg
211008_fieldwork_4.jpg

フィールドワーク