フィールドワーク 2020年度

テーマに即して現場を訪れ、社会の実情を体験して学ぶ。
多様に変化する社会構造を知り、その中にある課題の解決に向けての提言をめざすため、本学科では、さまざまな仕事や経済活動などの現場に赴き、体験から学ぶフィールドワークを重視し積極的に実施しています。現場では仕事の過程を見学するほか、そこで活躍する人々との交流や調査・研究を通して、机上では得ることのできない成果を得ています。

フィールドワークの主な実績

2020年度

「京都フィールドワーク(京都文化・奈良文化の境界―京田辺を歩く)」

日時:2021年1月6日(水)
学生:7名
担当:天野太郎 教授

今回のフィールドワークでは、本学所在地の京田辺の歴史・文化的な意義を再発見する目的で、京田辺の文化財と歴史地理的な意義について学習を行いました。

京田辺は、京都の「郊外」というイメージが強いが、京都の周縁というだけでなく、京都文化と密接なつながりがあると共に、山陽道・山陰道・東山道が市域に存在し、古代から交通の要衝として重要な地域です。そうした地に私たちの大学があるということを知る機会となりました。

まず,京都・大徳寺の住持であった一休宗純が居住していた酬恩庵(一休寺)を訪問し、当時の京都市街地の状況や、なぜこの地に居住し、大徳寺に通うことになったのか、歴史的な背景を学ぶと共に、京田辺の地の重要性について学習を行いました。また日本を代表する伝統芸能である能文化の発祥の地の一つである薪集落との関連性についても知ることができました。

また,同志社大学の西に位置する観音寺では、日本に七体しかない国宝十一面観音像を見学し、十一面観音の意味や、観音寺が奈良・興福寺の北の塔頭の一つであり、奈良文化の北端としての意義を学ぶことができました。実際に国宝の仏像を間近に観察しつつ住職の講話を伺うことができ、まさにこの地が京都文化・奈良文化のまさに境界に位置していることを再認識しました。

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「京都フィールドワーク(京都国立博物館見学と和菓子作り体験)」

担当者:天野太郎 教授
期間:2020年12月23日(水)10:00〜15:30
学生:6名

今回のフィールドワークは、御白河法皇の院の御所であり、その後も秀吉の拠点・方広寺となり、近代期に跡地が博物館敷地ともなっている京都・東山七条一帯の歴史的形成過程と文化の発進拠点となっているプロセスについて学習を行なうとともに、京文化の一つである和菓子の作成を体験しつつ学ぶ機会を得ました。

まず、東山七条の中心的存在である京都国立博物館を訪問し、特別展を拝観しました。

それと同時に、京都国立博物館敷地は御白河法皇の院御所の一つであり、その後豊臣秀吉によって造営された方広寺大仏殿にも近接しています。その遺構も敷地内に点在しており、それらを確認しながら、京都の歴史的空間の連続性について知見を深めることができました。

その後、甘春堂本店にて、和菓子作り体験と試食をしました。四季折々の作物と連動する季節感と、茶道とも深く連動する京菓子。その歴史的背景のお話を伺いつつ、実際に和菓子を製作しながら、その繊細さや伝統的な京文化の一端に触れることができました。甘春堂本店の周辺には秀吉の耳塚や方広寺の梵鐘銘文など、高校の日本史で学んだ史跡も数多く存在します。そうした史跡にも足を運びながら、京文化と歴史の織りなす重層性、その奥深さを改めて認識することができました。

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「防災教育と平和教育に関するフィールドワーク」

担当者:天野太郎 教授
期間:2020年12月19日(土)10時〜17時
場所:大阪市立阿倍野防災センター
   ピースおおさか大阪国際平和センター
授業:「教育実習 A・B」を中心とした4年生 15名

今回は社会システム学科の教職課程履修の4年生を中心として、防災教育や平和教育に関する知見を深めるために、大阪市の防災・平和教育施設を訪問学習しました。

近年多発する自然災害や、近く発生すると喧伝される南海トラフ地震など、私たちの生活の安全を確保し、災害に対して備えていくことは、これからの社会の喫緊の課題となっています。その中でも子供たちが日中多くの時間を過ごす学校現場は、子どもたちの生活の場として安全性が求められるだけでなく、地域防災や避難の拠点として重要な位置を占めています。

そうした観点から、今回は防災に関して大阪市立阿倍野防災センターと、関連して平和教育についても視野を広げるため、第二次世界大戦期の大阪大空襲を中心とした展示施設である大阪国際平和センター(通称:ピースおおさか)を訪問し現地学習を行ないました。

大阪市は南海トラフ大地震による津波災害、ならびに市域中心部を縦走する上町断層による地震被害が想定されており、そうした災害にいかに備えるべきか、これからのまちづくりのあり方について考えさせされる展示が多くあります。被害想定や地震メカニズムについての学習を行なった後、震災後の街並みを再現したセットや、消火活動の模擬演習、また実際の揺れを室内体験できるシステムなどを通して、どのような備えが必要なのか、また学校における防災教育の方向性について学ぶことができました。

また、大阪大空襲に関する資料を展示する大阪国際平和センターでは、写真資料、空襲時の爆弾の破片などを見学し、生存者の証言も通じた戦争の凄惨さや、平和教育の必要性を再認識することができました。また、近接して立地する殉職教員を慰霊する「教育塔」にも訪問し、子どもたちの安全・安心を多角的な視点から見守る教育者としての原点について理解を深めることができました。

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「ドイツの伝統建築見学と自転車交通の意義を考えるためのフィールドワーク」

担当者:服部尚己 特任教授
期間:2020年12月5日
場所:JR大津駅から瀬田の唐橋周辺、ドイツレストラン『ヴュルツブルク』
クラス:応用演習Ⅱ(3名)

JR大津駅周辺から瀬田の唐橋までの風光明媚な土地の景観を楽しみながら、自転車交通の意義を考えるフィールドワークを行いました。最初に、大津駅前でレンタル自転車を借りました。琵琶湖周辺は琵琶湖一周サイクリングの盛んな所であり、気軽に自転車をレンタルできます。(1時間250円)。大津駅をスタートし15分ほど自転車専用道を走ると、びわこ大津プリンスホテルが見えてきます。このあたりにドイツレストラン『ヴュルツブルク』があります。大津市とヴュルツブルク市は姉妹都市にあり、大津市制100周年を記念して建設された建物で、ドイツのフランケン地方に特徴的な民家をできるだけそのままの形で建設しようと、建築資材をヴュルツブルクから取り寄せ、ヴュルツブルクの建築職人を招き完成にいたったものです。「ビーバーシュヴァンツ」という瓦屋根が特徴的な建物で、インテリア、家具も全てドイツそのままで、本場ドイツの伝統様式を体験しました。二階にはヴュルツブルク市との交流の記録が展示されていました。

そのあと瀬田の唐橋方面へ湖岸沿いに走り「膳所城跡公園」に到着しました。ここまでの区域は随所にベンチが置かれ、公園としても整備されており、自転車道としても大変走りやすく整備されていました。湖岸沿いの道や車道沿いの自転車道など色々な道を走ることを通して、これからどのような「自転車専用道」を整備していくべきかを考察しました。

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「京都フィールドワーク 12月2日(水)」

担当者:天野太郎 教授
期間:2020年12月2日(水)
場所:琵琶湖疏水蹴上施設、南禅寺水路閣、京都市立琵琶湖疏水記念館、京都市立動物園など
クラス:京都フィールドワーク(6名)

今回の「京都フィールドワーク」では、近代京都の復興の原動力となった琵琶湖疏水事業の現地見学学習を行いました。明治初期に人口が半減し、首都機能も移転したことから衰退をたどっていた京都では、その復興策として琵琶湖からの多目的運河を計画・立案し、その推進によって水運・電力・衛生事業などが飛躍的に発展しました。今回はその拠点となった蹴上地域における琵琶湖疏水の現場を学習するために、水力発電所、琵琶湖疏水の疏水分線、水道橋として機能した南禅寺水路閣などを見学学習しました。琵琶湖疏水記念館での諸資料の確認を経たのち、現在では観光機能も付与された多機能型運河の意義について実感することができました。

さらに、その電力を活用した第4回内国勧業博覧会跡地が、現在では動物園、美術館として活用されていること、またそのパビリオンとして建設された施設が平安神宮として活用されていることなどを現地で確認しつつ、近代京都の原動力としての疏水の多角的な役割を学習しました。

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「京都フィールドワーク 11月25日(水)」

担当者:天野太郎 教授
学生:7名

今回のフィールドワークでは、京都と北部の物流を支えた保津川水運の歴史と文化、現在の観光での利用について学ぶとともに、嵯峨野の開発の中心地となった清涼寺(嵯峨釈迦堂)を軸としたテーマを設定し、現地学習を行ないました。

JR亀岡駅に集合したのち、亀岡盆地特有の霧の発生状況や、亀山城ゆかりの地域の歴史を概観しながら保津川下りの船に乗船しました。江戸時代以降活発に利用された物流路の展開や、京のくらしを支え続けてきた船運のあり方が、今日では観光用としていかされていることについて学習を行いました。

保津川は途中で大堰川と名称を変え、その名称の由来となった堰の役割について学びつつ、嵯峨野の開発の歴史とその中心的役割を果たした清涼寺を訪問しながら、古代から中世にかけて京都郊外における一都市として発展してきた嵯峨野の景観について学ぶことができました。

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