学習環境・施設
2005年3月、京田辺キャンパスに薬学部実験実習棟「憩水館」が誕生しました。高度な専門知識や技術を習得するための最新設備がそろい、キャンパスの東南端には薬用植物園も備えています。
憩水館 薬学部実験実習棟
建物には実験室・研究室・薬品室・動物実験室・機器室・模擬薬局・資料室・事務室・会議室など多彩な施設が設置されています。
模擬薬局



薬学棟内に設置された模擬薬局実習室では、患者さんとの接遇、調剤、注射薬の無菌調製、医薬品の最新情報の検索など薬剤師業務の基本のすべてを修得します。
模擬病室
薬学棟内に設置された模擬病室では、心電図、X線、エコー、血圧などの診断技術を体得しつつ、さまざまな検査所見に基づいた薬物治療のあり方や、模擬患者を対象にして、服薬指導などの基本を習得します。
研究設備
プレートリーダー


プレートリーダーは、吸光度、蛍光、発光など、さまざまな測定モードに対応しており、生化学や薬理学、分子生物学などの研究において、酵素反応や細胞の活性、タンパク質や核酸の定量などに広く使用されます。研究者は、この装置を使って、高速かつ精密にサンプルを分析し、データを収集することができます。
蛍光顕微鏡
本オールインワン蛍光顕微鏡(Fluorescence microscope)を使用することで、暗室が不要で高解像度かつ高感度の蛍光観察が可能です。さらに、明視野や位相差を利用して組織切片や生細胞を観察する際、接眼レンズを通すのではなく、モニターに直接出力することで、多数の学生が同時に観察できます。また、通常の蛍光観察に加え、構造化照明法による光学セクショニングが可能であり、共焦点レーザー顕微鏡に匹敵する画像を取得することができます。さらに、温度とCO2制御チャンバーの脱着が可能なため、顕微鏡上で細胞を培養しながらタイムラプス撮影も行えます。これらの実験データは、セミナーや学会発表、論文作成に効率的に活用できます。
原子間力顕微鏡
原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscop)は、非常に小さなもの、例えば原子や分子レベルの表面を調べるための装置です。特殊な針を使って、試料の表面をなぞることで、その細かい凹凸や構造を高精度で観察することができます。この顕微鏡は、細胞や材料の表面を観察したり、物質の硬さや弾力性を調べたりするのに使われます。例えば、薬の研究や新しい素材の開発に役立ち、そのデータは研究発表や論文にも利用されます。
等温滴定カロリメーター
等温滴定カロリメーター(ITC:Isothermal titration calorimetry)は、薬やタンパク質がどのように結びつくかを調べるための装置です。試料の間で起こる化学反応によって発生する微小な熱を測定し、分子同士の結合の強さや性質を解析します。たとえば、薬物が標的タンパク質にどのように結びつくかを理解するために利用されます。また、この装置は、分子の熱力学的な性質も調べることができるため、薬の開発や分子間の相互作用を探る際に非常に有用です。試料を自然な状態で解析できるため、精度の高いデータを得ることができます。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS)
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS:Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)は、薬やタンパク質、DNAなどの分子の質量を正確に測定する装置です。試料に「マトリックス」と呼ばれる物質を加えてからレーザーを当てることで、分子が飛び出します。その飛行時間を測定して、分子の質量を計算します。また、細菌やウイルスの特定、病気の原因となるタンパク質の解析、新薬の開発など、生命科学や薬学の研究に幅広く利用されています。さらに、迅速な測定が可能で、多くのサンプルを効率的に解析できるため、臨床や研究の現場で不可欠な装置です。
核磁気共鳴装置
核磁気共鳴装置(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)は、化合物の構造決定に使用される分析機器です。原子核が電磁波を吸収する性質を利用して、化合物中の原子について、その原子の数、電子的環境、結合に関する情報などを得ることが出来ます。低分子有機化合物の詳細な構造解析、測定サンプルの純度確認、タンパク質等の中分子化合物の構造解析など、その用途は多岐に渡ります。
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー(FCM:flow cytometry)は、血液や細胞のサンプルを光で分析し、細胞の種類や内部の状態を調べる装置です。がんや免疫の研究だけでなく、基礎的なバイオ研究でも細胞の特性を詳しく知るために使われます。たとえば、細胞の成長や分化のプロセスを理解するためのデータを集めたり、特定のタンパク質を持つ細胞を検出したりするのに役立ちます。短時間で詳細な情報を得ることができ、医療や研究の現場で重要な役割を果たしています。
動的光散乱測定装置
この装置は、動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)およびゼータ電位の測定ができる機器です。DLSは、粒子のサイズや分布を測定するために使われ、主にナノ粒子やコロイドの研究に利用されます。ゼータ電位の測定は、粒子が液体中でどのように帯電しているかを評価し、分散安定性や表面特性を理解するために重要です。これらの測定は、薬学、材料科学、バイオテクノロジーなどの分野で広く応用されています。
DNAシーケンサー
DNAシーケンサー(DNA:sequencer)は、遺伝子の配列情報を解析するために使われ、医療、バイオテクノロジー、遺伝子研究の分野で重要な役割を果たしています。この装置を用いることで、DNAの塩基配列を迅速かつ正確に解析でき、遺伝的な疾患の診断や治療、進化研究、新しい薬剤の開発などに貢献しています。
フーリエ変換赤外分光法
フーリエ変換赤外分光法(FTIR:Fourier transform infrared spectrometer)は、物質が赤外線をどのように吸収するかを調べることで、化学構造や分子の特定が可能な分析手法です。特に有機物の官能基や化学結合を迅速に解析でき、医薬品、材料科学、環境研究など幅広い分野で活用されています。FTIRは、非破壊的かつ高精度な測定が可能で、微量な試料の分析にも優れています。
走査型電子顕微鏡
走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)は、試料表面を高解像度で観察するために使用され、ナノメートルレベルの詳細な画像を取得することができます。主に材料科学や生物学、医薬品研究において、微細構造の解析や表面の特性評価に利用されます。SEMは高倍率での観察が可能で、微小な構造や形態の解析に優れたツールです。
液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS)
液体クロマトグラフィー質量分析計(LC/MS:Liquid Chromatography-Mass spectrometry)は、溶液中に含まれる種々の成分をその特性に基づいて分離した後、イオン化して電荷と質量の違いにより検出する分析手法です。LC/MSは、生体成分、医薬分子、食品および環境中の化学物質等の定性及び定量分析に不可欠な分析機器として広範に利用されています。
円二色性分散計(CD)
円二色性分散計(CD:Circular Dichroism spectrometer)は、ペプチド、核酸、高分子、超分子の構造解析に使用する分析機器です。光学活性物質の円二色性を測定することで、タンパク質や核酸の溶液中の二次構造を決定することが出来ます。その他、有機化合物の絶対立体配置の決定にも利用可能です。
高分解能核磁気共鳴装置(NMR)
物質は細かくみると原子の繋がりからできていますが、その原子はさらに原子核と電子から構成されています。高分解能核磁気共鳴装置は磁場の中に置かれた原子核がラジオ波照射により共鳴現象を起こす性質を利用し、有機化合物の精密な構造解析を行う装置です。医薬品や農薬のような有機化合物から核酸、タンパク質などの生体成分の分析に威力を発揮します。
超臨界流体高速液体クロマトグラフィー/質量分析システム8050
二酸化炭素は圧力と温度を制御することにより、気体と液体の性質を併せ持つ超臨界流体となります。超臨界流体高速液体クロマトグラフィー/質量分析システムは、この超臨界流体を用いて超微量成分を抽出・分離し、タンデム質量分析計で検出する装置です。この装置により、固体試料や様々な生体試料中の超微量成分の高感度な定性・定量分析が可能です。
薬用植物園(オリーブ館)


薬用植物園は薬学部での実践的な教育や研究における貴重な資源植物の育種と供給の場として欠くことのできない施設です。世界で利用されている医薬品の約60%は天然資源に由来します。薬学における薬用植物の役割は、薬の原点としての薬用植物、生薬の基原植物、さらに重要医薬品の原料としての薬用植物などの実物を知る教育材料の提供と、さらに遺伝子資源の保護という立場から貴重な薬用植物資源の収集、保存など生物の種の多様性の保全があります。 主に栽培しているのは、日本薬局方収載生薬・漢方用薬・民間薬などに用いられている薬用植物、および香料・食料・染料などに用いる有用植物類です。
薬用植物園はキャンパスの東南端に位置し、管理棟区域と見本園区域からなっています。
総面積:1,000 m² / 園場面積:700 m² / 管理棟:100 m² / 温室:50 m² / 栽培植物数:約200種
動物管理施設
薬学の動物管理施設はさほど大きなものではなく、薬学部の地下一階(広さ230㎡)にあります。
収容している動物は主としてマウス、ラット、モルモットです。京田辺キャンパスの憩水館地下一階の動物管理施設は動物飼育室5室と実験処理室1室、更衣室、洗浄室、飼育者休憩室、機械室、保管庫等から成り立っています。