第5章 室内デザインについて

しっくいと木だけのインテリア

室内の仕上は全室共通で床が米松の長尺板張り、腰壁が米松の竪羽目板張(一部鏡板張)、壁が白しっくい塗、天井が米松板張(一部白しっくい)、造作材と建具が杉となっている。
特に天井は井の字形に分割した特徴的なデザインとなっている。杉の見切縁で切り取られた井の字の部分は白しっくいで仕上げ、残る部分は米松板で方向を変えて張っている。見切縁を良く見ると、くり型状に加工された洋式のディテールなのだが、細く繊細につくることで、日本的な雰囲気も醸している。
天井と壁の入隅部分が曲面で連続的に仕上げられているので、充分な天井高の空間がさらに広く見え、室内の一体感も強調されている。
このシンプルでありながら、和洋が巧みに折衷されたデザインは、ジェームズ館の特徴なので、大部分を原形どおりに改修する方針とした。天井は解体すると再現不可能と判断し、仕上のみをやり直し、壁・床は、原材を活かしながら下地も含めて補修した。椅子を使う2階の居室や廊下については、防音のためにカーペットを置敷きした。

しっくいと木のインテリア

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木の質感あふれる開口部

上げ下げ式の外窓は、バランサーを埋め込むために木製の額縁を大きく廻し、面台も大きなものとしている。2連や5連に連なる部分では、窓と窓の間を木で方立状にしつらえて複数の窓を一体感のあるものとしている。
廊下扉についても窓と同様に、巾広の額縁を施し、杉材の鏡板張り風の建具をはめ込んでいる。建具枠のディティールを統一することで、雑多な印象を与えない、メリハリのあるインテリアが実現されている。
建具類は殆ど当初の材を補修し、表面を仕上げし直して活用する方針とした。取手金物などは一部が取り替えられていたが、オリジナルの類似品を探し形状の統一を図った。

上げ下げ式の外窓

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最も洋館らしい廊下と階段

東西に廊下を通すため、直交する煉瓦壁にアーチ状の開口をあけている。これが単調になりがちな廊下に独特の奥行き感とアクセントを与えている。旧静和館に見られた壁付柱のデザインは施さず、外観同様にデザイン統一が優先されたことをうかがわせる。
天井とアーチ壁との交点は、亀尾形状の見切縁としている。めずらしい形態であるが曲面同志の取り合い処理が美しく強調されている。
階段はトスカンオーダーの手すりが旧静和館と同様に特徴的で、特に東側は2階廊下が1/4円だけ張り出した吹抜を有し、飾り棚と合わせて、メイン出入口部分のインテリアを印象的なものにしている。階段の段板については、取り替えられていることが判明したので、旧状をとどめていた部分を参考に復原した。

階段

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初期の電灯照明デザイン

竣工直後の卒業アルバムから廊下には2灯型のペンダント、居室には4灯型のペンダントがあったことを確認した。
電灯照明の普及初期のものと思われるので復原を試みた。ジェームズ館オリジナルのデザインのようだが、同時期の山口県庁舎などよりシンプルな形状で、その後のガラスセード付ペンダント照明の基本形とも言える形状である。
木製の吊木は曲線などは使わず、直線的かつ力学的にシンプルに構成されている。ガラスセードも花形とはせず、少し角を出す加工で機能美を感じさせるものとなっている。女学校の教室なので、華美な装飾は抑えつつ、緊張感のある繊細なデザインを意図したのだろう。
ちなみに当初のペンダント配置は不確かで、今後の活用上の照度要請もあったので、ランプは現代のものを採用した。それでも照度が不足する室には、天井しっくい仕上の部分にシンプルなデザインの蛍光灯器具を付加した。

照明 照明


ジェームズ館探訪