薬学教育モデルコアカリキュラム

コアカリキュラムについて

近年、医療技術や医薬品の創製・適用に大きな科学的進歩が達成されました。そこで、医療を担う主役の一人である薬剤師にも、最先端の知識と研究能力が求められるようになってきました。これが薬剤師に6年制課程が導入された理由です。新しい時代に対応できる知識と能力を備えた、優れた薬剤師を養成するためには、薬学教育全体の見直しが必要でした。これまでの知識教育に偏ったカリキュラムではなく、知識教育、技能教育、態度教育を組み込んだ統合的なカリキュラムが求められたのです。
これから示します「薬学教育モデルコアカリキュラム」は、日本私立薬科大学協会と国公立大学薬学部長会からの案を統合して2002年に組まれ、「実務実習モデルコアカリキュラム」(PDF:50KB)「卒業実習カリキュラム」(PDF:11KB)を加えて2003年に完成したものです。日本のすべての6年制薬学部は、これらを基本とし、そこに大学独自の工夫を加えて教育を行うこととしています。そのため、「薬学教育モデルコアカリキュラム」の内容を理解しておくことは、これから薬学を学ぶ学生にとって非常に重要です。
「薬学教育モデルコアカリキュラム」(PDF:1.2MB)

の3つの大きな柱からなっています。
4年次生までに達成すべき目標をクリアすると、臨床現場に出るための最低限の知識と技能が身についているはずです。これを確認するために、全国統一の共用試験が行われます。共用試験は、知識を問うComputer Based Test (CBT)と、技能を問うObjective Structured Clinical Examination (OSCE)の2つからなり、両方に合格してはじめて臨床現場での実務実習にでることができます。言うまでもなく、共用試験や薬剤師国家試験の出題基準は、この「薬学教育モデルコアカリキュラム」に基づいています。カリキュラムの中で、△が付いている項目は、実務実習前には習得する必要がない、すなわち、CBTの出題範囲ではないことを示します。
5年次の実務実習は実務実習モデル・コアカリキュラムに従って行われ、また4~6年次の卒業研究は卒業実習カリキュラムを参考にして行われます。こうして臨床能力と研究能力を兼ね備えた薬剤師としての基本能力を獲得し、卒業した暁には薬剤師国家試験の受験資格が与えられます。以上6年間の学びのスケジュールをわかりやすく図1に纏めてあります。

カリキュラム

薬学教育モデルコアカリキュラムのうち最も大きいC群(薬学専門教育)は、次の7つの大きな柱を持っており、それぞれがユニットに分かれ、A,B群を含めた全体として67のユニットがあります。

C群

各ユニットについて一般目標が設定されていますが、それぞれの細目について学習到達目標Specific Behavioral Object(SBO)が設定され、合計1446項目の目標があります。

1例を示します。

「化学系薬学を学ぶ」で、最初のユニットは

C-4 化学物質の性質と反応(PDF:383KB)

であり、そのユニットの一般目標は
「化学物質(医薬品および生体物質を含む)の基本的な反応性を理解するために、代表的な反応、分離法、構造決定法などについての基本的知識と、それらを実施するための基本的技能を修得する」
です。

このユニットの最初の細目(1)は

(1)化学物質の基本的性質

であり、その細目の一般目標は
「基本的な無機および有機化合物の構造、物性、反応性を理解するために、電子配置、電子密度、化学結合の性質などに関する基本的知識を修得する」
です。

ここには4つの事項があり、それぞれに学習到達目標(SBO)が設定されています。例えば最初の事項として

[1]【基本事項】
があり、そこに含まれる7つのSBOのうち最初のものには

1)基本的な化合物を命名し、ルイス構造式で書くことができる。

とあります。このSBOをC4(1)-1-1)と表記します。

すなわち、化学系薬学において
「化学物質(医薬品および生体物質を含む)の基本的な反応性を理解するために、代表的な反応、分離法、構造決定法などについての基本的知識と、それらを実施するための基本的技能を修得する」ための基礎として「基本的な無機および有機化合物の構造、物性、反応性を理解するために、電子配置、電子密度、化学結合の性質などに関する基本的知識を修得する」ことが求められており、その具体的な目標の一つとして「基本的な化合物を命名し、ルイス構造式で書くことができる」
というSBO C4(1)-1-1) がある、ということです。

ただし、各ユニットの一般目標が、薬剤師になるという最終的な目標とどう関わっているか、またユニットにどんな相互関係があるのかについてはモデルコアカリキュラムには明示されておらず、全体像が見えにくいので、それを加えてわかりやすくし、本学における施行方法について説明します。

 


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