あとがき

ジェームズ館は建造以来85年間、あまり手を加えられる事なく多くの卒業生に親しまれ、活用されてきました。
それは、大正期にミス・デントンが同志社の女子高等教育に情熱を傾け、設計監理を依頼された武田五一がその意を受け継いだ賜であったといえます。
今回我々は、ジェームズ館の保存改修に携わらせていただき、各部の調査を進めるにつけ、その保存状態と施工、あるいは設計理念の確かさに、ことあるごとに感心させられてきました。
また、地下室に残されていたダルマストーブ、教鞭を執った教授の自筆であろう「大日本帝國」の文字、あるいは床板裏面に明記された「James」「KOBE」の文字等、当時を偲ばせる痕跡に出会う度に、懐かしさと感動を覚えました。おかげさまで、これら一つ一つの復原考察・調査の積み重ねで、なんとか、保存改修工事を終える事が出来ました。
この度、業務を終え、改めてジェームズ館を見た時、そのスマートさと統合感に武田五一のセンスを感じると共に、煉瓦造という当時としてはハイカラで、若々しい西洋文化の息吹きの中で、どことなく日本的で品がある、その外観に、当時の同志社女学校生徒の姿を重ね合わせて見える気がします。

最後にこの場を借りまして、貴重な資料をご提供いただいた同志社社史資料室、同志社女子大学史料センター、評価や設計方針についてアドバイスをいただいた神戸大学の足立裕司教授、並びに京都府の中尾正治文化財専門技術員、その他ご協力くださいました皆様に、深くお礼を申し上げます。


ジェームズ館探訪