現代社会学部公開講座 第33期 町家講座~京町家で学ぶ歴史と文化~ 第8回『小京都イメージとは-歴史都市のまちづくり-』を開催しました

2023/01/19

今期の最終講座は金沢大学名誉教授 伊藤悟先生に「小京都イメージとは―歴史都市のまちづくり―」をテーマにお話いただきました。

1985年に全国26の市町と京都市が参加して全国京都会議が結成されました。「京都に似た自然景観、町並み、たたずまい・京都と歴史的なつながりがある・伝統的な産業、芸能がある」に一つ以上該当することが加盟の条件でした。金沢市は1988年に加入したものの、2009年には脱退しました。「小京都」に対する認識が、結成当初の京都ブランドや京都との直接的なつながりを強調することから、次第に自然と街並みが調和し、伝統文化が残る町へと「京都らしさ」が拡大的に認識されるようになりました。自治体が自地域を見直す中で、独自性を持つ別のブランドとして他都市と差異化をはかることが求められるようになりました。

2015年3月に北陸新幹線が金沢まで延伸開業されたことにより、金沢を含め北陸を訪れる人が大幅に増加しました。新幹線開通前後のブログ記事をテキストマイニングによる分析を行なった結果、金沢市内で訪れる場所や施設、および飲食に関して、記事への出現頻度に変化がみられ、特定の場所や食べ物に偏る傾向がうかがわれました。2015年を境に北陸諸都市の活動性・景観性・距離感において、新幹線開業効果による波及効果が顕著となって現れています。また都市の風格と都市のイメージとなる象徴要素の関係については、調査結果によると審美的イメージに優れ、機能や規模が充実している都市は風格が高く評価され、一方で歴史が浅く、振興工業都市や新興住宅都市はその評価が総じて低いとされました。都市の総合的能力よりも審美的な評価の方に比重がおかれる傾向がありますが、都市のイメージは変動的であり、そのまちづくりについては独自性を模索していく必要があるのではないでしょうか。

新幹線開業後の金沢市の現状とまちづくりについて学ぶことができ、最終回に相応しい充実した講座となりました。

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