現代社会学部公開講座 第33期 町家講座~京町家で学ぶ歴史と文化~ 第5回『工学と人文学のまちづくり-都市型社会の新潮流』を開催しました

2022/10/20

信州大学経法学部教授で人文地理学・都市政策がご専門の武者忠彦先生をお迎えし、「工学と人文学のまちづくりー都市型社会の新潮流」と題してお話いただきました。1920年代より日本における都市計画は、政策や社会規範に基づき、権力によって法を基盤として実行されてきました。利便性や効率性を重視した工学的な法則による都市空間の近代化が主流でした。しかし1970年代には市民によるコミュニティを基盤にしたまちづくりが行われ、さらに規制緩和や金融支援などに誘導された民間資本によって市場に自由主義的な都市再生が展開されるようになりました。今後は都市を新たにつくる時代から、つくったものを使いこなす地域性や、空間を継承する文脈化による「まちづかい」の社会科学的な視点が重要となってくると考えられます。既存ストックの利活用するためには、個人的営為や相互作用によって地域が循環し、持続可能な都市型社会へと導かれます。このまちづかいへの取り組みが行われている長野市門前エリアの事例が紹介されました。2010年以降、100件以上のスモールビジネスや住居が集積しており、地域らしさや持続可能性が新たな価値を生み出しています。そこには「良い計画が良い都市を生む」という工学的な発想から転じて、「良い日常から良い都市が生まれる」という人文学的なまちづくりに着目した認識が求められるようになりました。