現代社会学部公開講座 第33期 町家講座~京町家で学ぶ歴史と文化~ 第2回『暦を通してのものづくり』を開催しました

2022/06/30

今回の講座は第一株式会社の二代目代表取締役である筧順子先生にカレンダー制作における思いをうかがいました。筧先生は本学の卒業生であり、本学の嘱託講師も務めておられます。

まずは近代日本のカレンダーの歴史について。江戸時代にはカレンダーというものはなく、中国の影響を受けた暦本が出回っていました。明治政府は西欧が採用している太陽暦を取り入れ、明治5年12月3日を明治6年元旦と改めました。この史実に基づいて12月3日はカレンダーの日と制定されています。その後、日めくりカレンダー・絵画や写真の入っているものが主流となり、現在の日本のカレンダーは美しさや機能的な汎用性においても世界一であると言えます。カレンダーには大別して社名などを入れる既製品カレンダーとオリジナルな別製品があります。カレンダーは印刷物ではなく、著作権のある出版物扱いとなります。暦に基づいた正確なカレンダーを作りには同業者の協力が必須となるため、全国カレンダー出版協同組合に、また全国扇子団扇カレンダー協議会に所属しています。扇子や団扇は「夏物」と呼ばれ、カレンダーは年末に販促物として配られるために「冬物」として扱われることが多く、両者を兼ねた会社が多く存在します。また乱売や値崩れを防ぎ、正確さを保持するために日本カレンダー暦文化振興協会を立ち上げ、政府をも巻き込み、祝日等の変更にゆとりを持って対応できるようになりました。

デジタル化の社会になっても紙媒体のカレンダーにはデジタルにはない歴史や季節感を盛り込んだ暦の要素が背景に存在します。近年オリジナルなパーソナル化を望む声や、またわかりやすい字体や色を取り入れたMUDに対応するもの、環境に配慮した素材やインクなどを使用したSDG‘sを意識したものも求められています。異業種とのコラボレーションも進み、高齢者や幼少期のニーズにも対応した新しい形へと進む傾向にあるこの時代に「公共性」と「個性」をいかにカレンダーの中に反映していくことが必要となります。私たちの日常生活には欠かすことのできないカレンダーの背後には、暦にまつわる日本の文化を感じられる仕組みがあることを講座を通じて学ぶ機会となりました。

220628_machiya_1.jpg