現代社会学部公開講座 第32期 〜京町家で学ぶ歴史と文化〜 第5回『日本酒のこれから』

2021/10/29

今回の講演は、伏見の酒造会社である山本本家・取締役の山本晃嗣さんをお招きして開催しました。また、緊急事態宣言が解除された中で、昨年度以来、久しぶりの対面講座・リモート講座のハイブリッド型での開催となりました。山本本家は江戸時代初期、延宝5年(1677)に創業以来、伏見の地で清酒の製造・販売する蔵元です。代々源兵衛を名のり、父である山本源兵衛は11代目になります。幕末の鳥羽・伏見の戦いで戦火に見舞われましたが、その年のうちに同じ場所に母屋や蔵などが再建されました。そこには良質な名水「白菊水」の存在があったからです。伏見の酒は女酒と言われていますが、ミネラルをほどよく含んだ中硬度の伏見の水は、まろやかな味の酒造りには欠かせません。近年、地元貢献やテロワール(「土地」を意味するフランス語から派生した言葉で、ワインなどの品種おける生育地の地理・地勢・気候による特徴を指す。固有のブドウ畑からつくられるワインは特有の個性を表す)の考え方を取り入れ、京都市技術研究所の酵母や京都産の酒米「祝」などを使う取り組みを始めています。お酒は美味しいと感じる量だけを食事と一緒に楽しむ「食中酒」を推奨し、その一環として飲食店を併設しました。また室町時代に考案されたものの、忘れ去られていた伝統的な万能調味料である「煎り酒」をこのたび復活させました。

日本酒そのものを味わうだけでなく様々な形で、新しいチャレンジとともに温故知新に立ち返り、食文化の一つである日本酒の文化を伝え続けていくことが、次代を継ぐものとしての使命であるとのメッセージが語られました。

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