現代社会学部公開講座 第32期 〜京町家で学ぶ歴史と文化〜 第3回『『源氏物語』をよむ~その楽しさと意義~』

2021/09/01

今回の町家講座は、緊急事態宣言発令中のため、リモート開催で実施することとなりました。テーマは『「源氏物語」をよむ~その楽しさと意義~』についてです。まず、前半は文学とは何か、文学が持つ意味について語られました。「明星」に所収された与謝野晶子自身の弟の死に直面した際の「君死にたまふことなかれ…」、「ひらきぶみ みだれ髪」などを例に、そこに表現された作者の偽りのない真実の心を読者は文学のなかに読み解くことが指摘されました。文学のテーマ(主題)は、歴史的な事実そのものよりも人間の本質や、生を受けた人のかけがえのない思いである私情を探求するものです。平安時代の人事・自然の瞬時の輝きを描く『枕草子』に対し、『源氏物語』には人の生きた証が描かれています。三世代75年間の時間の座標軸の中で生きた人間の生きざまは、歴史を凌駕する位の意味合いを持つのです。文学である『源氏物語』が伝えようとした「たった一人の思い」には、過去の自分と向き合いながら今を生き、未来を見据える姿があることが講座の最後で指摘されました。そこでは大きな時間の流れの在り方に人生を重ね、細部にわたって描かれた人生の機微に触れることができる、そんな存在としての『源氏物語』の奥深さを改めて再認識することができました。

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