現代社会学部公開講座 第30期 町家で学ぶ京都の歴史と文化 ~宇治で「源氏物語」をよむ~

2020/07/10

今回は初めての試みとして,遠隔システム(ZOOM)を利用して町家講座を開催することとなった。テーマは,宇治と源氏物語の世界観について,宇治市源氏物語ミュージアムの家塚智子学芸員にお越しいただき,ネットを通した講演を開催した。

宇治は都と大和を結ぶ街道沿いにあり、古代より藤原氏の葬送の地、貴族の別荘が営まれてきた。また万葉集、古今和歌集などに多く詠まれ、『源氏物語』宇治十帖の舞台となった地である。荒々しさを暗示する「ちはやふる」は、宇治にかかる枕詞として知られる。宇治川の豊かな水量と流れの速さからの想起であろうか。宇治十帖は光源氏の死後の物語であるが、宇治川を挟んだ両岸には、都の貴族の世界観と宇治の姫君の暮らしが存在し、その間を行き交う人間模様が描写される。また川にかかる橋のイメージは光源氏の生きざまが子孫へと繋がれることが意識される。物語が書写され、現代語訳や物語を元に映画などとして創造されることによって、後の世に読み継がれていくことが、かけ橋としてのイメージと重なる。今なお当時の自然景観を追体験できる宇治で()まれた歌や物語を()み親しむことによって、さらに作品に込められた宇治の持つ魅力に触れることができると確信することができる内容となった。

新型コロナウイルスのため,こうした形式の講演となったが,結果として北海道や東京といった遠方の方にも参加いただくことができ,対面型の町家講座が開催できるような環境下においても,こうした方式を併用することで新しい可能性を感じることができる講演となった。

 

200629_social_machiya30_1.jpg