町家で学ぶ京都の歴史と文化(2018年度)

2019/03/29
京町家を会場にして、京都の歴史や文化に造詣の深い専門家を講師に招きます。講演後、京菓子を食べながら懇談する機会も設けています。会場である「京まちや平安宮」を所有する山中油店は、江戸時代の創業当初から現在に至るまで商売を営み、町家の本来の形であった職住一体の暮らしを続けています。受講を通して町家の生活に触れることができます。

2018年度実績

第27期

現代社会学部公開講座 第27期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第4回『地域連携からのまなび』~


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開催日:2019年2月2日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:天野 太郎[同志社女子大学 教授]+プロジェクト演習受講学生

今回は、地域連携の実践事例として、社会システム学科で行なわれている授業「プロジェクト演習Ⅰ」での北海道富良野地域における実践的な報告について報告を行った。このプログラムは2006年から始められ、夏季休暇中に7泊8日の日程で毎年実施されている。観光の視点はもとより、自然地形に関する特質、新しい観光資源の創出、自然環境学習、多世代型の交流のありかた、中心市街地の活性化など多岐にわたる学習を通した提言を現地で発信することを通して、地域連携の可能性について継続的に報告を行っている。
今回は、富良野地域の形成と展開について講話したあと、今年度実施した4つの報告--すなわちインスタグラムを通した観光資源の掘り起こし、通年型・宿泊型観光の可能性、ホテルのアクセス問題、公共交通の可能性についてSDGsの視点も踏まえた提言--について、富良野市民を対象とした報告をまとめた。
「持続可能な開発目標」の重要性が指摘されている中で、このような地域連携型の教育プログラムを通して、とくに過疎地域、高齢化地域においてこうした取り組みが行われる必要性や、その継続的運用についての諸課題についても併せて報告を行った。

現代社会学部公開講座 第27期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回『ソムリエ、世界へ跳ぶ』~

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開催日:2018年12月15日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:岩田 渉[ソムリエ]

同志社大学在籍中に3年間滞在したニュージーランドで、ワインと出会う。その後、ワインの本場ヨーロッパを1年かけて巡りながら、独学でワインを学ぶ。2017年日本ソムリエコンクールで優勝、続いて2018年10月に行われたアジアオセアニア ソムリエコンクールでも優勝。2019年3月に開催される世界大会への出場権を得た。さらに京都市文化芸術産業観光表彰「きらめき大賞」も受賞。コンクールは夢の実現のひとつではあるが、今後は日本人のソムリエとして日本の酒文化・食文化の啓蒙活動に貢献し、日本には資格保持者のいないマスターソムリエを目指す。人工知能にはできない、日本人のおもてなしの心を持ち合わせた、世界一のソムリエとなって、ワインムーブメントを起こし、日本国内での地位の向上を図りたいと願う。

現代社会学部公開講座 第27期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回『まるで映画の主人公のように』~

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開催日:2018年11月17日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:瀬戸山 智之助 [シンガーソングライター]

「シンガーソングライターとは」、曲を自分の言葉で紡ぎながら作り上げるミュージシャンのことであり、そこにはその人の思想や人となりが表現される。物まねではなく、先の展開に目が離せなくなる「映画の主人公」のような、独自の道を歩むことが求められる。その手段として選んだ「就職」によって道が開け、「ここで毎日ファンをつくる」という、アンテナを広げることが実感できた。さらに理想につながる「1本柱を立てる」ことから、「すごい、を更新し続ける」ための方向性が見えてきた。大きなコンサートを開催するにあたっては「失敗してもいい勇気と、でも失敗させない覚悟」を抱きつつ、成功裏に終えることができた。今後は「瀬戸山智之助という商品になりたい」を目標に、さらなる一歩を踏み出したい。「サイレンス」・「櫨紅葉(はぜもみじ)」・「ルーツ」・「結び」「フェイヴァリット」等、オリジナル曲を織り交ぜながらの、和やかな雰囲気に満ちた講演会となった。

現代社会学部公開講座 第27期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回『平安京の貴族のすまい・庶民のすまい』~

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開催日:2018年10月13日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:五島 邦治[京都造形芸術大学 教授]

貴族の住まい、庶民の住まい
平安時代の貴族の邸宅寝殿造は、間仕切りのない板の間に丸い柱が立っており、必要に応じて屏風や几帳で仕切って使われた。こうした貴族の邸宅は周囲を築地塀に囲まれていた。庶民の住宅も敷地の周りを塀が囲んでいて、現在の京町屋のように道路に面して直接戸口があることはない。ところが商業の発達は築地塀を壊し、その場所に店棚を開いて直接道路に面して建物を作ることになった。これが京町屋である。室町時代には、一町四方の区画の真ん中に公家の住宅が残り、その周囲の築地塀の部分が町屋にとって替わる。こうして公家の屋敷と庶民の町屋は互いに干渉することなく、共存してきたのである。京都の学校と町屋の在り方は、この公家邸と町屋の関係の痕跡を残している。

第26期

現代社会学部公開講座 第26期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回 『住み続けられるまちづくり』~

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開催日:2018年6月16日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:玉村 匡[弁護士]

経済的な原動力によって、まちの姿は日々変化します。良好な景観の恵沢を享受する利益は,法律上保護に値します。建築規制は住環境の保全を確保し、建築・開発の圧力に抗するべきものでもあります。今回の町家講座は,こうした取り組みを行なっている弁護士の方による講演でした。
京都市においては2007年に新景観政策が施行され、市街地の景観整備が進み、市独自の住環境の保全が図られてきました。ドイツの都市計画法と比較した場合、日本には土地の資産としての価値を保護しようとする傾向があります。土地所有者が特定の地点で、特定のデザインの建築が可能かどうかを問題としていきます。都市の景観保護・形成は、都市全体として周囲に調和することが、土地所有者の義務であるというドイツの考え方とは違う点です。
今後のまちづくりに関しては、当該地域の参画によって守るべき景観を明確にしておくことが、住み続けられるまちづくりの形成には肝要であることが語られました。住環境を自ら守る試みを進める、「姉小路界隈を考える会」の事例を中心として,これからのまちづくりにとって大切なものとは何か,改めて考えさせられるお話でした。

現代社会学部公開講座 第26期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回『生き続ける企業をめざして』~

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開催日:2018年5月12日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:鈴鹿 可奈子氏 [株式会社 聖護院八ッ橋総本店 専務取締役]

八ッ橋は江戸時代の箏曲家、八橋検校の没後、検校に因んだ菓子として箏の形を模して製造された。餡を生八ッ橋で包む形状のものの歴史は浅い。聖護院八ッ橋は「味は伝統」を企業理念とし、伝統を守りながら、百年は続く製品を生み出すことをめざす。新たな挑戦にも八ッ橋の定義である「米粉と砂糖を混ぜ合せ、にっきで香づけをする」ことは守り続ける。「人を大切に、地域を大切に」を経営理念とし、目先の利益ではなく、百年後、二百年後に八ッ橋が存在し、美味しいと感じられるものを一人でも多くの人に届けたいと願い、地に足の着いた堅実な挑戦が続く。

現代社会学部公開講座 第26期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回 『地域コミュニティーの再構築や活性化とは?~町家倶楽部ネットワークの活動を通してわかったこと』~

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開催日:2018年4月21日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:佐野 充照 [町家倶楽部ネットワーク代表]

日蓮宗門下の僧侶で、上京区にある大本山妙蓮寺の塔頭、円常院の住職である佐野充照氏。地域社会と寺の接点をさぐる中、空き家が多くなった西陣の町家の保全・活用に関わることになる。活動開始当初は、京町家への注目度はほとんどなく、言わば近年の町家ブームの基礎を気付いた仕掛け人である。1994年頃から町家入居希望者や芸術家と空き家の家主を繋ぐ仲介役をはじめとする町家情報や拠点施設の提供など、様々な取り組みを支え、99年には町家倶楽部を立ち上げた。それまで顧みられることがなかった町家に付加価値を見出し、地元福祉にも根ざす町家事業の先駆的展開の主導者でもある。多様に町家が保全・利用されている今、氏の発想の原点に今一度たち返って見直してみる必要があるのではないだろうか。

※7月7日(土)に第4回を予定しておりましたが、残念ながら大雨により開催を中止いたしました。