町家で学ぶ京都の歴史と文化(2016年度)

2017/07/16

京町家を会場にして、京都の歴史や文化に造詣の深い専門家を講師に招きます。講演後、京菓子を食べながら懇談する機会も設けています。会場である「京まちや平安宮」を所有する山中油店は、江戸時代の創業当初から現在に至るまで商売を営み、町家の本来の形であった職住一体の暮らしを続けています。受講を通して町家の生活に触れることができます。

2016年度実績

第23期

現代社会学部公開講座 第23期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第4回 『みやこの災害』~

開催日:2017年2月18日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:天野 太郎[同志社女子大学社会システム学科教授]

「京都には災害が少ない」といわれることがあるが、果たしてそうなのだろうか。古代平安京から江戸時代にかけての大火と地震に焦点をあてて、その災害と京のひとびとがどのように直面し、対応してきたのか、その歴史的なプロセスについて講演をおこなった。さらに、講師が現在取り組んでいる東日本大震災被災地域での学生との地域連携型の協働プロジェクトを参考にしながら、災害に関する知識や経験を語り継いでいく必要性、防災教育の重要性について論じた。町家の人々が地震に対する対応策を紹介するなかで、参加者の方々の阪神淡路大震災の経験談や、地域コミュニテイにおける課題にも共通する話題なども飛び出し、歴史的な問題を踏まえた今日的なテーマということもあり、参加者の意見交換も活発に行われた。

 


現代社会学部公開講座 第23期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回 『京町家と簾』~

開催日:2016年12月3日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:久保田 晴司氏 [久保田美簾堂 店主]

明治16年の創業以来、神社仏閣で使用される御翠簾、外掛簾、内掛簾、夏の建具替えに欠かせない葭障子などの制作を手がける久保田美簾堂。近年は国内外で、ホテルなど従来とは違った空間での利用による依頼も増えてきている。伝統的な技術を守りつつ、多様化する現代の生活様式に合わせた用途にも応じる。天然の素材の良さを生かした用の美としての存在価値が、今あらたに再認識される時がきているのではないだろうか。平成28年度京都府伝統産業優秀技術者表彰を受ける。

 


現代社会学部公開講座 第23期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回 『町家で料理』~

開催日:2016年11月5日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:杦本 佳史氏 [株式会社 佳久 代表]

祇園の割烹料理店で修業した後、味・接客・価格がバランスが良く、正三角形となることを念頭に独立した。バランスを保ちながらその形が大きくなり、さらに店の雰囲気など他の項目が加わり、円になっていくことを願っている。市販のだしと添加物を加えない佳久特製のだしを比べる試飲があった。後者はまろみのある優しい味であるのに対し、現代人の多くは前者の味に馴染んでいるようである。家庭の味と違うところは料理人には味のブレの許容範囲が狭いことである。話を通して、口コミで広がった人気店であり続けることの経営者、料理長としての厳しいこだわりが垣間見れた。

 


現代社会学部公開講座 第23期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回 『落語三席』~

開催日:2016年10月8日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:桂 九雀氏 [落語家]

今回の演目は「御公家女房」・「七段目」・「三味線栗毛」の三席。長屋の住人が容姿だけで決めた縁談の相手は公家の娘。生活を始めると公家と庶民の言葉遣いの違いに意思疎通ができず、笑いを誘う「御公家女房」。次いで「七段目」は歌舞伎の演目『仮名手本忠臣蔵』の七段目「祇園一力茶屋」の場を芝居好きの若旦那が演じるというもの。「三味線栗毛」は大名の三男と検校という最高位を夢見る、三男のもとへ通う按摩の出世噺。京都にまつわる場面の登場や三味線・笛・拍子木などの演出が加わり、迫力と臨場感をより楽しく感じることができた。

 


第22期

現代社会学部公開講座 第22期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第4回 『紫式部と藤原道長』~

開催日:2016年7月16日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:朧谷 寿[同志社女子大学名誉教授]

藤原道長は平安時代において、天皇家との外戚関係を築き、貴族社会の頂点を極めた。道長の自筆日記『御堂関白記』のうち14巻が現存し、近衛家の陽明文庫に架蔵されている。自筆日記としては最古のものと位置付けられ、ユネスコ記憶遺産として登録された。紫式部は道長の娘であり、一条天皇の中宮となった彰子に仕えた。紫式部にとって道長に厚遇される利点は大きかったはずである。講座日が祇園祭先祭りの宵山の日であったため、最初に祇園御霊会としての由来や鉾の変遷にも触れられた。

 


現代社会学部公開講座 第22期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回 『賀茂祭と葵』~

開催日:2016年6月11日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:高瀬川 薫子氏 [葵プロジェクト講師]

小学校をはじめ、教育機関や企業・個人が葵を育成し、その一部を葵の森へ返し、葵祭に活用する葵プロジェクトという活動を通して、人・自然・文化が繋がる輪が広がっている。葵の「あふ」は「会う」、「ひ」は「神」「生命力」を意味し、この縁を結ぶのが二葉葵である。祭には奉仕する人・御簾・牛車などの飾りとして、14000本の葵が使用される。講座では二葉葵を桂の小枝にねじって絡める、飾りの作り方を体験した。「穢れ」は「気の枯れ」、「清め」は「気を生める」と捉えることもできる。葵に触れることにより、自然によりそいながら古代より受け継がれてきた伝統祭事の真髄の一端を学ぶことができた。

 


現代社会学部公開講座 第22期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回 『鴨川納涼床の魅力』~

開催日:2016年5月14日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:北村 保尚氏 [もち料理きた村 店主]

鴨川納涼床は今から600から700年ほど前に裕福な商人が祇園祭の折に渡された四条の板橋や中洲・浅瀬に床几を置いて、遠来の客をもてなしたことに起源があるという。現在は鴨川の護岸整備によって、右岸に掘削された「みそそぎ川」の上を二条から五条にかけて床が並ぶ。5月を「皐月床」、9月を「あと涼み床」と呼び、これらの月には夕涼みに加えて昼も会食なども楽しめる。明るさの残る夕方から納涼床に座り、黄昏時をむかえる頃にはゆっくりと時が流れ、幽玄の世界にも似た世界に浸ることができる。平成20年には京都府鴨川条例が施行され、床に関しては高さ・色・形状など厳しい基準が設けられたが、26年にはすべての床でその基準が満たされ、現在は99軒が納涼床を出す。鴨川納涼床は京都の自然を粋な遊び心で上手くいかした情趣あふれる夏の風物詩であるといえる。

 


現代社会学部公開講座 第22期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回 『家を継ぐ 技を伝える』~

開催日:2016年4月23日(土)
場 所:京まちや平安宮
講 師:伊東 建一氏 [御所人形師]

御所人形とは江戸時代中期から観賞用として作られた木彫りに胡粉が塗り重ねられた人形である。御所に贈り物をした大名への返礼として下賜された、明治時代になってから御所人形という名称が使われるようになる。また皇室ともゆかりが深く、格式の高い人形として珍重されている。外観的な特徴は可愛さの表現として三頭身であること、白い肌は高貴さを、子供のようなふっくらさは、慶事を表す。実父である12世伊東久重氏のもとで、人形の作りは心を映す鏡であると感じるとおっしゃる次代を担う若き後継者は頼もしく、今後ますますのご活躍が期待できる。