町家で学ぶ京都の歴史と文化(2010年度)
第11期
現代社会学部公開講座 第11期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第5回「京都に培われたお豆腐狂言」~
開催日:3月12日(土)
場 所:京まちや平安宮
「お豆腐狂言」とは比較的安価である豆腐は、調理によっては庶民的な味にも高級感のあるものにもなることから、誰からも愛される狂言でありたいとの願いが込められています。
能が悲劇的、シリアスな歌舞劇であるため、観る側にも緊張感を与えるのに対し、狂言は能と能の合間の心の緊張感をほぐす、今も昔も変わらない普遍的な笑いの古典芸能と言えます。茂山茂先生は大蔵流の狂言師として京都を拠点とし、世界の舞台へ活躍中です。
現代社会学部公開講座 第11期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第4回「水との競演-植治の庭づくり」~
江戸時代より11名の「小川治兵衛」が造園 植治を継ぎ、現在に至っています。中でも7代目は生命の水である琵琶湖疏水の水を庭に取り込み、無鄰菴、平安神宮、円山公園、清風荘、對龍山荘などを作庭 されたことで知られています。これらの庭は現在も作庭時の精神が受け継がれ、国の名勝庭園の指定を受けています。空・大地・水など自然の源を恵みとし、生 命のサイクルを届けるのが庭師の仕事。庭に触れることによって、文明の進化により失われた心の閉塞感から自然に抱かれて本来人間が有している心へと解き放 たれます。自然の恵みのなかで生かされていることに一体感を感じてほしい願う11代目小川治兵衛氏の眼差しには、京都の将来を見据えた山紫水明の都への深 い想いが伝わってきました。
現代社会学部公開講座 第11期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回 「京の料理人-ひと工夫で美味しくなる」~
旬味「きのした」の店主・木下昌也氏は、食べ手に喜んでもらうことが料理人としての一番の喜びであり、そのための工夫に余念がない。器選び・メ ニューのネーミング・季節感の出し方・旬の素材と料理法・素材と素材の相性・食材と調味料との組み合せ・お酒・接客等にいたるまで、美味しいと感じてもら えることへの情熱が工夫することにつながっています。写真を用いて解説があった「セリ・水菜・レタスのお浸し(茹で方・味の付け方も個々に)」、「刺身の 盛り合わせ(赤・緑・黄・黒・白の5色を配し、不等辺三角形に左上を高く盛る。切り口は斜めに包丁を入れる)」、「鰆の幽庵焼き(鰆はスモーク)」の作り 方は家庭ではできないほど手間がかかったものでした。講座終了後、希望者のみ「きのした」で会食。カウンターの内側から木下氏の心意気が伝わり、そばで温 かく支えるスタッフの方々の接客も心地よく、美味しさとともにいつまでも余韻となって心に残りました。
現代社会学部公開講座 第11期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回 「京の顔見世」~
京都の師走の風物詩である顔見世興行。その発祥は江戸の大名屋敷に役者を招いたことに始まり、後に役者の顔を知らせることから顔見<つらみせ>へと 称されるようになりました。江戸時代には役者との契約を1年毎に結んでいたことから、座の顔ぶれを披露する興業が顔見世となり、毎年旧暦11月に行われま した。顔見世は芝居の世界でのお正月と位置づけられ、陰極まって陽に転ずる冬至にあたることから福をもたらすとも考えられ、最も重要な年中行事となり、今 日に至っています。近世文学と演劇がご専門の廣瀬千紗子教授の絵画資料を交えながらの解説は居ながらにして歌舞伎の世界に引き込まれるようでした。
現代社会学部公開講座 第11期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回 「茶の湯の美 -釜-」~
昔ながらの釜の製作には複雑な技法と工程があり、ひとつとして同じものはなく、意図された意匠が自然と馴染んでいく美しさがあります。鉄を素材とし ている釜は歳月を経るにしたがい、朽ちはててゆくものです。しかし茶の湯では、朽ちの中に美意識を見出し、修繕を重ねることによりさらに侘びの美が加わ り、大切に受け継がれていきます。第十六代大西清右衛門として精緻な釜の製作に携わりつつ、大西清右衛門美術館の館長として釜の深い魅力を発信されていま す。美術館は京都市中京区三条通新町西入釜座町にあります。
講演は、パワーポイントを用いて釜の絵柄の入れ方等の説明があり、受講者は熱心に聞き入り質問も多数出ていました。
第10期
現代社会学部公開講座 第10期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第5回 「京湯葉の老舗に嫁いで」~
京町家の風情を残す1804年創業の京湯葉の老舗「千丸屋」に嫁いできた越智温子氏。従業員と社長との潤滑油の役目を果たし、随所に心配りをして家 を守っておられます。新商品へアイデアを出すこともあり、『源氏物語』に因んで湯葉・ちりめん・山椒を炊き合わせた商品「花散里」(はなちり)を考案。健 康志向の家庭はもとより寺社の多い京都では需要が多いが、現在は百貨店などにも出店し、全国にも展開。先代がよく口にされていた「大豆の力。勢いのある 豆」を用いて昔ながらの製法を受け継ぎつつ、嫁としての新たな視点で京湯葉がより広く、多く楽しまれる取組みをされることが期待されます。
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~第4回 「落語・二席」~
出囃子が流れ、和室に設えた高座に桂春蝶さんが登場。最初の演目は戦国武将である山内一豊の妻、千代が夫のために名馬を手に入れ、出世の手助けをす るという内助の功のエピソード。続いて旦那の留守におかみさんが出入りの歳若い新吉を誘惑するが、突然の旦那の帰宅にうろたえて、紙入れを忘れて帰るとい う古典落語「紙入れ」。ともに現代風の言い回しも加わってわかりやすく仕立られており、迫真の熱演ぶりでした。最後は海の中の蛸などの生き物を身体で表現 しながらの名演技。都会的なセンスも加わり、幅広い層を楽しませることができる演技に今後も大いに期待したいものです。
現代社会学部公開講座 第10期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第3回 「日本の子ども、世界の子ども -過去・現在・未来-」~
身近にあるようで、意外と知らないのが現在の教科書をとりまく状況かも知れません。本講座では同志社女子大学現代社会学部こども学科塘教授により、 日本・中国・韓国を含む東アジアとイギリス・フランス・ドイツなど西欧の小学校の教科書の比較がなされました。教科書に描かれた「いい子」像を例にとると 国家間や時代背景により大きな違いがあります。他人の好意を受け入れ、相手に合わそうとする「自己変容型」の日本や韓国に対し、中国や西欧は「自己一貫 型」の傾向があります。国際社会のなかで世界の国々と近くなった今、色々な考え方・さまざまな立場の人とつながる、「共生」してゆける子どもを育てるとい う視点が盛り込まれることになるでしょう。まさに教科書は時代や社会を映し出す鏡であるとも言えるようです。
現代社会学部公開講座 第10期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第2回 「新聞が危ない-メディアと報道 」~
新聞を取り巻く状況は大きく変わろうとしています。パソコンで読む電子版ができ、広告費による収入が減り、発行部数も減少する傾向にあります。情報 が多岐にわたるため、記者の数を減らすことはできません。近年、本や雑誌で指摘されているように新聞は本当に危機的な状況にあるのでしょうか。新聞経営と いう観点からは大きな痛手ですが、インターネットにはない新聞ならではの利点・影響力もあります。紙面の定期性や一定の範囲に情報が見える総覧性、また地 域の文化情報の提供や大衆性などです。お話のなかに永年、新聞に携わってこられた坂井輝久先生ならではの現実問題の直視と希望へとつなぐ熱意が読み取れま した。
現代社会学部公開講座 第10期 町家で学ぶ京都の歴史と文化
~第1回 「蒔絵筆は猫とネズミの毛 -京都に息づく知恵 」~
蒔絵は漆を塗った上に金・銀粉を蒔きつけて仕上げる細密な日本独自の漆工芸。即位の礼・大嘗祭の神祗調度蒔絵・伊勢神宮式年遷宮神宝蒔絵などを手が けておられる下出祐太郎先生の作品は迎賓館の調度品として60点が納められています。蒔絵に活かされる素材や動物の毛などを利用した道具は自然界から得ら れたもの。それらを駆使し、緻密な加飾表現の技が加わり、輝きのある伝統工芸品が生まれます。物が豊かになった反面、さまざまな問題が地球に起こっている 今、平安時代より連綿と受け継がれてきた独自の美意識とものづくりのノウハウが見直され、未来のあるべき姿に示唆を与えているように思われます