この漢字なんと読みますか(その4)

2021/02/24

吉海直人(日本語日本文学科 特任教授)

今回は植物編にしました。しかも初級レベルですから、満点をめざしてください。まずは小手調べから。

  ①秋桜  ②紫陽花  ③向日葵  ④竜胆  ⑤女郎花

いかがですか。「秋桜」はもちろん桜ではありません。キク科の「コスモス」です。「紫陽花」は常識ですね。もちろん「あじさい」です。「向日葵」はゴッホの名画もあります。これも常識です。そう「ひまわり」ですね。「竜胆」は秋に青い花をつける「りんどう」です。薬草で、飲むと苦いのでこの名がつけられました。「女郎花」は「おみなえし」です。「男郎花」(おとこえし)もあります。さて満点とれましたか。

次もよく話題になる植物ばかりです。

  ⑥土筆  ⑦合歓木  ⑧白粉花  ⑨菫  ⑩百日紅

「土筆」は春に土手に生えます。そうお馴染みの「つくし」ですね。「合歓木」はマメ科の「ねむのき」です。夜に葉が閉じて眠ったように見えることから名づけられました。「白粉」は「おしろい」ですから「おしろいばな」と読みます。「菫」は宝塚の色とされている可憐な花です。そう「すみれ」ですね。女子の名前にも付けられています。「百日紅」は開花期間が長い花です。表皮がつるつるしていて猿が滑る、そう「さるすべり」です。これもそんなにむずかしくありませんね。次はいかがでしょうか。

  ⑪木槿  ⑫山茶花  ⑬馬酔木  ⑭桔梗  ⑮芒

「木槿」は芭蕉の句にも、「道のべの木槿は馬にくはれけり」とあります。はい、「むくげ」です。芙蓉科ですから芙蓉(ふよう)にも似ています。椿の仲間である「山茶花」は「さざんか」です。「山茶」とあるように、実は「お茶」も椿の仲間でした。「馬酔木」は『万葉集』にも歌われている花です。俳句の結社もありました。馬が食べたら酔ったようになるというのは、葉に有毒物質が含まれているからです(鹿も食べません)。これは「あしび」でも「あせび」でも正解です。「桔梗」は秋の七草にも入っています。星形の花をつける「ききょう」ですね。明智光秀の家紋としても有名ですね。では「芒」はいかがですか。これが「薄」だったら簡単ですね。はい「すすき」と読みます。嵯峨野に「芒の馬場」という地名もあります。

次はちょっとだけ難しくなります。

  ⑯羊歯  ⑰梔子  ⑱石楠花  ⑲黄楊  ⑳燕子花

「羊歯」は「しだ」です。特定の植物ではなく、ワラビやゼンマイなどを含むシダ類の総称です。「梔子」はいかがでしょうか。白い花で甘い匂いがします。そう「くちなし」ですね。実は薬用として、また黄色い着色料としても使われています。次の「石楠花」はツツジ科の「しゃくなげ」です。「夏の思い出」という歌にも「石楠花色にたそがれる」と歌われています。では「黄楊」はいかがでしょうか。これは「柘植」とも書きます。良質な木材で、昔から櫛・印鑑・そろばんの珠・三味線のバチ・将棋の駒・ブローチなどに用いられてきました。そう「つげ」です。和歌には主に「櫛」の原料として詠まれています。最後の「燕子花」は「杜若」とも書きます。『伊勢物語』にも出ているし、謡曲や絵画の題材にもなっています。尾形光琳の「燕子花図屏風」は有名ですね。これは「かきつばた」でした。

さて最後の五問です。頑張ってください。

  ㉑木賊  ㉒万年青  ㉓枳殻  ㉔空木  ㉕柊

「木賊」は「さんぞく」ではありません。「とくさ」です。薬用ですが、茎は木材を磨くのに用います(紙やすり)。そのため「砥草」とも書かれます。「万年青」はちょっと難しいかもしれません。江戸時代には大名の栽培する植物でした。これで「おもと」と読みます。公益社団法人「日本おもと協会」も活動しています。「枳殻」は童謡でも歌われています。そうミカン科の「からたち」です(「きこく」でも正解です)。「唐橘」が詰まったものともされています。「空木」は「卯木」とも書きます。旧暦卯月(うづき・四月)に白い花を(卯の花)を咲かせます。はい「うつぎ」ですね。次の「柊」は木へんに冬と書きます。これで「ひいらぎ」と読みます。モクセイ科で、刺に触るとひりひりすることから「ひひらぎ」と命名されました。ついでながら木へんに春で「椿」(つばき)、夏で「えのき」、秋で「ひさき」になります。

満点とれましたか。植物の漢字も奥が深いですね。

 

※所属・役職は掲載時のものです。