「口」に二画加えてできる漢字(頭の体操!)

2018/11/08

吉海 直人(日本語日本文学科 教授)

ちょっと面白い漢字クイズを紹介します。これはたまたまテレビのクイズ番組で見たものです。それは「口」に二画加えてできる漢字をいくつ書けますか、という問題でした。クイズ番組のように時間制限を設けられると、慌ててしまってうまく頭が働きませんよね。そこでここでは時間制限を設けないで、じっくり考えてみて下さい。その上であなたはいくつ漢字があげられるでしょうか。書けるだけ漢字を書いてみてください。どうやら27個はありそうです(実は見出しの中に、既に答えが一つ入っています)。

この問題を解く前に、少しだけ注意があります。それは「口」の大きさや形は問わないということです。大きな「口」でも小さな「口」でも構いません。「口」の中や「口」の外も考えてみましょう。外といっても上下左右があります(あ、また答えが出てしまいました)。また横長の「口」でも縦長の「口」でも大丈夫です。残りの二画は直線とは限りません。

大きなヒントとしては、「口」は「十」との相性が非常にいいようです。さて「十」との組み合わせだけで、いくつ漢字が思い浮かびますか。最後にもし「口」に二画で行き詰ったら、「日」にあと一画という風に発想を変えてみるのもいいかもしれません(冒頭に答えが一つ出ています)。さあやってみてください。

いかがでしたか。では答えあわせをしてみましょう。まず「口」の中に「十」を入れたら、すぐに「田」ができますね。それで満足していたらダメです。その縦棒を上に伸ばすと「由」になります。反対に下に伸ばすと「甲」です。両方突き抜けると「申」ですね。これでもう四つできました(横に伸ばすのはダメ)。次に「十」を「口」の上に付けると「古」という漢字になります。「古」をよく見て、「十」の横棒の左側を消すと「占」という漢字ができます。次に「十」を「口」の右に置くと「叶」になります。これでまた三個増えました。

ここで「口」を口編だと考えてみると、「叶」の外に「叱」と「叩」が思い浮かびます。反対に「口」を右側に持ってくると、「加」という漢字がありました。もう少し「口」の上にこだわってみると、「古」・「占」以外に「台」と「召」が見つかります。反対に「口」の下に二画だと、「ハ」を書いて「只」です。それを長くすると「兄」になります。なかなか思いつかないのが「号」ではないでしょうか。

さらに「口」の上から右にかけてのスペースを考えてみましょう。まず思いつくのは「可」でしょうか。これも二画です。似たような「句」もあります。「同」は一画多いので×ですが、そこで諦めないで一画減らしたら「司」があります。「古」のタテ棒を多少傾けると、なんと「右」ができます。その斜め上の棒を突き抜けないようにすると、たちまち「石」になりました。こうやって関連させることで、漢字がどんどん膨らんでいきます。

ではヒントで出した「日」に一画に移ります。「日」に横棒を足すと「目」ができます。ただし下が付き出た「且」や「皿」は×です。「日」の下に横棒を書くと「旦」になるし、左側に縦棒を添えると「旧」ができます。上にチョンと付けると「白」ですが、これはなかなか思いつかないかもしれませんね。

「田」や「目」の変形ということで、「口」の中に二画を入れてみると、「人」が入って「囚」ができます。縦棒二本で漢字はできませんが、変形した数字の「四」なら大丈夫です。最後にかなり変形ですが、「史」も該当します。これで27個です。さて、あなたはいくつ思いつきましたか。せめて20は超えてくださいね。

なお、人偏に「口」だと「個」の略字になりますが、これは×です。「口」が複数になる「呪」や「咒」、「区」の旧字体の「區」も×です。しかしながら異体字あるいはほとんど使われない漢字を探すと、「冋(けい)」・「叵(は)」・「另(れい)」・「叧(か)」・「叮(てい)」・「叨(とう)」・「叭(は)」・「叺(かます)」・「㕣(えん)」・「叴(きゅう)」の10個がありました。この中の「叭」は、「喇叭」という熟語でかろうじて生き延びています。こういった漢字が書けた人は漢検1級をめざしてください。

 

※所属・役職は掲載時のものです。