関東と関西の違い

2020/06/04

吉海 直人(日本語日本文学科 特任教授)

 

関東と関西の違いといったら、みなさんは何をあげますか。私は九州生まれですから、どちらかといえば関西文化圏に含まれます。それでも、長い関東での暮らしを経て関西に赴任した時には、文化の違いに驚きの連続でした(テレビのコマーシャルまで違っていました)。

よく例にあげられるのは餅の形ですね。関東では四角(切り餅)なのに関西は丸ということです(九州も丸餅)。小さいころテレビマンガで、四角い餅を焼いているのを見て驚いた記憶があります。その食べ方にしても、関東では海苔を巻く磯辺焼きが主流ですが、関西では醤油に砂糖を入れて食べることが多いようです(私はきなこでした)。その餅をメインにするお雑煮にしても、関東は餅を焼いて入れるのに対して、関西は焼かないままで入れて煮ます。また味付けにしても、関東は醤油ベースのおすまし仕立てなのに、関西は味噌仕立てが一般的です。もちろんバリエーションも豊富です。

また関東は蕎麦で関西はうどんともいわれています。そばつゆにしても、江戸前は濃いことで有名です。うどんの汁の違いもあげられます。関東はかつお節だしで、関西は昆布だしです。それは関東が硬水で関西が軟水だからなのかもしれません。さらに関東は濃口醤油であるのに対して、関西は薄口醤油が使われています。それがなんとカップ麺のどん兵衛にも影響を与えており、関東と関西でだしの濃さを変えて販売しています。フタにEとあったら関東用、Wとあったら関西用です。芸が細かいですね。食べ較べてみませんか。

醤油だけではありません。ソースにしても関東はブルドッグソースで、関西はイカリソースが主流です。カップ焼きそばなど、関東はぺヤング(まるか食品)派が多いのに対して、関西はUFO(日清食品)派が多いといわれています。夏に食べるところてんにしても、関東では酢醤油が一般的ですが、関西では黒蜜が多いようです。すき焼きの作り方も違っていて、関東では割り下を使いますが、関西では使いません。お好み焼きの違いもあります。関東ではみんなでシェアして食べるので、ピザのように切り分けますが、関西では一人一枚なので格子切りにするというのです。心当たりはありますか。

お雛様の飾り方はどうでしょうか。関西は男雛が左(向かって右)であるのに対して、関東では右(向かって左)になっています。関西は御所雛がルーツなのに対して、関東は西洋流の男女の並びを導入しているからです。引っ越しをしてわかるのは電気の周波数で、関東が50ヘルツなのに対して、関西は60ヘルツになっています。畳のサイズにしても、江戸間(小さい)と京間(大きい)で異なっています。大学生の呼び方など、関東では何年生と呼ぶのに対して、関西では何回生というのが一般的ですよね。ただし九州では何回生とはいいませんでした。最近よく話題になるのは、エスカレーターのどちらに乗るかです。関東は左(右を空ける)で関西は右(左を空ける)に分かれています。京都などばらばらです。バス停にしても、関東はきちんと並ぶのに、関西は並ばないともいわれています。狭い日本で何故こんなに違うのかと思いませんか。これは単なる地域性だけでなく、武士と商人といった身分・職業の違いも考えられます。

名称の違いというのも結構あります。たとえば関東では「肉まん」と呼ばれるものが関西では「豚まん」だったり、関東で「がんもどき」といわれているものが、関西では「ひろうず」と呼ばれています。関東で「ドラヤキ」とされているものは、関西では「みかさ」あるいは「みかさ山」です。また関東でガビョウ(画鋲)と称されているものが、関西では「押しピン」で通っています。関東の人は「さぶいぼ」という語を耳にしてもなんのことかわかりません。これはいわゆる「鳥肌」をいう関西弁です。もう一つ、関東の人は「メバチコ」はわかりますか。これは「ものもらい」のことをいう関西の言葉です。

言葉の省略の仕方にも違いがあって、その典型がマクドナルドでしょう。関東では「マック」が一般的ですが、関西では「マクド」が普通です。ユニバーサルスタジオジャパンの略称にしても、関東では「ユーエスジェイ」と呼ぶのに対して、関西は「ユニバ」です。ただしミスタードーナッツは「ミスド」で共通しているようです。

表現の違いもあります。有名なのは関東では「バカ」を多用しますが、関西では「アホ」が多用されています。関東では蚊に刺されたといいますが、関西では蚊にかまれたといいます。居酒屋で最初に出てくるものを、関東では「お通し」と呼ぶのに対して、関西では「つきだし」と称しています。見た目はわかりませんが、関東では切腹を嫌ってうなぎを背開きにするのに対して、関西では腹開きが普通です。また関東は一度蒸しています。

その他、同じ言葉でも形が異なっているケースもあります。食材のネギなど、関東では白くて大きな「根深ネギ」ですが、関西では細い「青ネギ(九条ネギ)」になります。関東ではおにぎりを三角形ににぎりますが、関西では俵型が多いようです。ただしいなりずしは反対で、関東では俵型が普通ですが、関西では三角形が一般的です。なお関西ではこれをお稲荷さんと称しています。

では、おしるこはどうでしょうか。関東では雑煮と同じく焼いた餅をいれますが、関西では白玉を入れます。桜餅にも違いがあって、関東では小麦粉の生地をクレープのような薄皮にして、中に餡をはさみます(長命寺の桜餅が起源)。一方関西は、道明寺粉で作った餅に餡を入れて包みます。これは一目で違いがわかります。たまごサンドについては、関東ではゆで卵をつぶしてマヨネーズをかけてはさみますが、関西では厚焼きにした卵焼きをはさみます。食パンの厚さにも違いがあって、関東では六枚切り八枚切りが主流ですが、関西では四枚切り五枚切りが主流になっています。関西の方が食パンは厚切りなのです。

言い古されたことかもしれませんが、ここにあげたことについて、どこまで同意していただけるでしょうか。もちろんこれ以外にも、まだまだいろいろな違いがあるはずです。是非家族や友人と話し合ってみてください。

 

 

※所属・役職は掲載時のものです。