11月1日は「犬の日」

2022/10/24

吉海 直人(日本語日本文学科 特任教授)

 

最近はなんでも記念日が制定されていますね。ペットの日はあるかと思って検索してみたら、まだ制定されていないようです。その代わり「ペットたちに感謝する日」(Thanks Pets Day)が見つかりました。そんな特定の日があるとは思えませんが、そうなると日本特有の語呂合わせということになります。ペットの代表は、犬と猫ですね。ではあなたは犬派ですか、それとも猫派ですか。

昔から犬は「ワンワン」で、猫は「ニャーニャ―」ですよね。これも日本特有の鳴き声(オノマトペ)ですが、それをうまく数字に当てはめると、「ワンワン」はすぐに「1・1」になります。同様に「ニャーニャ―」は「2・2」ですね。ということで11月22日が「ペットたちに感謝する日」に制定されました(ワンワン・ニャーニャー)。ただしこれはペット愛好家が決めたのではなく、ペット関連事業を展開するピーツアンドアソシエイツ株式会社によって独自に制定されたものです。もともとこの日は「いい夫婦」の日でもありました。

さて本題の「犬の日」「猫の日」ですが、実はこれも愛好家というより、ペットフード協会が中心になって制定されたもののようです。犬の日は11月1日ですが、これにしても1が三つ並んでいるので、「ワン・ワン・ワン」という語呂合わせです(「古典の日」と重複しています)。それなら1月11日でも11月11日でもよさそうです(さすがに1月1日は避けたようです)。猫の日は2月22日ということですが、それも同じく「ニャー・ニャ―・ニャー」の語呂合わせになっています。これも2月2日でもよさそうですよね。

この二つの記念日は、ともに1987年に制定・登録されました。猫の方は猫の日制定委員会を立ち上げ、全国の愛猫家からの公募によって決定したとありますが、犬の方はそういった記事は見当たりません。ちょっと気の毒な気がします。

なお犬や猫は世界中でペットとして飼われているので、日本以外の国にも記念日があります。特に猫は記念日が多いようです。たとえば国際動物福祉基金は2002年に8月8日をワールドキャットデーに制定しています。またヨーロッパでは2月17日を猫の日としている国が少なくありません。その他、ロシアは3月1日、台湾は4月4日、アメリカは10月29日など、世界的に統一されていないようです。ついでながら、日本にはペットならぬ「招き猫の日」もあります(1995年に制定)。これは「来る福」の語呂合わせで、9月29日になっています。

一方の犬の日は、猫ほど熱心ではないようです。アメリカでは2004年に8月26日をナショナルドッグデーに制定しています。ただし国際動物福祉基金は、何故かワールドドッグデーを制定していません。記念日に関して、犬は猫より扱いが軽いのでしょうか。もっとも犬にできる仕事として盲導犬があります。ということで、毎年4月の最終水曜日が国際盲導犬の日に制定されています(固定されてはいません)。

その他、語呂合わせでうさぎの日は3月3日(耳の日)、ハムスターの日は8月6日(ハムの日)などが制定されていますが、あまり周知されてはいないようです。それとは別に、日本にはかなり古くから「いぬの日」がありました。それはペットの「犬」ではなく干支の「戌」に因んだものです。

昔から犬は多産であり、しかも出産が軽いということから、安産の象徴とされてきました。その犬の安産にあやかって、妊娠5か月を過ぎた戌の日に腹帯(岩田帯は斎肌帯の当て字)を締めることが風習として行われてきました(犬印本舗の帯もあります)。それを帯祝いと称しています。その日には神社やお寺に参詣して、安産の祈願をしてもらいます。

それに対して猫は、十二支に入っていないこともあって、人生儀礼とは無縁でした。ですから猫の日が多いことくらい大目に見てもよさそうです。ちなみに昔は猫の名前は「たま」で、犬は「白」か「ポチ」が多かったのですが、最近は犬も猫も「もも」「はな」が上位を占めているとのことです。かなり人の名前に近づいているような気がしませんか。

※所属・役職は掲載時のものです。