【学生インタビュー】大阪・関西万博にて「多世代でつくり出す驚きに満ちたアート」をテーマにした出展に取り組んだ、社会システム学科の日下菜穂子ゼミ生たちにお聞きしました
5月24日(土)、大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」にて、社会システム学科の日下 菜穂子ゼミ4年次生が中心となり、「多世代でつくり出す驚きに満ちたアート」をテーマにしたワークショップを開催しました。
大学生・地域の高齢者・小学生が一つのチームとなり、創作活動やモーターを活用した“動くアートマシン”づくりに挑戦。当日は予想をはるかに超える多くの方にご来場いただき、盛況のうちに幕を閉じました。
(写真左から)本活動に携わったゼミ生の滝口果菜子さん、山﨑美潤さん、上川佳乃さんに、取り組みを振り返ってお話をお聞きしました。
世代を越えた学びの場―日下菜穂子ゼミで見つけた価値
Q. 日下ゼミに所属しようと思った理由と、学びの魅力について教えてください。
山﨑さん:高校生の頃から日下先生の授業や活動に関心があり、大学では「心理臨床学」や「プロジェクト演習」を通して、心理学をより深く学びたいという思いが強まりました。困っている人の問題解決に貢献できる力を身につけたいという目標に加え、世代を越えた活動を通して多様な価値観に触れ、視野を広げたいと考えました。
シニアの方々と一緒に授業を受け、食事を共にする「シェアダイニング」の活動では、食材を持ち寄り、調理することで、世代を越えた温かな会話が自然と生まれます。その時間は、単に学ぶだけでは得られない、人と人との関係性の豊かさを教えてくれました。また、授業の始まりに「最近あったハッピーなこと」を共有する時間があり、日常の中にある小さな幸せに気づく習慣が身につきました。その積み重ねが、前向きな気持ちを育ててくれています。
滝口さん:幼い頃から祖父母との会話が好きで、世代を越えた関わりに興味がありました。ゼミ活動でシニアの方々との交流があることや、「高齢者のほうが若者よりも幸福度が高い」という先生の言葉に惹かれ、日下ゼミには自分の人生にも活かせる学びがあると感じました。
日下ゼミの学びは、実践の中でこそ深まる学びであると感じています。65歳以上のシニアが自分の生き方を他の人に伝える取り組みである「ワンダフル大学院」や、今回の「大阪・関西万博での多世代交流」など、地域の方々と直接関わる機会が多くあります。 コミュニケーションを取ることに最初は戸惑いもありましたが、異なる世代や異なる価値観と出会うことで、相手の立場に立って考える力や、柔軟に対応する力が自然と育まれていきました。知識を得るだけでなく、体験を通して自分自身の視野が広がっていく感覚。それこそが、日下ゼミでの学びの本質だと思います。
予想外のトラブルも笑顔に変えて―万博出展で得たかけがえのない経験
Q. 大阪・関西万博出展にあたり、苦労したことや、それを乗り越えたエピソードを教えてください。
山﨑さん:アートマシンの制作は初めての経験で、当日に向けて不安を抱えながら何度も打ち合わせを重ねました。当日、予想をはるかに超える来場者に圧倒され、1人で複数の子どもを対応する場面も。安全への配慮、長蛇の列への対応、そして何より「子どもたちに楽しんでもらいたい」という思いが交錯して、プレッシャーを感じる瞬間もありました。それでも、自分自身が楽しむことを一番に意識し、親子で笑顔になれる空間づくりに努めました。その場にいるすべての人の記憶に残るような、温かな時間を届けたい、その一心でした。
上川さん:来場者の多さに対して、制作スペースが限られていたことが大きな課題でした。布を使った装飾が柱に負荷をかけ、倒れかけるという予想外のトラブルも発生。臨機応変に役割を決め、交代しながら対応することで、なんとか乗り越えることができました。当日の一番の悩みは、子どもたちが楽しみすぎて帰りたがらないこと。嬉しい悲鳴ではありましたが、作ったものを持ち帰れるようにしたり、一定時間で参加者を入れ替える仕組みを取り入れるなど、事前の工夫でもっとスムーズに運営できたはずと悔いも残っています。
Q. 出展当日のエピソードを教えてください。
山﨑さん:当日は予想をはるかに超える来場者が訪れ、会場は終始にぎやかな雰囲気に包まれていました。興味を持たれた方から、「何をしているの?」と声をかけられ説明すると、「面白そう!」と笑顔で参加してくださる方々の姿に、私たちの活動が届いていることを実感しました。自分たちで考え、形にしたアートマシンが動き出し、色とりどりの円が描かれた瞬間、とびきりの笑顔を見せる子どもたちの姿が、今でも心に残っています。
滝口さん:会場には、子どもたちの笑い声が響き渡り、保護者の方々の温かなまなざしが溢れていました。同じ材料を使っていても、作品は一人ひとり全く違っていて、子どもたちの自由な発想に驚かされるばかりでした。アートマシンの予想外の動きに戸惑う場面もありましたが、私自身もその場を楽しみながら、子どもたちと同じ時間を過ごすことができました。中でも忘れられないのは、一人の女の子が手作りのリボンを私に渡してくれたこと。その小さな贈り物に、心がじんわりと温かくなりました。
現場で磨かれた力―対応力とチームワーク
Q. 日下ゼミでの活動を通して学んだことや成長したことを教えてください
山﨑さん:どれだけ準備を重ねても、現場では予想外の出来事が次々に起こります。その中で私が学んだのは、「今、自分にできることは何か」を瞬時に考え、行動する力。状況を冷静に判断し、仲間と協力しながら柔軟に対応することの大切さを実感しました。限られた時間と空間の中で、どうすれば子どもたちや保護者の方々に「来てよかった」と思ってもらえるか。それを問い続けることで、相手の立場に立って動く力が磨かれたと思っています。
上川さん:目の前のことに全力で向き合う中で、自然と生まれた協力の姿勢。それがチームの団結力につながり、予想外の出来事にもチーム一体となって乗り越えることができました。「子どもたちを笑顔にしたい」という気持ちが、私たちをつき動かしていたと思います。これまで「ワンダフル大学院」で関わってきたシニアの方々と、大阪・関西万博の現場で再びチームとして活動できたことも嬉しく、より一層絆が深まったと感じています。
滝口さん:最も成長を感じたのは、コミュニケーション能力です。初対面の方や世代の異なる方と関わる中で、相手の立場を考え、柔軟に対応する力が自然と身につきました。また、年齢や立場に関係なく、常に学ぶ姿勢を持つことの大切さを改めて実感しました。新しい知識や経験を前向きに取り入れる姿勢が、人生の充実や自己成長につながる、そのことを、活動を通して深く理解することができました。
最後に
Q. 後輩や同じ分野を志す高校生にメッセージをお願いします。
山﨑さん:日下ゼミは、挑戦することを後押ししてくれるゼミです。京田辺市主催の「きょうたなべ政策グランプリ」では、心理学の視点から提案した「メニューのないレストラン」が最優秀賞を受賞し、企画力、プレゼン力、対話力など、実践を通して身についた力に、自分自身の成長を強く感じました。心理学に興味がある人はもちろん、「何かに挑戦したい」「世代を越えた関わりを持ちたい」と思っている人にとって、きっと特別な学びが待っています。
上川さん:日下ゼミでは、実体験を通して心理学を学ぶことができます。自分自身の生活と結びつけながら学べるので、理解が深まり、興味を持って取り組みやすいのが特徴です。人間に対するポジティブな視点を学ぶことができるので、「もっと前向きになりたい」と思っている人にも、きっと響くはずです。
滝口さん:大学生活は、自分の時間を自由に使える貴重な時期です。挑戦することで、たくさんの人と出会い、視野が広がり、固定概念にとらわれない考え方ができるようになります。そして、コミュニケーションにおいて何より大切なのは「笑顔」だと、ゼミ活動を通して実感しました。笑顔は、相手の心をほぐし、安心感を生み出します。きっと、前向きな関係が築けるはずです。
プロフィール
現代社会学部 社会システム学科 日下 菜穂子ゼミ4年次生
滝口 果菜子
山﨑 美潤
上川 佳乃