【学生インタビュー】大阪・関西万博にて「能」をテーマにした出展に取り組んだ、メディア創造学科の関口英里ゼミ生たちにお聞きしました

2025/06/26

4月27日(日)〜5月4日(日)、大阪・関西万博内 関西パビリオン京都ゾーン「一座きょうと」にて、メディア創造学科の関口英里ゼミ3年次生が、日本の伝統文化である「能」をテーマにしたブース「Noh to the world」の出展を行いました。
期間中、5月3日(土)および4日(日)には、ペーパークラフトを用いたワークショップを実施。あらゆる年代の方々に多数ご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。

活動を行ったゼミ生の山内咲穂さん(写真左)と深尾真悠子さん(写真右)にお話しをお聞きしました。

大阪・関西万博への出展を目ざして

Q.出展に至った経緯は?

私たち関口ゼミでは、「文化の仕掛けを読み解き、新たな仕掛けを作っていく」ことをテーマとした取り組みを行っています。そのうち、2年次ゼミ(科目名:メディア創造演習)では、3・4年次で行う個人研究の手法を学び、社会に出てから即戦力となるスキルを身につけることを目標に、プロジェクト型の実践演習を行ってきました。これまで、さまざまな京都の伝統文化を新たな形で現代に生かしていく取り組みで成果を出してきましたが、今年度は特に「能」に焦点を当て、「能と伝統文化を世界に広める会」を立ち上げ、学生主体でさまざまな企画を展開しました。 その集大成として、「大阪・関西万博きょうと推進委員会認証制度」認定事業として、関西パビリオン京都ゾーン「一座きょうと」への出展が実現しました。

Q.どのように準備を進めてきましたか?

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今回の万博展示に向けた取り組みは半年以上前からスタートし、学生内でプロデューサーをはじめとする各役職を決め、展示の企画や製作、広報などチームや個人としてそれぞれの役割を果たしながら協力して活動を進めてきました。

特にこのプロジェクトを通じた目標として、“私たちならではの視点から能を伝える”ということを掲げ、その目的を達成するために能に関する研究を行なったり、実際に関係者の方からお話を伺ったりしながら“能”への学びを深めてきました。

「本物を伝える」ために、私たちがこだわったこと

Q.出展にあたり、力を入れた点について教えてください。

ようやく実現した万博での「Noh to the World」展示ブースには、本物の能面や扇、台本や鼓が並び、来場者の方々に“本物”に触れていただけるような場を演出したほか、私たちゼミ生が手がけるアート作品によっても能の魅力を伝えることを目ざし、能舞台ジオラマ模型と蝋燭能モチーフのランプシェードを展示しました。 製作作品の目玉である実寸25分の1サイズの能舞台ジオラマ模型は、学生自らが実際に能舞台に出向いて計測、設計を行い製作したものとなっており、能の洗練された世界観を体現する重要な象徴として、情熱を注いで手がけています。

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展示期間中の土日には、「蝋燭能」をイメージしたランプシェードに願いごとを記し、それらを集めて一つの“光のオブジェ”を制作するワークショップ企画を開催しました。

Q.期間中に実施したワークショップの反響はいかがでしたか?

2日間で計528名がワークショップに参加し、老若男女問わずたくさんの方々、海外からの来場者まで幅広い層の方々の願いに光が灯りました。

体験後のアンケートによると、240名中87%が「能に興味を持った」と回答し、150名以上が今後の体験プログラムへの参加に意欲を示すなど、今回の展示の意義を深める大きな成果を残すことができました。

今回の催しをとおして個人の様々な願いや祈りが集まったことで、私たちは能の魅力を伝えることに留まらず、多様な方々のコミュニケーションの共創の場を創り出すことができました。

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伝統文化の継承のために、今後もあらゆる表現方法を追求したい

Q.今回の取り組みをとおして感じたことや学んだことを教えてください。

今回の企画・製作・当日のワークショップ・設営・撤収などは学生が主となって担い、運営を行ってきました。有識者や専門スタッフにお力添えをいただきつつも、自らで考え行動することを基本として取り組んできたこの約半年間、時に失敗し、トラブルが生じることもありましたが、自らで乗り越えようと臨機応変に対応し、課題を解決してきたこの経験は、実践的な学びとして今後に活かせる私たちの大きな財産となりました。

このプロジェクトを通じて、私たちは京都の伝統文化の一つである“能”に向き合い、伝統文化を継承するということを身をもって体験する中で、伝統文化を「ただ保存する」ではなく、「自分たちの言葉と表現で現代に伝える」意義とその可能性を実感しました。京都という地に根ざした文化の奥深さ、能という表現芸術の豊かさ、それらをメディアの力でどう伝えるか。そういった、果てしなくも肝要な課題を前に、現代を生きるメディア創造学科生という立場の私たちが、大阪・関西万博という一生に一度の貴重な舞台に立てたことは、何物にも代えがたい大変価値のある経験となりました。

Q.最後に、ゼミ生の皆さんからのメッセージをお願いします。

今回万博への出展という大きなプロジェクトを成し遂げることができたのは、ゼミ担当の関口先生のご指導に加え、展示協力をいただいた株式会社くろちく様はじめ、大学内外の多くの方々のご支援があったからこそです。そして、展示やワークショップに来てくださり、励ましのお声をくださったすべての皆さまに、心から感謝をお伝えしたいと思います。

私たちは今回の成果と学びを糧に、今後もより多くの方々に文化とその仕掛けの面白さ・奥深さを届けていきたいと考えています。そして、文化を未来につなぐための橋渡しとして、私たち学生にできることを、これからも実践していきます。今後の私たちの活動にも、引き続きご注目ください。

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プロフィール

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学芸学部メディア創造学科 関口英里ゼミ3年次生 
山内 咲穂(統括班・ディレクター)
深尾 真悠子(制作班メンバー)