「ことばプロジェクト」井上伸一郎氏講演会
【2016年度 第2回 情報メディア学科講演会】
日時:2016年11月2日(水) 15:00~17:00
11月2日15時から京田辺キャンパスC283教室において、株式会社KADOKAWA代表取締役専務井上伸一郎氏を招聘し、講演会が開催された。
井上氏の講演は「『時をかける少女』文庫40年 少女の言葉はどう時をかけたのか」というタイトルの下、40年間の言葉の変化についてのものであった。この変化をより明確なかたちであぶり出すために、井上氏はまず宮崎駿監督のアニメーション作品における少女たちの台詞に注目した。一般的に宮崎作品の少女たちは、独特な言い回しと古風で女性的な言葉を話しているように捉えられている。だが、井上氏が作品から抽出した台詞を検証すると、それらは過去から現在にむかって変化し、より現代的な、かつジェンダー開放型のものになってきているのが理解できる。つぎに井上氏が着目したのは、言葉におけるジェンダーである。井上氏は江戸期から現代にいたる女性たちの言葉を分析し、私たちが知るところの女性的な言葉が実は狭い範囲の流行物であり、そうしたものが現在においては定着してしまっていることを指摘した。つまりは、言葉はそもそもジェンダー開放型のものであり、宮崎作品にみられるような言葉のあり方の現在形は歴史上では特殊なものではないのである。こうした議論を踏まえた上で、過去から現在へとジェンダー開放型にむかう言葉の変化の図式の下で、井上氏は最後に『時をかける少女』(小説と実写映画、そしてアニメーション作品)の言葉の変化を指摘した。
井上氏の講演が終了した後、本学学生および一般の来場者たちと井上氏による質疑応答が行われた。学生たちの積極的な発言と井上氏の非常に細やかな応答により、講演と同様、質疑応答の時間もまた、実り豊かなものとなった。
なお、本講演会は、同志社女子大学教育基金に係る援助金を受けて立ち上げた「ことばプロジェクト」の一環となる。