ノダマキコ イラストレーション展 -- 仕事としてのイラストレーション

2013/11/20

mscギャラリー【ノダマキコ イラストレーション展 — 仕事としてのイラストレーション】

日時:2013年11月5日(火)ー 11月15日(金)9:30 ~ 19:30
関西を中心に活動するイラストレーター、ノダマキコ氏の展覧会を開催しました。ノダ氏は1981年神戸生まれのイラストレータです。京都の美大を卒業後、書籍、雑誌などのイラストワークをはじめとして、企業広告やプロダクトのためのグラフィックデザインなど幅広く活動し、若手女性イラストレーターとして注目されています。今回の展示では、完成した制作物のみならず手書きのラフや下絵を展示し、イラストレーターがどのように対象と向き合って仕事をしているのか、そのプロセスを俯瞰することができました。
ノダ氏のイラスト作品は雑誌や書籍のイラストレーションの中でも、特に“イラストマップ”にその特徴を見ることができます。イラストマップとはタウン誌や情報誌でよく見かけるイラストで描かれた地図のことです。それは、単なる位置情報を伝えるための地図ではなく、眺めるだけでその土地に行った気になる、見る人をワクワクさせるものです。ノダ氏はそんなイラストマップを数多く手がけています。作り方は緻密かつ丁寧なものです。そこからはノダ氏のイラストレーターとしてのこだわりと対象への深い愛情と観察が垣間見えます。背景は様々な画材を駆使して描かれ、一本一本の道は何度も修正し適切な太さや曲がり具合のものを選びます。そこに描かれるランドマークや人々は動きのある線でデフォルメされて描かれ、躍動感とともにその土地の息づかいを感じさせます。また、地図として重要な情報である文字もそのほとんどがノダ氏本人が納得のいくまで書いたラフな手書き文字が使われています。しかし不思議なことに、完成したものを見ると地図としての機能は全く失うことなく、加えてとても魅力的な一枚の絵として仕上がっているのです。絵としての地図—イラストレーションだからこそ可能な、情報の伝え方というものがそこからはっきりと見てとれます。
イラストレーションというと、作者が自分の内面を思うままに表出した絵や、可愛らしいキャラクターたちを思い浮かべがちです。しかし、仕事としてのイラストレーションを考えるならば、そのほとんどはデザインされたものの一部として目的をもって描かれています。つまり、個人の描きたいものを超えた、対象との密な関係性の中で生まれてくる“何かを伝えるための情報”としての絵なのです。ノダ氏の仕事は、今後、グラフィックデザインやイラストレーションを研究・制作する学生にとっても、自らが考えるイラストレーションというものを捉え直す絶好の機会を与えてくれました。

【関連イベント】
イラストレーションワークショップ「イラストレーターに学ぶイラストmap」