ゲーム障害(gaming disorder)について

2018/08/02

鈴木 佑典(看護学部 看護学科 実習助手)

突然ですが、みなさんはゲーム好きですか?

私は物心ついたときから家にファミコンがあり、マリオやポケモン、ドラゴンクエストといったゲームは非常に身近な存在であり、共に育ってきたといっても過言ではありません。今でも友人たちと一緒にゲームを楽しんでいます。そんな私ですが、つい先日気になるニュースがありました。6月18日にWHOの国際疾病分類(ICD-11)においてゲーム障害(gaming disorder)が精神疾患と認定されたのです。

その診断基準としては以下のとおりです。

ゲーム障害は、オンライン(インターネット上)またはオフラインの持続的・反復的なゲーム行動(デジタルゲームまたはビデオゲーム)のパターンによって特徴付けられる。
1) ゲームに対するコントロールが損なわれる。(発症、頻度、強度、持続時間、終結、背景)
2) ゲームの優先度を他の生活上の利益および日常活動よりも高める。
3) 否定的な結果の発生にもかかわらず、ゲームを継続または拡大する。
その行動パターンは、個人的、家族的、社会的、教育的、職業的または他の重要な機能領域において重大な障害をもたらす。
ゲームを行うパターンは、連続的または一時的かつ反復的である。
すべての診断要件が満たされ、症状が重度であれば、必要な期間が短縮される可能性があるが、ゲームに関する行動およびその他の特徴は、診断を割り当てるために通常少なくとも12ヶ月の期間が必要である  

 

このことから考えると、ゲーム障害と診断されるには、ゲームに熱中するあまり、昼夜逆転し、ご飯も食べない、お風呂も入らない、学校や会社に行かない、ゲームに過剰に課金する、ゲームを中断されると暴力を振るう。このような状態を12ヶ月以上継続していることが必要になるといえます。しかしながら、上記の状態を継続しているとなるとゲーム障害だけでなく、発達障害や統合失調症、気分障害や適応障害などの疾患が隠されている可能性も考えられます。まずはゲームに依存するようになってしまった背景を理解するとともに、メンタルクリニックや精神科を受診し、他の疾患との鑑別を行っていく必要があると考えます。

またゲームに対する依存性を高める要因としては、以前もニュースとなっていましたが、ガチャなどのギャンブル性や現実世界では得られない賞賛をゲームという仮想現実の中で得ることなどにより、過剰にのめりこんでしまうことが考えられます。「近年、オンラインゲームは急速に発展を遂げており、その依存症の対策は遅れていると言われています。そして人間は依存を形成しやすいもの(例えば薬物やアルコール、ギャンブルなど)との付き合い方には「すべて禁止」「未成年者の禁止」「金銭的制約(税金をかける)」「モラル教育による制約」などがある」1)とされています。これだけゲームが身近になった状態で、今すぐに法的に禁止したりすることは難しいかもしれませんが、ゲーム障害となりうるリスクは教育していく必要があります。

ここまで書くとゲームは非常に悪者のようですが、ゲームはコミュニケーション、気分転換のツールとして優秀であり、上手く付き合っていくことでよい影響を及ぼすことも多いと考えます。ゲームによって達成感が得られたり、友人関係が拡大したりすることもあります。そのため、適切な距離感でゲームと付き合っていけるように関わりを持つことが大切なのではないでしょうか。またゲーム障害となってしまった場合でも、周囲がゲーム障害を発症するに至ってしまった経緯を理解し、関わりをもち続けることがゲーム障害をもつ方への対応として重要ではないかと考えます。

文献

1)中山秀紀、樋口進(2016):インターネットゲーム障害,臨床精神医学,45(3),301-307

2)https://icd.who.int/

 

※所属・役職は掲載時のものです。