夏におこりやすい屋外での子どもの事故とその予防

2017/08/24

笹谷 絵里(看護学部 看護学科 実習助教)

日本では、戦後に医療水準、衛生状況、栄養状態などが発展・改善し、子どもの死亡率は急激に減少してきました。2015年度の乳児死亡率は1000人に対して、1.9と世界的に見ても非常に低い数値となっています。そのような中、子どもの死亡原因を見ると不慮の事故が大きな割合を占めています(1歳から9歳までの年齢において死因の2番目、10歳から14歳では死因の3番目)。14歳以下の子供の不慮の事故による死亡数は年間350名程度となっており、その内訳は、0歳児では誤嚥などによる不慮の窒息、1歳から4歳では、交通事故、不慮の窒息、溺水(特にお風呂の浴槽・洗濯機への転落、洗面器などに誤って顔をつけるなど家庭内での溺水)が多くを占めています。5歳以降となると、交通事故が大きな割合を示しますが、溺水が2番目に多い死亡原因になっています1

では、これからの季節、夏の時期に起きやすい子どもの事故は何があるでしょうか。まずあげられるのは、屋内外での溺水です。溺水と言えば、海や河川、プール等屋外の溺水が多いように思われます。しかし、屋内での水が原因の事故も決して少なくありません。さらに、屋外でのバーベキューや花火など火を使った行事が増え、普段は子どもが触らないマッチやライターを利用する機会が増加するため、やけどにも注意が必要です。また、ビニール袋による窒息事故があります。袋をかぶることによる窒息は季節を問わず起こりますが、夏は外に出る機会も多くなり、ビニール袋が周囲に置かれている状況になりやすいものです。その他、炎天下で長時間過ごすことでの熱中症・脱水もあります。

夏に増える子どもの事故について、溺水が起こった時の対応を説明したいと思います。溺水とはどのような状態でしょうか。日本救急医学会によれば「浸水(immersion)あるいは浸漬(submersion)により窒息をきたした状態を溺水(drowning)といい,溺水により死亡したものを溺死という」2とされており、溺れたことによる窒息状態をさします。溺水には大きく分けて湿性溺水と乾性溺水の2種類があり、溺れもがくうちに喉の筋肉が緩み、肺に水が入る湿性溺水(溺水症例の80~90%)と、溺れた際に水を飲みこむことにより、のどにけいれんが起こり、脳に酸素が少なくなり、意識を失い溺れる乾性溺水(溺水症例の10~15%)があります。溺水には3~72時間後に肺炎や肺水腫(血液の液体成分が血管の外にしみだし肺の中に液体がたまるため息ができなくなり呼吸困難を起こす)となる遅発性もあります。そのため、溺れた直後には症状がなくても後から症状が出てくることがあります。

実際に溺水を発見したときは、

①どこで、どのようにして溺れていたのか(発見時の状況)
②発見までにどのくらい時間がたっていたか(時間経過)
③発見されてから搬送されるまでの間どのような処置がなされたか(処置)
④搬送されるまでの意識状態や体を動かす様子に変化はあったか(様態の変化)

の4点について救急隊員や110番通報時に知らせられることが望ましいです。しかし、実際はパニックになっていることも多いと思いますので、落ち着いて通報を行ない、状況を説明できれば蘇生の準備など、救命にプラスに作用します3

次に、夏の花火による事故を防ぐポイントを7点上げたいと思います。

①花火をする前に注意事項をよく読む。
②周りに燃えやすいものはないか、風向きに問題がないか確認する。
③ライターやマッチから直接火を付けず、ろうそくなどを利用する。
④一度にまとめて火を付けたり、花火を分解しない。
⑤火のついた花火を振り回したり、人や物に向けない。
⑥水の入ったバケツを用意し、火が消えた後は覗き込まず、すぐに水につける。
⑦最初から最後まで大人が付き添い、見守る。

花火は、間違った取り扱いをすると大変な事故につながります。正しい取り扱いをすることで楽しく、安全に遊ぶことができるのです。

子どもの事故を防止するためには、どのようなことに注意したらよいでしょうか。子どもは日々成長し、できることが増え、行動範囲がどんどん広がっていきます。子ども同士で遊べるようになってくると、親もついつい子どもから目を離してしまうことが出てきます。夏は外出する機会が増え、子どもだけで遊ぶことも増加します。休暇による解放感やアルコールを飲んでいる高揚感がいつもと違う状況を生むのかもしれませんが、ちょっと目をはなした隙に事故は起こります。

子どもの年齢別におこる事故の特徴を見ると、2歳未満では誤飲や食中毒、歩けるようになると転落や交通事故にあう危険が高まります。外出時は子どもから目を離さないことが大切です。3歳ごろからは、「危ないこと」が徐々にわかってくる時期ですが、まだまだ遊びに集中すると周りが見えなくなってしまいます。小学生になると子ども同士で自律して遊べるようになりますが、遊びがヒートアップすると周りが見えなくなくことも少なくありません。実際に屋外の溺水は5歳以上で増加します。親が子どもの安全を見守り、視野に入れておくことは大切です。しかし、親も万能ではありません。もし、みなさんが危険なところで遊んでいる子どもの姿や、危ないことをしているのを見かけた時は、声をかけて、子どもの大切な命を守るため協力をしてもらえればと思います。

 

引用文献

(1)e-stat 政府統計の総合窓口

(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do2017.07.20取得)

(2)日本救急医学会(http://www.jaam.jp/html/dictionary/dictionary/word/0312.htm2017.07.11取得)

(3)五十嵐隆編,2007,『これだけは知っておきたい小児ケアQ&A』総合医学社,202.

筒井真優美監修,2014,『小児看護実習ガイド』照林社,302.

 

※所属・役職は掲載時のものです。