看護師としての自分を支える技術
光木 幸子(看護学部 准教授)
看護師は、バイタルサイン・体位変換・移乗など共通して用いる技術、寝衣交換や清拭などの日常生活に対する援助技術、注射や酸素吸入など診療に伴う技術を用います。これらの技術は、毎日行われる中で精錬されていきます。精錬された技術は患者との信頼関係の形成にも大いに影響します。看護師にとって技術はHEART・HEAD・HANDを融合させたものです。
看護学部の蒼苑館には、学生がいつでも技術をトレーニングできるプラクティカルサポートセンターがあるのをご存じですか?
センターには、いろいろなシミュレーターがあります。
バイタルサインの技術を練習できる血圧測定トレーナー「あつ姫」は、血圧の値や脈拍数を任意に設定し、正確に測定することを学修できます。
呼吸音聴診シミュレーター「ラング」は、実際の患者さんから録音編集した35症例の肺音を聴くことができ、正常と異常を比較しながら、病気の特徴的な呼吸音を理解できます。
「フィジコ」は、瞳孔反射・血圧測定・脈診(頸動脈・橈骨動脈)・呼吸音聴診・心音聴診・腹部音聴診・心電図の学習が行えるので、医療現場で出会う患者さんの代表的な症状を再現しながらフィジカルアセスメントの技術を繰り返し学修できます。
看護師は、生きている状態を示す指標として、体温・呼吸・脈拍・血圧などの生命徴候を観察します。患者の身体状態を正確に観察することは、厳しい臨地では、最も求められる技術です。
正確な値を測定するには、正しい手技と情報を的確にとらえる感覚器官、特に手の触覚、目の視覚、聴診器を用いた聴覚は重要です。血圧や脈拍の測定時には指先の触覚を使い、皮膚への圧迫のかけ方や角度の違いにより血管音の強さや弱さ、リズム、血管壁の柔らかさや硬さなどをとらえます。また血圧測定時には、確実に拍動を聴診できる血管を指先で選定し、聴診器を使い血管音を聴き取ります。
看護師は、これら一連の手技や研ぎ澄まされた感覚を活かし、正確な状態を把握し、異常の早期発見につなげます。急変時に最初にバイタルサイン測定を行うのは看護師です。また異常を発見するのもベッドサイドにいる看護師です。「もっと早くに異常に気づいていたらこんなに悪化していなかったのに」と後悔するか、「早く異常に気づけたから軽症ですんだ」と患者さんやご家族と一緒に喜ぶか。その日の担当看護師を患者は選べません。厳しい臨地では、発見できるかできないかが命の長さに影響する場合もあります。ベッドサイドに立ったとき自分の看護を支えてくれるのは培ってきた技術です。
これらの手技や感覚はすぐに習得されるものではなく、経験を重ねることで精錬されます。それらを習得できる環境がプラクティカルサポートセンターです。
シミュレーターを活用して経験を重ね、卒業時にはトレーニングされた手技と研ぎ澄まされた感覚を身につけて、自分を支える技術を1つでも習得してもらえればと願っています。
※所属・役職は掲載時のものです。