看護師にも異動がある!? -「配置転換」について‐

2016/12/05

川村 晃右(看護学部 実習助教)

皆さんは、新たな環境に飛び込む時、たとえそれを自分が希望していたとしても、不安に感じたことはないでしょうか。

以前、私は総合病院で看護師として働いていました。総合病院のように複数の診療科病棟がある病院では、職場の活性化や看護の質的・量的調整などを目的として、他の診療科病棟への配置転換がおこなわれます。多くの場合、それを避けるのは難しいのではないでしょうか。

そして、配置転換する病棟は、看護師が希望している場合もありますが、必ずしもそうではない場合もあります。いずれの場合においても、新たな人間関係の構築や、診療科に応じた知識・技術の習得が必要となるため、経験が豊かな看護師でも大きな不安を抱えているといわれます。

私の場合は入職時から精神科病棟を希望し配属されましたが、同時期に精神科病棟に配属された看護師のなかには、配置転換を希望していない方もいました。身体疾患の治療を主な目的とする病棟で勤務していた看護師にとっては、精神疾患のイメージの難しさ、病棟設備の違いなどから、精神科病棟での勤務に戸惑いを経験することが多いといわれています。また、入院している患者さんの精神症状の不安定さから、昨日実践したかかわりが今日は通用しないこと、さらには、その日の内でもかかわり方を試行錯誤する必要があるなど、柔軟性が求められることもあります。そのため、配置転換してきた当初は、これまでに経験してきた看護の知識・技術をそのまま活かすことが出来ず、精神科で働いていくことに不安を感じてしまうこともあるようです。 

一方、看護師として、患者さんの思いを感じ取り、寄り添うようにかかわっていくことは、どの診療科でも共通して重要なことです。このようなかかわりを続けていくうちに、少しずつでも患者さんのことを知ることができると思います。そして、患者さんのデリケートな内面にふれたり、患者さんが感じていることや考えていることの奥深さを知れたり出来ることは、自身の視野のひろがりにつながる可能性があります。 

今回は、精神科病棟への配置転換をとりあげましたが、それに限らず新たな病棟で働くことになった場合、不安を伴い、適応の困難さを感じることがあるかもしれません。しかし、過半数の看護師が、希望の有無に関わらず、配置転換をして良かったと回答したことが報告されており¹⁾、十分なサポートのもとでおこなわれる配置転換は、看護師としての成長にもつながる可能性があります。そのため、キャリアについて自問する機会にもなり、長期的な仕事生活の節目の一つとなるのではないでしょうか。

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1.加藤綾子(2001).病院内で配置交替を経験した看護婦の職場適応の現状.神奈川県立看護教育大学校看護教育研究集録,26,272-278.

 

※所属・役職は掲載時のものです。