イギリスのホスピスを見学して
葉山 有香(看護学部 専任講師)
終末期看護に興味を持ち講演会に参加したことがきっかけで、数年前、イギリスのホスピスに伺う機会を得ました。日本でもホスピス病棟に何度か足を運ぶ機会はありましたが、海外のホスピスに伺うのは初めてで、緊張したことを記憶しています。3つのホスピスを訪問し、日本との違いに驚いたことについてお話ししたいと思います。
あるホスピスは、敷地が約25,000坪と広大で、その中にホスピス本体の建物、音楽療法室を備えた建物、デイケア用の建物などがあり、中庭が中央に配置されて、一見大きなお屋敷といった感じでした。がんやAIDS、神経疾患の方々が、主に痛みを中心とした症状緩和や看取りのために利用されます。症状コントロールができれば退院し、在宅での看取りを行うことも多く、このホスピスの平均在院日数は当時で12~14日でした。ベッド数は18で、3人の利用者に対して看護師が1名という配置です。
患者さんは、全室個室の部屋で過ごされますが、ホスピス内の自室のカーテンやベッドのリネンを自ら選ぶことができます。利用される方々の好みが反映され、カーテンやリネンの柄が異なる各部屋を目の当たりにし、利用者の個性を大切にしておられるのだなぁと驚きました。
日本のホスピスの建物・部屋の雰囲気との違いにも驚きましたが、最も驚いたのはホスピスを支えるボランティアの存在と寄付のシステムです。別のホスピスでは、ホスピス内にカフェがあったのですが、カフェで働く方々はボランティアで、カフェ利用者の飲食料金はホスピスに寄付されます。また、ホスピスの受付の方々もボランティア、患者さんの使用するリネンを洗濯してアイロンをかけてくださるのもボランティア、ホスピス内にお花を活けてくださるのもボランティア、庭の手入れをしてくださるのもボランティアの方々です。そして、町にはホスピスケアに関するチャリティショップがあり、その収益もホスピスに寄付されます。ホスピス内にも貯金箱のような大きさの寄付ボックスがあり、日本との文化の違いを感じました。
ホスピスは、イギリス人の看護師で医師でもあるシシリー・ソンダースが、イギリスで設立したのが始まりとされています。イギリスでホスピスに伺う機会を得て、新しい発見に感動した数日間でした。
人は死を避けることはできません。看護師は、患者さんの症状が少しでも和らぎ、穏やかな死を迎えられるよう援助していく大切な役割を担っています。看護学部の学生さんにもぜひ終末期看護について考えていただければと思っています。
※所属・役職は掲載時のものです。