「特別支援学校で子どもに寄り添う看護師」
川崎 友絵(看護学部 助教)
小児看護では、子どもの「成長・発達」を保障することを看護の重要な役割としており、学童期の子どもの看護を担うとき、子どもの生活の中心に学校生活があるということを看護師は意識してケアを行っています。子どもが成長・発達していく過程においては、障害や病気の有無にかかわらず、その子どもらしく、持っている力の可能性を最大限に広げ生きる力を育むため、適切な教育を受けられることがとても重要です。今回のコラムでは、学校で子どもに寄り添う看護師について少しご紹介をしたいと思います。
障害や病気のある子どもの教育の場は、通常の学校や特別支援学校、病院のなかにある学校など多様であり、平成19年4月から「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、障害のある幼児児童生徒の支援をさらに充実していくこと1)となりました。特別支援学校においては、痰の吸引や酸素吸入、経管栄養、導尿などの医療的ケアを必要とする子どもが多く在籍しており、公立の特別支援学校を対象とした平成27年度の調査2)によると、日常的に医療的ケアが必要な幼児児童生徒は、平成18年度5,901名から平成27年度8,143名となり、増加傾向にあります。また、医療的ケアに対応するため特別支援学校に配置されている看護師は、平成18年度707名から平成27年度1,566名と増加傾向にあり、特別支援学校における看護は小児看護の専門性を必要とする場として広がってきています。
医療的ケアのような重度の障害をもつ人の健康や安全を保つためのケアをQOC(Quality of Care:ケアの質)ととらえる考え方があります。QOC はQOL(Quality of Life:生命の質、生活の質)の一部ですが、一番基本的な階層にあるのもので、それにより高次の自己実現や選択の自由などの基礎を与えるものとされています(図1)3)。

病院での看護師の役割は、子どもが安全に安楽に検査や治療を受け、病気を治すことや健康を回復することに主眼をおいた看護ケアを実践することです。では、特別支援学校での看護師の役割も同様でしょうか。学校での看護師の主な役割は、児童生徒が安全に安楽に教育を受け、その教育効果を最大限に引き出すために教諭が教育活動を行えるよう環境を整えていくことです4)。つまり、「医療」を中心とした看護ではなく、「教育」を中心とした看護を行うという相違があると考えます。上述の図1の基本的な階層であるQOCを支える役割を看護師は担っているのです。
学校は子どもにとって日常の生活であり、特別支援学校で子どもに寄り添う看護師は、このことを認識し、子どもの日常を支える看護についての専門性を高めていく必要があると考えます。そのためには、医療や看護の知識のみならず、子どもの日常生活、成長発達過程、学校教育や教諭の専門性への理解等を深めようとする姿勢が大切となります。看護師が、医療という自らの専門性に加え、教育という他の分野への理解を必要とする看護は、より広い視野と柔軟性を要する看護の領域といえるのかもしれません。教諭と協働し、学校で子どもに寄り添う看護の専門性は、今後充実が望まれており、子どもたち、ご家族、教諭との協働のもと、よりよい看護を目指し発展させていく必要があります。
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1.文部科学省ホームページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main.htm
2.文部科学省ホームページ
平成 27 年度特別支援学校等の医療的ケアに関する調査結果について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1370505.htm
3.郷間英世(2001).医療的ケアが必要な重度の障害をもつ子どもの教育 障害児教育に携わる小児神経医の立場から.小西行郎,高田哲,杉本健郎編著.医療的ケアネットワーク 学齢期の療育と支援.京都:かもがわ出版.pp.56-72.
4.小児看護学会ホームページ
特別支援学校看護師のためのガイドライン
http://jschn.umin.ac.jp/care_manual.html
※所属・役職は掲載時のものです。