看護・介護現場で働く外国人と日本人との協働を考える(2)~フィリピンの日本人向け高齢者施設の視察から~

2016/08/12

畠中 香織(看護学部 実習助教)

経済連携協定(EPA)に基づいて、大勢のフィリピン人、インドネシア人、ベトナム人が日本の看護や介護の現場で働いています。来日して日本の施設で働く外国人は、様々な政府間での条件を母国で満たした能力の高い人々です。例えば来日の条件として、フィリピン・インドネシアでは、母国において日本側の受入れ施設とのマッチングが成立した場合、6 か月間の訪日前日本語研修を受講し、日本語能力試験 N5 程度以上の日本語能力を有する者が日本への入国を許可されます。またベトナムでは、マッチングの前に12か月の日本語研修、N3以上の日本語能力が必要とされます(国際厚生事業団JICWELS:平成29年度版EPAに基づく外国人看護師、外国人介護福祉士候補者受入れパンフレット参照)。

実は、こうした受入れ条件を背景に、送りだし国では質の高い人材の育成に向けて様々な取り組みが実施されています。その一つがフィリピン、スービック地方にある「トロピカル・パラダイス・ヴィレッジ」です。ここは日本人高齢者が安心して生活できる介護付き住宅であり、バリアフリーの1階建て、全てに生活必需品(家具、電化製品、調理器具、食器類)が備え付けられ、24時間日本語での介護が受けられます。

そしてここでは、EPAにて日本での滞在経験を持つ人、またこれから来日を希望する人が多く働いています。将来の来日を目指すフィリピン人は、施設の日本人高齢者とケアを通じて関わり、日本語や文化・慣習について学習します。EPA経験者の先輩とは、日本の施設の現状や求められるケア技術や態度について情報共有します。さらに、管理職の日本人スタッフからは、挨拶・言葉の使い方・接遇・時間の管理など、将来の来日を見据えられた「日本的働き方」の指導を受けています。実際「トロピカル・パラダイス・ヴィレッジ」出身のフィリピン人は、日本の受け入れ施設からのマッチングにおいて好評化を受け、日本に来日しても働きぶりは高く評価されています。政府間の条件である日本語研修のみでは埋めることが困難な「日本的働き方」が、日本での就労には重要であることを意味するのかもしれません。

来日経験をもつフィリピン人らは、「日本では沢山のことを学んだ。日本人は質問したらなんでも教えてくれた」、「日本人は優しい」、「難しいケアも沢山あったけど、フィリピンでは学習できないケアがあった」、「フィリピン人に教えていきたい」と話してくれました。来日した外国人は、日本人との関わりを通じてケア技術など多くを学習し、それらを母国で活かすことができるようです。日本人も同様に、外国人との協働を通じて新たな発見ができれば、外国人との協働の価値はさらに高まるのではないかと考えます。

 

※所属・役職は掲載時のものです。