3月18日は何の日?
三橋 美和(看護学部 准教授)
3月18日は何の日かご存知ですか?18日なので、頭髪(とうはつ)の日でもあり、米の日でもあり、点字ブロックの日(世界初の点字ブロックが岡山市に敷設)でもあるそうですが、今回私がお伝えしたいのは、「睡眠の日」です。3月18日は世界睡眠医療学会が制定したWorld Sleep Day(世界睡眠の日)で、それが日本の「睡眠の日」となっています。そしてその前後1週間、3月11日から25日までが睡眠健康週間です。ちなみにこれは、「春の」睡眠の日で、秋は9月3日です。その由来は?こちらは語呂合わせで、9と3、「く」と「スリー」で、「ぐっすり~」というわけです。
この睡眠の日が制定されたのは2011年ですので、今年でちょうど5年になります。へぇ~そんなのあったの?全然知らなかった、という方も多いのではないでしょうか。残念ながら、睡眠の大切さ、そして今の日本の睡眠問題の深刻さはまだ十分理解されておらず、私たち看護職でも睡眠の日を知っている人は限られている状況です。
では、皆さんの睡眠時間はどのくらいですか?日本人の平均睡眠時間は、2014年で7時間43分です(経済協力開発機構(OECD)が29か国を対象に15~64歳の国民平均睡眠時間を調べた結果)。いかがでしょうか?私自身はたくさん眠る人なので7時間以上眠っている日も多いですが、一般成人の平均としては思ったより長いな、というのが私の印象でした。
では、世界の他の国はどうでしょう?実は、日本は韓国とともに世界で一番睡眠時間の短い国なのです。そして、アメリカ、フランス、イタリアなど29か国の中で男女とも8時間未満なのは日本と韓国だけ、その世界一短い睡眠時間は年々さらに短くなっています。もちろん睡眠は量だけでなく質も重要ですし、適切な睡眠時間は人によって異なるもので、日中眠気がなくすっきりとした状態で毎日過ごせる時間がその人にとって適切な睡眠時間となります。では、日本人と韓国人はあまり睡眠を必要としないショートスリーパーなのでしょうか?
残念ながらそうではないようです。日本人の睡眠時間減少の背景には、「24時間社会」という言葉に代表される社会の夜型化があります。24時間営業のお店やパソコン、スマートフォンが普及し、時間を問わず利用できて生活はとても便利になりました。一方でそのことが生活を夜型化し、就床時刻が遅くなっているのに朝は起きて仕事や学校に行かなくてはならないので、大人も子どもも睡眠時間が減少しています。そして、さらにその背景には、睡眠に対する意識の低さがあるとも言われています。人や社会の都合で睡眠を削ったり、操ろうとしたりしています。その結果、慢性的な睡眠不足である一方で、眠ろうとして床に就いても質のよい睡眠をとれない人が増加し、睡眠障害が大きな社会問題になっているのです。
睡眠(休養)は、運動、栄養と並んで健康の三要素と言われており、人の健康を援助する看護の仕事において、睡眠に関する援助はとても重要なものです。病気や加齢などのために睡眠障害をもつ人への援助はもちろん、健康な人においても、人の生体リズムを整え、人が本来持つ力で疾病を予防したり、治癒を促進する援助など、睡眠や生体リズムに関する知識や技術は看護実践に有用です。その上、看護職はその大半が交替勤務や夜勤に従事するシフトワーカーとなりますが、シフトワークは人間の生体リズムにとって過酷な仕事環境で心身に負担をかけるため、その理解を深め、調整スキルを身につけることは、仕事を継続し、また医療事故やミスを防ぐ上でも重要なのです。しかしながら、日本の看護基礎教育では、睡眠や生体リズムに関する科学的根拠に基づいた知識と技術を習得し睡眠改善技術を実践できる系統的な教育を行うことができていないのが現状です。
本学看護学部では、このような睡眠健康教育の重要性に着目し、「睡眠改善学」を必修科目として設置しました。2年次生の履修科目ですので、看護学部開設2年目のこの4月、いよいよ初めての「睡眠改善学」が始まります。睡眠の知識と援助技術をしっかり学んだ看護職が現場で活躍してくれる日を楽しみに、充実した教育ができるよう努力したいと思います。
※所属・役職は掲載時のものです。