「されどお通じ」

2015/12/14

木村 静(看護学部 准教授)

「あなたは今日、気持ちのよいお通じがありましたか?」

今日、娘に「最後にうんちしたのいつ?」と尋ねてみました。すると娘は、「私、毎朝起きたら一番にトイレ行ってしっかり出てるから大丈夫。ママは?」と逆に聞いてきました。私は思わず、「そうね。ママは、今日はトイレ行ってないから。最後にトイレに行ったのいつだったかな。」と返事に困ってしまいました。
皆さんは、同じ質問をされたら、何と答えますか。

国民衛生の動向によると、平成26年度の死亡順位別の死亡数は第1位が悪性新生物であり、約37万人であると言われています。また、この悪性新生物の中でも大腸がんの死亡数は男性で約2万6千人、女性で約2万2千人であり、年々増加しています。さらに、部位別悪性新生物死亡数割合からみると、悪性新生物の中で大腸がんで亡くなる方の順位は男性では第3位、女性では第1位となっています。以上から、日本では死亡順位第1位の悪性新生物の中でも特に大腸がんで亡くなる方の割合が多いことがわかります。
では、大腸がんとは、どのような病気なのでしょうか。
現在のところ、大腸がんは食生活の欧米化に伴い増加しており、とりわけ、高脂肪、高たんぱく質、低食物繊維と関連があると考えられています。また、症状としては下痢や便秘を含む便通異常、腹痛、血便(下血)などが挙げられます。そのため、予防として身体活動や食事の改善(野菜や果物、食物繊維などの食事の摂取)が大切であると言われています。
そこで、本日は大腸がんの症状の一つである便秘を取り上げてお話したいと思います。

便秘について明確な定義はありませんが、医学大辞典によると、便秘とは、「規則正しく便通をみていたものが、排便回数や1回の排便量の減少、硬便、排便困難、残便感などを自覚した症状である」と書かれています。つまり、便秘において排便に関する困難感を本人が自覚しているかということがとても重要であるといえます。
では改めて、あなたは今日「気持ちのよい」お通じがありましたか。
私の娘のように毎日きちんと同じ時間に気持ちのよいお通じがある方は、便秘ではないと思います。しかし、「そういえば最後に排便をしたのはいつだったかな」と私のように悩んだり、「今日はたまたま出たけど、まだなんだかすっきりしないのよね」と感じておられる方は、便秘に当てはまるかもしれません。
また、いつも必ず気持ちのよいお通じがでないという方は、自分の排便習慣をご存知でしょうか。いつ、どんな性状の便が出たか、自分の便を観察したことはありますか。日々の生活に追われ、自分の便をみたことがないという方も少なくないのではないでしょうか。

排泄は、食事と同じくらい重要なことだと考えられています。そのため、まず自分の排便やその習慣に関心をもつことがとても大切です。具体的な方法としてカレンダーやスケジュール帳の空いたスペースに、今日はとてもすっきりしたなと思うときは◎マーク、今日は量も少ないしすっきりしないなというときは△など、自分で決めた印を書き込んでみてはどうでしょうか。そうすることで、マークを見ながら自分の排便状況を簡単に見直すことができます。
そして、自分の排便習慣がわかったら、次は、家族の排便習慣にも目を向けてみましょう。
あなたの子供さんや夫や妻、両親は、いつも気持ちのよいお通じがありますか。
排泄に関することは、家族でもなかなか言葉にしにくい非常にデリケートな内容です。特に相手が幼児でないならば、お通じに関して日ごろから観察したり会話をすることは意外と少ないのではないかと思います。
しかし、あなたの健康だけでなく、家族の健康に意識を向けることもとても大切なことです。ぜひ尋ねてみてください。「今日、気持ちよいうんちはでた?」と。
あなたのその一言で、家族の体調を知ることができるだけでなく、あなたの大切な家族の命も病気から救えるかもしれませんよ。

 


※所属・役職は掲載時のものです。