看護学部初めての臨地実習を終えて

2015/11/02

山縣 恵美(看護学部 専任講師)

「『楽しい』という言葉では言い表せない貴重な経験でした。」

同志社女子大学に看護学部が開設してから半年が経過しました。そして先日、本学部初めての臨地実習が終了しました。1年次に行う今回の実習では、学生は看護学生として初めて患者様が入院されている病棟に入りました。具体的には、学生は入院されている患者様の一人を受け持たせていただき、療養環境の観察やコミュニケーションを通して対象理解を図ったり、実際に行われている看護ケア実践の見学を行いました。わずか数日間の実習でしたが、学生にとって初めての実習はどのようなものになったのでしょうか、そして、半年間の看護学の学びを経て実際の看護の現場を目の当たりにし、どのように感じたのでしょうか…。冒頭の言葉は、実習を終えた学生達に感想を聞いた際に出てきた言葉です。学生は一人一人貴重な経験をし、いろんなことを感じ、考えていました。きっと、この実習期間は大学生活が始まって以来の非常に濃厚な日々となったことでしょう。

臨地実習は、実際の現場で看護を学修するので不安と緊張がありますが、その分多くの学びが得られる機会にもなります。特に今回は学生にとって初めての実習でしたので、見るもの聞くことすべてが発見だったのではないかと思います。実習している学生の様子を傍で見ていると、普段の学内での講義や演習の時には見られないさまざまな姿がありました。患者様の話されることを真剣に聴いている学生。患者様の部屋を訪室してもよいタイミングはいつだろうと廊下から部屋の様子を一生懸命うかがいながら悩んでいる学生。看護師さんのてきぱきと点滴準備をしている姿や患者様にやさしく声をかけている姿に目を輝かせながら見ている学生、疑問に思ったことや困ったことをグループ内の学生に問題提起している学生、等々…。日々悩みながらも確実に看護の視点が増えていく学生の言動をみるのは本当にうれしく、私自身にとっても刺激になりました。

そんな学生の姿を見ていると、「私が初めて受け持たせていただいた患者様はこんなだったなぁ」と自分自身の学生時代の実習が思い出されます。看護学を学んだ者にとって、学生時代の思い出は実習なしには語れません。忘れられない実習の思い出がたくさんあります。患者様と私の二人ではコミュニケーションが上手く図れないと思い込みご家族がおられる時にしか患者さんを訪室できなかったことや、初めて見学した処置に驚いてしまい処置を受けている患者様の方から心配して声をかけてくださったこと、看護師さんからの質問に答えられず悔しい思いをしたこと…等々、今でもお世話になった患者様や実習場面は鮮明に記憶に残っています。そして、実習での経験が私自身の看護観のベースになっていると感じています。

冒頭の学生の感想にもあるように、実習は悩み考え、時には辛く厳しく、時には看護の喜びが感じられる非常に貴重な経験です。そしてその経験は間違いなく看護観を育てます。学生には、今回実習で感じたこと、悩んだこと、自身の感性を大切にするとともに、今後も様々な経験をしていってほしいと思います。

さて、文部科学省によると、看護の臨地実習は看護職者が行う実践の中に学生が身を置き、看護職者の立場でケアを行うこととされています。この学習過程をとおして学生は、学内で学んだ知識・技術・態度の統合を図りつつ看護方法を習得するとともに、看護実践に不可欠な援助的人間関係形成能力や専門職者としての役割や責務を果たす能力を身につけていくのです。本学においても、まずは一年次の実習を学びの深い有意義なものにすることができました。そして、学生一人一人がこれまでの学びを土台としてさらに広く深く看護が学んでいけるよう、看護学部の教員一同、一つ一つの学修機会を大切にしながらかかわっていきたいと思います。

最後に、先日の臨地実習でお世話になりました関係機関の皆様には、改めて御礼申し上げます。

 

※所属・役職は掲載時のものです。