治療と生活の両立をめざして
田村 沙織(看護学部 実習助手)
がんは、1981年から死因の第1位であり、現在就労可能年齢で診断されるのは3人に1人です。今後、仕事を続けながら治療する人が増えると予想されます。がんは、検診で早期に発見できるようになり、治療の進歩により長期に生存できるようになりました。
がんの主な治療は、手術療法、化学療法、放射線療法です。今回は、その中でも外来で化学療法を受ける方の療養生活を支える看護師の関わりについて述べたいと思います。
がんの化学療法は、抗がん剤を点滴や経口により体内に投与する治療法です。以前は、全ての人が入院して治療をしていました。数年前より、安全性の高い抗がん剤の開発や副作用を軽減する薬剤の開発、副作用の対処を自分自身でできることを目的とした医療者の関わり、本人の「治療をしながら家で過ごしたい」というニーズにより外来化学療法が増加しています。
外来化学療法のメリットは今までの社会的役割を続けられることや家族とともに過ごせることです。社会の中で治療を受けながら仕事を続けることができ、家庭の中で家事を行うこともできます。
しかし、治療中の自身の身体や生活を調整しなければならないというデメリットもあります。たとえば、自宅で副作用の出現や悪化を予防すること、治療時間を確保するために職場内の調整が必要になります。
実際に外来化学療法を受ける方の中には、自宅で抗がん剤による副作用をコントロールしなければならず、症状が現れたときに医療者にすぐ対処してもらえないことを不安に感じています。
また、がんに罹患した後の就労状況は53%の方が変更し、そのうち30%の方が依願退職しています。その理由として体力的に困難であることや職場理解を得ることができなかったとの報告があります。特に倦怠感や手先のしびれは目に見えるものでなはないため、周囲の人たちの理解を得ることは難しい副作用です。
仕事を続けている方は、治療のために定期的に仕事を休む必要があることや、副作用症状がつらいため出勤できないことがあることから、職を失うかもしれないことを不安に感じています。
これらのように、外来で化学療法を受けながら社会生活を継続するためには、自分自身で身体面・精神面・社会面を調整し折り合いをつけながら生活する力が求められます。
看護師は、点滴を交換したり注射をしたりするだけではなく、治療による副作用を軽減するための対処法を伝えることや、治療中に日々の生活の中の不安を聴き、医師・薬剤師・栄養士などの他の医療者とも連携し不安を軽減できるよう導きます。1人の方を多方面からサポートするために看護師は、様々な職種の医療者との調整役となり、治療を受ける方の不安や思いを代弁し情報共有することもあります。
入院中だけでなく外来で治療しているときも本人にとってより良い生活を送ることができるよう身体面・精神面・社会面に関する不安や悩みを解決に導き、治療と社会生活の両立をサポートしています。
※所属・役職は掲載時のものです。