看護学を学ぶ
片山 由加里(看護学部 准教授)
看護学教育スタート
同志社女子大学に看護学部第1期生が入学してから、早くも梅雨の季節を迎えました。正門から続く大階段を登り、看護学部関連棟「蒼苑館」へと続く北側の道は、濃い緑のトンネル空間となって、その壁には鮮やかな紫陽花が散りばめられています。ここ京田辺キャンパスでは、随所にみられる木々や花々の風景が、毎日のように開催される多くの講話や講演、音楽や祈りと調和し、私達、看護学部新任教員の心を癒してくれ、元気をいただいていることを実感します。学生たちは、キャンパスライフにもすっかり慣れ、授業の合間には、現代風のアイテムを纏ってお気に入りの居場所を見つけて過ごしたり、演習科目では、真新しいユニフォーム姿で汗をかきながら看護技術を一生懸命練習したりしています。それらは、まるで長い歴史と伝統のある女子大学の奥深い懐に、看護学部がすっぽり包まれているかのようです。
看護学教育の責任
少子・超高齢社会の今、看護職の不足・偏在は深刻な課題になっており、それは人々の健康的な暮らしにも影響することが予想されます。また、人々の健康を守るためには保健・医療・福祉各分野の連携が欠かせず、看護職はその連携の要となる役割を担っています。そのために、看護職が各専門分野を繋ぎ、協働できるような発信力・表現力を十分に身につけておかねばなりません。したがって、看護学の基礎教育では、先人の看護職がなしてきた深くて広い看護学をしっかりと伝承し、社会が求める看護専門職として応えられる「実践力」を身につけられるような教育プログラムを展開していくことが必要です。不確かで不安な老後の生活、決して十分とはいえない医療や看護・介護の力、多発する災害や紛争など、人々の健康を脅かすことの多い現代社会の中で、看護職には、それらを身近な出来事ととらえることができ、かつ的確に対処できる力が求められています。
一人ひとりの看護観の育成
看護学は、「人間」「健康」「環境」「看護」の4つを主要な概念とします。これらは、看護学のメタパラダイムと呼ばれます。メタパラダイムとは、一つの学問あるいは専門職を体系化するための概念的な枠組み、すなわち時代や地域性に左右されることのない、根本的な学問のスタンスをさします。学生は、これらの概念を基盤にして、基礎・成人、小児・ウイメンズヘルス・精神、高齢者・在宅・公衆衛生など様々な看護学を段階的に幅広く学んでいきます。1年次では、まず基礎看護学を学修しています。病のある人々の体験を辿り、看護の諸先輩方の言語や看護理論に触れ、自分の感じたことや考えたことを自分のことばで表現していきながら、看護の方向性や方法を考えていきます。そして、現場での看護を想定した技術演習やシミュレーション学修などにより、看護を実践するための基礎的な力を身につけていきます。今年の秋には、初めて医療機関での臨地実習を体験します。このように講義やグループワーク、演習、実習などの様々な学修を通して、学生が「看護とは何か」ということを自ら探求する姿勢や看護観を培っていけるようにと考えています。さらに、看護職が、今社会から何を求められているのかという現実に対し、学生一人ひとりが向き合い、自己の将来像をしっかりと描けるようにと期待しています。
最後に、光と緑あふれる美しい京田辺キャンパス全体が学びのエネルギーとなっていることを実感しながら、学生と共に同志社女子大学らしい看護学教育を構築し、実践していきたいと思います。
※所属・役職は掲載時のものです。