睡眠と健康:生体リズムと睡眠

2014/10/10

眞鍋 えみ子(現代こども学科 教授 / 2015年4月 看護学部 教授就任予定)

私たちは、日常的に睡眠を体験していますが、その睡眠についてどのくらいご存じでしょうか。都心部では、ネオンや街灯などで夜間でも昼間に近い明るさにある場所が多いことや、インターネットの発達より、私たちはその恩恵を受ける一方で、活動と休息(睡眠)のメリハリはなくなり、睡眠不足や睡眠の質の低下が引き起こされています。

ヒトはなぜ眠るのでしょうか?睡眠は、大きく発達した大脳を上手に休ませるための生命現象です。そして、そのしくみには、"疲れたから眠る" という恒常性の維持と"夜になると眠くなる" という生体時計のリズムによって、状況に応じて相互に関連しながら睡眠の質や量およびタイミングが制御されています。

ヒトの体内リズムにはいくつかの周期があります。1年周期や1月周期があり、月経はこの1月周期によります。そして、生体時計のリズムには25時間周期のサーカディアンリズムと1.5~2時間周期のウルトラディアンリズムがあります。このサーカディアンリズムは約25 時間周期ですので時間の手がかりのない、例えば光の入らない、時計のない部屋で生活をすると、起床時刻がおよそ1時間ずつ遅れていきます。だから、私達は、毎日約25 時間のサーカディアンリズムを外部環境の24 時間に同調させています。そのきっかけとしては光が最も重要で、朝の光によって生体時計をリセットし、ズレを修正しています。さらに、昼間の明るい環境と夜の暗い環境の変化、規則的な食事、日中の活動や人との接触も生体時計を調節する大切な因子です。なかでも毎朝ほぼ同じ時間に起きて光を浴び、その1時間以内に朝食をしっかりと摂ることが大切です。

眠気のリズムをみていきますと、夜間では午前2 時~ 4 時に眠気が一番強くなります。そして、日中では午後にも眠気を覚えます。午後の眠気は"お昼ご飯を食べたからだ"と考える人が多いと思いますが、昼食を抜いた場合や普段よりも2時間早めに食べた場合でも午後には眠気が生じます。この午後の眠気もサーカディアンリズムが原因であると考えられています。この午後の眠気は、就寝時間の15時間後にピークになり、24時に就寝した場合は、ちょうど午後3時あたりに昼間の眠気のピークがきます。このように午後の眠気は生理的現象であると言えます。

1日中、テレビを見たり本を読んでいると何度も眠気が襲ってきます。また、学生さんでは午前中にも関わらず授業中にも眠気は襲ってきます。このような単調な環境下におかれますと、およそ1.5~2時間の周期で眠気と覚醒が交互にきます。これがウルトラディアンリズムです。授業の最初から最後まで眠い場合は、単に睡眠不足と思われますが、授業の途中で眠くなる場合は、単調な環境下で生じるウルトラディアンリズムに支配されている眠気です。体を動かしたり、楽しいことをしている場合は、単調な環境下でないのでこの眠気を感じることはありません。

これらの自分の体がもっている生体リズムを知り、上手く整え、付き合うことで、学習や仕事の効率アップにつながると思います。

※所属・役職は掲載時のものです。