女性の健康:妊娠中のこころとからだ

2014/08/07

眞鍋えみ子(現代こども学科教授 / 2015年4月看護学部 教授就任予定)

「おなかに赤ちゃんがいます」と書いてある可愛らしいマタニティマークをご存じですか?公共交通機関の優先座席の表示や妊婦さんのカバンについているのを目にしたことがあると思います。これは、妊娠中であること、おなかに赤ちゃんがいることを周りの人に気づいてもらい、いざという時に手を貸してもらいやすくして、妊婦さんにやさしい環境づくりを推進するために作成されました。

特に、妊娠初期は、赤ちゃんの成長や妊婦さんの健康を維持するためにもとても大切な時期です。しかし、外見からは見分けがつかないため、「電車で席に座れない」「たばこの煙が気になる」など妊婦さんにはさまざまな苦労があります。そして、赤ちゃんの成長にともないお腹が大きくなり、疲れやすい、息苦しい、トイレが近くなる、足がむくむなど体調の変化が現れ、細菌やウイルスなどの感染症にもかかりやすくなります。一方、気持ちの面では、幸せや期待、喜びを経験する反面、「子どもを産むのにふさわしい時期か、準備ができているのか」と不安や戸惑いも感じます。妊婦さんは、このように相反する感情を抱きながらお腹の赤ちゃんの動き(胎動)を感じ、自分がお母さんになる姿を想像していきます。

私は、長年の経験から、この感受性豊かな妊娠中に「こころもからだもお母さんになる」準備をしてほしいと思っています。妊娠中に起こりやすい流産や早産、妊娠高血圧症候群などの異常の予防や腰痛、不眠、つわりなどと上手くつきあっていく、赤ちゃんの発育に必要な栄養を摂るためには、今までのライフスタイルを見直すことがとても大切です。

そうはいっても、今まで長年にわたって培われてきた生活習慣やライフスタイルを一朝一夕に変えることは、とても難しいことです。それでも、妊娠をきっかけにヒールの低い靴を履いたり、タバコやアルコールをやめるなど、規則正しい生活を心がける女性が多いことを考えますと、妊娠中だからこそ、赤ちゃんが元気に育って産まれてほしいと願うからこそ、今までの行動を変えることも可能になると思うのです。妊娠をきっかけに今までのライフスタイルを見直し、自分にできることを実行してみる、そして、実行にともなう成果、例えば、「腰痛が軽減した」「体重がコントロールできた」「妊娠中○○が続けられた」などの結果をともないますと、さらに行動を継続させる力になります。このプロセスのなか、妊婦さんに寄り添い、こころやからだと上手くつきあえる力をつけてもらえるようにサポートすることが看護職の役割のひとつであると思っています。

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マタニティーマーク

※所属・役職は掲載時のものです。