この漢字なんと読みますか?

2020/08/27

吉海 直人(日本語日本文学科 特任教授)

 

今回はみなさんに漢字の読み方クイズを出題します。決して難しい漢字ではありません。読みも日常口にしているものですが、いざ漢字の読みとなると迷うかもしれません。まずは易しい問題を5問出してみます。是非挑戦してみてください。

①「予め」 ②「詳らか」 ③「強か」 ④「健やか」 ⑤「円ら」

いかがですか。「予め」は「あらかじめ」です。「予て」とあったら「かねて」と読んでください。「詳らか」は「つまびらか」です。他に「審らか」とも書きます。古典では「つばひらか」でした。「強か」は九州弁の「つよか」ではありません。これで「したたか」と読みます。なお「健か」も「したたか」と読めます。その縁で「健やか」を出してみました。「や」が入っただけで「すこやか」という読みになります。では「円ら」はどうでしょう。ウルトラマンの「円谷プロ」を知っていれば「つぶら」と読めますね。これが「円やか」だと「まろやか」になります。漢字の読みは複数あることを承知してください。

では次の5問はどうでしょうか。難易度は前と同じくらいです。

⑥「挙って」 ⑦「具に」 ⑧「徐に」 ⑨「偶に」 ⑩「直向き」

「挙って」は「こぞって」です。これは古語の「こぞりて」から転じたものです。「挙げて」とあったら「あげて」と読みます。次の「具に」は頻出語です。もちろん「ぐに」ではありません。これで「つぶさに」と読みます。「徐に」は「じょじょに」ではありません。「おもむろに」です。意味も「いきなり」ではなく「ゆっくりと」ですが、誤用される率が高いとのことです。「偶に」は「まれに」ではありません。これで「たまに」と読みます。「適に」も「たまに」です。「偶々」は「たまたま」ですね。「直向き」は「ひたむき」です。「直垂」は「ひたたれ」と読みます。簡単そうで難しいですね。

続いてややむずかしい問題を5問出してみます。これが読めれば、あなたは立派な漢字博士です。

⑪「徒ならぬ」 ⑫「塗れる」 ⑬「論う」 ⑭「渉る」 ⑮「労う」

急に難問になった気がしませんか。「徒ならぬ」は「ただならぬ」です。「とならぬ」では話になりません。やや古い言い方のようです。「塗れる」はもちろん「ぬれる」ではありません。これも古い言い方で「まみれる」と読んでください。「泥まみれ」「砂まみれ」ならわかりますよね。「論う」は「あげつらう」です。これは是非覚えてください。「捗る」も難しいですね。「わたる」とも読めますが、ここは「はかどる」と読んでください。「労」は簡単な漢字ですが、どう読めばいいのか悩みます。「労う」とあれば「ねぎらう」です。もし「労る」とあったら「いたわる」と読んでください。これは両方一緒に覚えるのがよさそうです。

ついでにあと5問追加しておきます。

⑯「恰も」 ⑰「唆かす」 ⑱「際疾い」 ⑲「目眩く」 ⑳「与する」

「恰も」は漢字も普段使わないものですね。これは「あたかも」と読みます。「唆かす」は「そそのかす」です。これが「唆る」とあったら「そそる」と読んでください。「際疾い」はそのまま「きわどい」でいいんです。「目眩く」は目が眩みそうですね。文学的に「めくるめく」と読んでください。単独で「眩い」とあったら「まばゆい」です。「与する」は易しそうでなかなか読めません。これは「くみする」です。

さあ最後の5問です。今度は漢字二字になっていますが、少し易しくなっています。

㉑「贔屓」 ㉒「白地」 ㉓「晩生」 ㉔「胡座」 ㉕「幼気」

「贔屓」はこれで「ひいき」と読みます。「白地」は難問です。もちろん「しろじ」ではありません。これで「あからさま」と読みます。「晩生」も「おそうまれ」ではなく、「おくて」と読みます。「胡座」は「あぐら」ですね。「幼気」は「おさなげ」ではなく「いたいけ」と読みます。

以上、25問出題してみました。15問以上正解したら合格です。日本語は中国の漢字を訓読みしたことで、こんなややこしい読みが生じたのです。

 

 

※所属・役職は掲載時のものです。