保健師をご存知ですか?

2019/02/26

桝本 妙子(看護学部 看護学科 教授)

皆さんは、健康について困った時、誰に相談しますか?
かかりつけのお医者さんであったり、両親や友人、保健室の先生かもしれません。今ではインターネットを通じて専門的な知識も簡単に手に入るようになりました。ここでは、相談相手のひとりになる保健師についてご紹介したいと思います。

保健師は、看護師、助産師と同様に国家資格を持つ看護専門職者です。赤ちゃんの家庭訪問をしたり、乳幼児健康診査で問診や子育ての相談にのったりしています。また、精神疾患の方の生活支援を行ったり、社会復帰のためのお手伝いをしたりします。事業所では、働く人々の疾病予防や健康増進のために、健康診断や健康相談、健康教育などを行っています。一言でいえば、保健師は「赤ちゃんからお年寄りまで、健康な人から健康でない人まで、地域や職場で生活する人々の健康サポーター」といえるでしょう。

保健師が働く場所は、保健所や市町村などの行政機関(行政保健師)、企業などの事業所(産業保健師)、学校の保健室(養護教諭)、訪問看護ステーション(訪問看護師)、介護保険施設などの福祉機関があります。わが国では、2016年12月末現在、行政機関に37,713人、事業所に3,079人、訪問看護ステーションに315人、介護保険施設などの福祉機関に1,439人の保健師が働いています1)

看護師を知らない方はいないと思いますが、保健師を知らない方は案外います。筆者が保健師として働いていた頃、「保健師です」と言って家庭訪問すると、「うちは保険は間に合ってます」と言われたことを思い出します。また、看護学部以外の学生に保健師の仕事について紹介すると、「保健師のことは全く知らなかった」「もっと保健師のことを知れば心強い」という意見を聞きました。

保健師があまり知られていない理由はいくつかあると思いますが、そのひとつに、直接保健師と接する機会が少ないからかもしれません。あるいは、保健師に接していても保健師と気付かないことがあるかもしれません。保健師が個別に相談にのったり保健指導したりする人は一部の方といえますし、健康な人は保健師に相談することが少ないかもしれません。また、看護師のような特有のユニホームはなく、保健所や市町村で働く保健師は事務職と同じ服装であったり、事業所では看護師と同じ白衣を着ていることがありますので、保健師とは気付かないことがあります。専門技術についても、注射や採血といった目に見える「技術」を用いることは少なく、相談や指導という見えない「技術」を用いることが多いので、保健師固有の専門性が見えにくいということもあるかもしれません。

さて、同志社女子大学看護学部では、看護師に加えて選択により保健師の国家試験受験資格を得ることができます。今年度、第1期生の保健師科目選択の学生が講義、演習、実習に取り組みました。中でも実習は、それまで学んだ知識、技術、態度を統合する重要な科目で、学生たちは、赤ちゃんの家庭訪問や住民の方々への健康教育を行いました。家庭訪問は、直接お宅に伺ってその家庭の状況にあわせて相談にのったり保健指導をしたりしますので、保健師としてとても大切にしている活動方法の一つです。健康教育では、参加者の方々のニーズや特性にあわせて、内容や言葉遣い、媒体(補助教材)を工夫して実施し、とても喜んでいただきました。

少子高齢化がすすみ、子育てや生活に悩む人も増えています。これからの日本では、保健師の仕事はますます重要になってくると思います。地域の方々に「保健師に出会えてよかった」「保健師に支えてもらえて助かった」と言ってもらえるような保健師を育てていきたいと思っています。

 

注1)厚生労働省. 平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/16/ (2019.01.31アクセス)

 

※所属・役職は掲載時のものです。